第十九話 クエスト準備
「納得いかねー……」
昼下がりの街で、オレたち三人はクエストの準備をする為に歩いていた。
レイナさんから頼まれたクエストを実行するにあたり、準備をするために街の角にある服屋を目指していたのだ。
「ハルトまだ言ってるのー? そんなにわたし達が美少女だって認めたくないわけ? むしろ、こんな美少女達に囲まれてパーティー組んでる事に感謝しなさいよね!」
リリスは昨日言われた事が嬉しいのか、クエストを成功されば大金が入って来るのが嬉しいのか上機嫌である。
「わ、私は別に自分で美少女とは思ってないぞ……。むしろ、騎士として鍛えて来たから筋肉が付き過ぎてるのではないかと心配な位だ……」
そう言ってシルビアは、自分の二の腕辺りを触った。
「わ、わたしも身長だって低いし……。そ、その胸は少しだけ大きいかもしれないけど。それ以外はなんとも……」
リコピンは、自分の胸辺りを見て一瞬目を輝かせてから、ため息をつく。
リリス以外の二人はむしろ謙虚で良いと思う。
もちろん、『容姿』だけで言えばこの三人は確かに美少女だ。
だが、オレが言いたいのはそこではない。
そう、問題は昨日のレイナさんがオレたちにクエストを頼んだ理由にあるのだ。
そして、オレは昨日の一部始終を思い出す……。
…………。
……。
✢
「……と、言うわけでな最近噂になっている美少女パーティーのお前らに頼みたいわけだ。ここまでで何か質問はあるか?」
レイナさんにそう言われて、まっ先にオレが挙手をする。
「その……まぁ、こいつらが美少女なのは百歩譲って分かるんですけど……。なんで、オレまでがそんな事をしなくちゃいけないんですか?」
「百歩譲っててどういうわけ? どっかどう見ても超絶可愛い! 美少女の勇者様でしょうが!」
「うるさい! 黙れ、ひよっこ! お前が喋ると話しがややこしくなる! アーモンドリザードの唐揚げを奢ってやるから、あっちで大人しく食ってろ!」
「なっ! ひよっこってあんたねー……。 はぁー……仕方ないわね。わかったわ」
そうやって言うと、リリスは渋々テーブルを離れた。
そしてーー。
「すいませんー、アーモンドリザードの唐揚げを五つ下さい! 後、食べ終わったら追加で注文するかもしれないんで準備だけお願いします! あっ、お会計はあっちのテーブルの冴えない男に付けといて下さい!」
こいつ……人の金だと思ってどんだけ食うんだよ。
てか、注文を受けたウェイターさん今めっちゃ苦笑いしてたぞ。
「た、確かに……。私達が……び、美少女かどうかはともかくとして。ハルトがその様な事をする理由が見当たらないのだが……」
シルビアは美少女と言われたのが嬉しかったのか、そう言って妙に照れくさそうに話した。
こいつ、案外ちょろいな。
まぁ、今のオレはあの一見以来シルビアの面倒くささを知ってしまったので、変な気を起こそうとは思わないがな。
「そうだな。さっきの話しの重複にもなるが、お前達が冴えない男とパーティーを組んでいる変わり者の美少女と言う話しは、ギルド酒場で噂になってる。特に男の方は実はかなりのボンボンで、金の力を使って女を侍らかしてるんじゃないかと言われる位にな」
いや、さっきも聞いたが冴えない男で悪かったな。
てか、そんなに金を持ってたなら冒険者なんてやらずに、悠々自適に屋敷でも買って美少女メイドに囲まれた生活をしてるわ。
「で、でも……それとハルトさんがそんな事をするのはどんな関係があるですか?」
今度は、リコピンがレイナさんに質問する。
「うむ。それはだな。奴は絶対に男は襲わないからだ。もし、奴を見つけたとしても男を見たら逃げ出してしまうかもしれないしな。それに……」
「……それに?」
「そっちの方が面白そうだからだ! だからハルト! お前の可愛い女装姿を楽しみにしてるな!」
そう言ってレイナさんはポンッと肩を叩くと、ぷははっと笑った。
そう、オレが納得出来ない事とはクエストの為に女装をさせられる事だったのだ……。
…………。
……。
✢
「けど、ハルトが女装したらどうなるのかしらかね? 意外と可愛くなったり……。まぁ、それはハルトに限ってないわね」
リリスはそう言って、バカバカしいと言わんばかりにため息をついた。
「確かに、リリスが言うとおりにハルトの女装姿は気になるな。まぁ、顔は冴えないが……。スタイルは、それほど悪くはないからな」
シルビアは、オレを見て品定めをするかの様にうむーと唸る。
「わ、わたしは……どんな結果になっても……わ、笑わないから」
リコピンは、どんな女装を想像したのか笑いを頑張って堪えていた。
こいつらは他人事だと思って、面白可笑しく言いやがって。
やるとは言ってないのに、やる方向になった奴の気持ちも考えて見ろよって話しだぞ。




