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おもいだした
私は本を閉じ、忘れていたことを思い出した。
そうだ、『プルトゥールルのたび』の作者は私だ。
これほど素晴らしい物語なのに。
これほど面白い物語なのに。
結末を書かなかったのは私だ。
私はそれを思い出した。
私は本をカウンターの上に置き、店を出た。
『モトヤ書店』。
ここは私の本がある本屋。
しかしそれは存在しない本屋。
私が物語を完成させるまでは、決して存在することはない本屋だ。
よし、帰ろう。
私はもと来た道を歩き始めた。
空はまだ暗い。
この夢は時間が止まっているかのような静かさだった。
私はやがて家に帰り、自分の部屋に戻った。
ベッドに入りうずくまる。
するとすぐに、スーッと意識が遠のいていく。
やがて……
私は夢から目覚めた。