緊急討伐クエスト
まだ薄暗い早朝の時間帯。明るくなるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。
メルニダ王国王都リースの冒険者ギルドでは国王からの緊急討伐クエストの依頼を受け、Cランク以上の冒険者がギルドの建物に集められていた。
沢山の依頼の募集票が貼ってあるボードの前には40名ほどの冒険者が集まっていた。
そんな冒険者たちの前にギルドの受付嬢が立ち、依頼内容を説明していた。
「皆様、朝早くからギルドへ集まっていただきありがとうございます。今回、ヤーヴェン国王から直々に緊急討伐クエストの依頼を受けたため、Cランク以上の冒険者である皆様をお呼びした次第でございます。では、依頼内容を説明します。依頼内容は、魔獣5体の討伐です。魔獣のクラスはAから特Aでございます」
「「「特Aだと!!!?」」」
特Aクラスと聞き、冒険者の多くが驚いている。そんな中でも、やはり数名のAランク冒険者たちは落ちついた様子だ。そしてAランクの冒険者の一人が依頼の詳細を受付嬢に尋ねた。
「それでニーナさん、魔獣の種類と出現場所は?緊急討伐クエストってことはかなりヤバイのか?」
ニーナと呼ばれた受付嬢は質問に頷きながら答えた。
「はい、カーツさん。状況は切迫しております。今日未明に南方都市レブリックの街外壁の外側にて突如として魔獣が出現しました。そして、魔獣はユニコーン、ゴブリン、グリフォン、フェニックス、マーメイド種の上位種との情報がレブリックのギルドから入ってきております」
「グリフォンにユニコーン、フェニックスか。なるほど、かなりな大物だな!」
「はい。現在のレブリックの冒険者だけでは対処できるものではありません。皆様には至急レブリックにむかってもらい、そこでレブリックなの冒険者ギルド及び国軍と連携して討伐をしてもらいます」
「そんな、俺たちはCランクだぞ!!グリフォンなんか相手に敵うわけねぇよ!!」
受付嬢から依頼の詳細を聞き、一人のCランク冒険者が喚くように抗議する。その抗議に続くように「そうだ、そうだ」と抗議の声が出始めた。
抗議に受付嬢のニーナは困った顔を見せる。
「しかし、冒険者ギルドの規則に緊急討伐クエストの際の参加義務条項がございますし・・・」
ニーナが受け答えに窮している様子を見かねて、最初にニーナへ質問したAランク冒険者のカーツが抗議する者たちを宥めようと口を開こうとしたその時。突然、冒険者ギルド入口の扉が開き、大男が怒鳴り込んできた。
や
「お前ら、五月蝿えぞ!!ぴいぴい喚くんじゃえねえ!!それでも冒険者か!」
「マスター!!!」
ニーナは、大男をマスターと呼んだ。この大男はリースの冒険者ギルドのギルドマスターであった。
「しかし、ギルドマスター!グリフォンの上位種なんて、俺たちが戦ってもただ殺されちまうだけですよ!!」
なおも抗議を続ける冒険者たちにギルマスは野太い声で言う。
「ああ、そんなことはわかってる!!だからCランク及びBランクの戦闘があまり得意じゃない連中は魔法等での補助がメインだ。直接戦闘はさせねえ。だから安心しろ!!」
「なんだそうなのか!それなら心配ないな!それなら参加していいぜ!!」
ギルドマスターの言葉を受けて、Cランク冒険者たちは安心する。その様子を見たギルドマスターがさらに言葉を続けた。
「それから、これも朗報だ!リースからレブリックへの街道上にあるエハナの街にSランク冒険者の|"音無"《おとなし》のパーティが滞在してることが分かり、連絡したところ今回のクエストへの参加が決まった」
「"音無"が!?そりゃあ、心強いぜ!」
Sランク冒険者パーティの参加が決まり、ギルドに集まった冒険者たちは興奮に包まれた。
Sランクはギルドの最高ランクであり、特Aクラスの魔獣を10体以上討伐した者だけがなることのできるランクだ。
ハール大陸全土でも現在Sランク冒険者はわずか7名しかいない。
「わかった。それで報酬は?」
「報酬は参加した冒険者全員に金貨70枚。それと戦闘に参加する者にはさらに金貨30枚だ。それと実績に応じての追加報酬の用意もあるそうだ! 」
報酬の額を聞いた冒険者たちの間に「おおぉ」とどよめきが起きた。
「最低報酬が金貨70枚とは随分と太っ腹だな。流石ヤーヴェン国王様直々の緊急クエストってところか!」
「ああ、先ほど大臣のワズキ様と直接話をつけてきた。それと今回のクエストは、メルニダ王国の存亡に関わる問題らしい!」
ギルドマスターの言葉にAランク冒険者たちが首をひねる。
「ギルマス、どういうことですか?確かに特Aクラスの魔獣は脅威だ。しかし、高ランク冒険者と国軍が討伐に参戦すれば被害はそれなりに出るだろうが討伐は可能なはずだ。ましてや今回は、あの"音無"も参加するのであれば討伐はほぼ確実なはすだ。それなのに、なぜメルニダ王国自体の存亡に関わるのだ?」
「それなんだがな。現在、パラディオンの街がホストル王国軍に包囲されているらしい。レブリックの軍が援軍に駆けつけようにも魔獣たちが邪魔で援軍を送れないそうだ。魔獣討伐に時間がかかりすぎるとパラディオンが陥ちちまうらしい!」
カーツの疑問へのギルドマスターの返答に再び冒険者たちの間でざわめきが起きた。
ギルドマスターは再び大声で冒険者たちを怒鳴る。
「五月蝿え!静かにしろ!!俺たちは冒険者だ!パラディオンへの参戦はねえよ。しかし、魔獣討伐は冒険者の仕事だ。今回のクエストの重要性を理解したのらなら少しでも早く魔獣を討伐するんだ!いいな!!」
ギルドマスターの言葉に冒険者たちは全員無言て頷くのだった。
「よし、わかったらとっとクエスト参加への準備を整えろ!!半刻後、リースの南門前に集合だ!そこからは国軍とともにレブリックへむかう!!急げ!!」
ギルドマスターの言葉に冒険者たちは慌ただしく動き始めるのだった。
○○○
冒険者ギルドにて冒険者たちが緊急討伐クエストについて説明を受けている頃、リースの王城では会議が開かれていた。
「兵糧の備蓄は??」
「はっ、問題ありません!レブリックの街には十分な量がございます」
「パラディオン周辺の村の様子は確認できたか??」
会議室で着々と会議が進む中、軍務大臣の一人であるワズキが遅れて会議室へ入ってきた。
「遅れて申し訳ありません!!」
ワズキが遅れてきたことを詫びて頭を下げようとするも国王ヤーヴェンがそれを手で制する。
「よい。それよりもギルドマスターとの話し合いはどうであった?」
「はい、ギルドの方でも現在Cランク以上の冒険者を招集しているとのことです。事が事だけに急いでやっているようです。それと一つ朗報がございます。こんクエストにSランク冒険者の"音無"のパーティの参加が決定しました!」
「なんと、それは真か!!よし、これで魔獣の討伐が幾分かはスムーズに行えるるはずだ。冒険者たちと騎兵1500を先行させるのだ。それと、宮廷魔道士たちを総動員して後続の兵士たちに強化魔法を施すのだ。後続の兵士たちも2刻後には出発できるようにしろ!!行け!」
国王ヤーヴェンの指示に「ハッ!!」と返事をすると、ワズキは再び会議室を後にした。それから、再び会議を再開するだった。
王都リースにて国王たちが会議に行い、冒険者たちが緊急討伐クエストの準備を進める頃。
メルニダ王国最南端の街パラディオンでは、メルニダ王国側もホストル王国側も予想していない事態が起きていた。その情報が両国に届いたのはその日の夕方であった。




