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勇者スレイヤー 勇者絶対殺すマン  作者: ランタン丸
27/33

後手



朝というには暗すぎる時間


メルニダ王国王都リースの王城の一室では国王ヤーヴェンが軍務大臣からの報告を受けていた。

報告の内容は、ホストル王国の王都に兵士が続々と集まっているというものであった。


「ワズキよ、その報告の内容は間違いないのだな?」


「はっ、間者からの通信魔法にて今日未明に届いたものです。複数の間者から同じ内容の報告を受けましたから間違いはないと思われます」


大臣のワズキの言葉にヤーヴェンは表情を険しくした。


「それにしても間者どもは何をしていたのだ?2日前の報告ではホストル兵がドゥームに集結する予兆の様なものは報告を受けなかったぞ!ホストルの各地から兵士が集まっているのならもう少し早く段階でわかったはずだ!!」


ヤーヴェンは怒りを抑えることができず、口調を荒げてしまう。そして、間者たちがホストル兵の動きを見落としたことに腹を立てるのであった。


「陛下、間者どもを責めるのはお止めください。私が間者から直截聞いた話では、本当に突然にドゥームにホストル兵が集結したそうです。何でも一日で少なくとも1万3千は集まっていたとのこと。さらに各地方都市からドゥームまでの街道上の街にはホストル兵が立ち寄ったという事実は確認できませんでした。おそらく街道を通らずに秘密裏に兵士を集めていたのかと思われます」


怒るヤーヴェンに対し、ワズキは冷静に淡々と報告をする。その報告を聞いてヤーヴェンも次第に落ち着くのだった。


「すまぬ。つい取り乱してしまった。今日未明に通信魔法による報告を受けたということは、少なくとも2日前の夜の時点における兵士の数が1万3千であったということだ。2日経った今日においてはさらに兵数がいると見て間違いないな」


「はっ!陛下のお考えの通りかと。おそらく2万は超えるはずです。今夜にでも引き続き連絡があるかと思われます。」


通信魔法魔法。それは離れた地点同士の情報のやりとりを小型の魔水晶を通して行うことができる魔法である。

情報の授受の重要性は時代や世界が異なっても変わることはない。各国は通信魔法を他国の情報収集や軍事目的などに用いていた。

しかし、通信魔法にも欠点がある。まず、魔法であるため適正のある者しか使用できないという点だ。次に、通信できる範囲が使用者の魔力量に左右される点である。通信魔法の通信範囲の平均はおよそ5里ほどである。そのため、隣国の情報となれば中継地点をいくつか経由することになるのが一般的だ。

そして、最後の欠点として、情報量が多いほど通信速度が遅くなる点だ。

今回、メルニダの間者がドゥームからメルニダ本国までに情報を届けるのに2日もかかってしまったのは、中継地点をいくつも経由した上に情報量が多かったために時間を大幅にロスしたことによるものである。




「よし、予め決めていた通り、北方から王都に駐留させている兵を南下させろ。要所のレブリックに兵を直ちに送るのだ。それと東方と西方の街周辺からリースに兵を集めろ。レブリックは、高く頑丈な壁に覆われている都市だ。ゆえに守る我ら側が圧倒的有利。今から兵士を送れば間に合うだろう。急ぐのだ!!」


ドゥームからレブリックまでは、3日から4日はかかる。大軍での移動となればもっとかかるであろう。

国王ヤーヴェンは、素早く軍の移動速度を予想し指示をだす。標高の低い

レブリック側の山道を通るとは言え、ヒダン山脈を越えなければならないのは変わりなく、今からリースから兵を送ればレブリックに余裕をもって間に合うと判断したのだった。


ワズキは、国王ヤーヴェンの指示に頷くと、すぐに軍に指示を出そうとし部屋を出ようとしたその時だった。


「陛下、陛下!!!ご報告がございます!」


近衛兵士が国王ヤーヴェンとワズキにいる部屋に飛び込んできた。

近衛兵はひどく慌てた様子である。



「なんだ!!ホストル王国がついにドゥームから我が国へ進軍を開始したか!」


国王ヤーヴェンの言葉を近衛兵は首を横にして否定する。


「いいえ、そうではありません!!先ほどレブリックから通信魔法により緊急の連絡が入りました。なんと、今現在レブリックの街を複数の魔獣が取り囲んでいるとのことです!!」


「なんだと!?」


軍務大臣のワズキは報告を聞いて青ざめる。一方の国王ヤーヴェンは、近衛にさらに詳しく情報を聞き出そうとした。


「魔獣の数とクラスは?#ここ__王都__#まで報告するほどのことだ。数が多いのか?」


「いいえ、現在確認されている時点で数は5体だそうです。ただ、5体すべてがAクラスまたは特Aクラスとのことです!!」


「「特Aだと!!」」


国王ヤーヴェンとワズキの声が重なり、ともに目を大きくして驚いている。


特Aクラスの魔獣は、滅多に出るものではない。しかし、クラスは上から2番目であり、討伐には軍や高ランクの冒険者が総出でかかる必要がある。そんなクラスの魔獣が複数出現したとなれば大事である。


「レブリックの街はどうなっている。討伐には動きを出しているのか??」


「はっ、報告によりますとレブリックの兵士が討伐を試みましたが失敗。死傷者の数は300名を超えるとのことです。現在は、南方伯指示のもとレブリックの街の門を全て閉じて、籠城して近隣の街から援軍を待っていることです」


「さすが南方伯よ。対処が早いわ!よし、すぐにリースの冒険者ギルドに連絡して緊急討伐クエストを出すのだ!急げ!」


国王ヤーヴェンの指示に「はっ」と応じると近衛兵は走って部屋をでていった。


国王ヤーヴェンとワズキの2人きりになった部屋の中は重苦しい空虚に満ちている。そんな中で、国王ヤーヴェンが口を開いた。


「どう見る、ワズキよ!やはり、今回のレブリックの魔獣出現とホストル王国との関連性はあると見るべきかの?」


ワズキは頷いて答えた。


「そのように見るのが自然かと。あまりにもタイミングが良すぎます。これでレブリックの街の壁が壊されたり、兵士の多くを失うことになれば、我々はホストル王国軍をレブリックで迎える打つことができなくなります。しかし、特Aクラスの魔獣を従獣にし、街を襲わせることなど可能なのでしょうか?」


「そうなのだ!その点が謎だ!!仮に特Aクラスを従獣にできたとしても、それほどの使い手や従獣なら我が国へもその情報が入ってくるはずだ!しかし、そのような話は噂話でさえ聞いたことがない」


「おっしゃる通りでございます」


国王ヤーヴェンは、思考を巡らせて考える。そしてある存在に辿り着く。


「まさか、聖国の勇者なのか!」


「聖国の勇者は確かに化け物のような強さを持つと言われていますが、従獣を飼い慣らしているなどという話は聞いたことがございません」


「うむ、確かにそうだ。しかし、それ以外の存在は考えられん。我々もホストルに勇者が派遣されたと聞いて、勇者に警戒はしていたが、まさかこのような力まで持っているとは予想外だ!」


国王ヤーヴェンは、ホストルに勇者が派遣さてたのを知った時から情報収集をしっかり行っていた。

先の勇者アカズキンやモモタロウなどの戦争での活躍から勇者は魔法や剣術に優れた者たちであることは把握していた。そして、勇者を単純な武力として脅威であると認識していたのだ。

しかし、その認識が甘かったことを国王ヤーヴェンは痛感した。


「勇者がこのようなことまでできるとはな・・・。完全に後手に回ってしまったわ!!」


国王ヤーヴェンは悔しそうに唇を噛んだ。


「先ほどの陛下の指示と合わせ、緊急討伐クエストを受けた冒険者たちとともに兵士5000をレブリックまで向かわせるように急いで指示をします。また後ほどに会議を開き今後の対応を協議いたしましょう」


「そうだな。今はレブリックに援軍を送ることが先決だ。すぐに手配しろ。会議の手はずは儂が指示をだす。急げ!!」



ワズキが今度こそ部屋を出ようとした時、先ほどとは違う近衛兵がまたしても慌てて部屋へ駆け込んできた。そして、国王ヤーヴェンと大臣ワズキに報告するのだった。


「ほ、ほっ報告します陛下!先ほど通信魔法にて緊急連絡がありました!」


「なんだ?レブリックの件はもう聞いたぞ!」


「レブリックでは、レブリックではございません!!現在パラディオンの街にがホストル王国軍の兵士、約1万に囲まれているとのことです。至急援軍を求むとのことでごさいます!!!」


「「なんだと!!!」」


新たな報告を聞いた、国王ヤーヴェンとワズキの驚嘆の声が王城の一室に重なり響くのであった。



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