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勇者スレイヤー 勇者絶対殺すマン  作者: ランタン丸
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敗北




ハイリと勇者との間で激しい剣戟が続く。戦う2人の周りを多くの兵士を囲んでいる。兵士たちはあまりの2人の戦いのレベルの高さに圧倒され、勇者に加勢することができずにただ戦いを見ていることしかできなかった。


「チッ、しぶてぇ野郎だ!魔法を使ってないとはいえ、俺と剣でここまで張り合うヤツが勇者以外ではいるとはな!初めてだぜ!!でもこれならどうだ?」


勇者はハイリを斬ることができずに苛立ちながらも、さらに剣を早く振る。ハイリも必死に勇者の剣についていく。


「なんだ、これは?あの者は一体何者だ!!」


戦艦の甲板に出たマーベルは、2人の戦いを見て驚愕した。

勇者は魔法を使用してないが、その剣は確実に人外の領域にある。その者についていく者もまさに人外である。



「 これも耐えるか!しぶといな。ゴキブリのような野郎だぜ!仕方ねえ、これで死ね!!ファルミ… 」

「なりませぬぞ!!勇者様!!!」


必死に勇者の剣に食いついていくハイリに勇者をしびれを切らし、魔法を唱えようとした。しかし、左手を突き出し、魔法を唱え終わる前にマーベルの叫びにより勇者は魔法を中断した。


「なりませぬ、なりませぬぞ勇者様!勇者様の魔法の威力では、例え下級魔法といえど戦艦が保ちませぬ!!魔法の使用はご控えください!!」


マーベルは必死に勇者に魔法の使用を控えるように説得する。

シエン王国軍の参謀としてマーベルは勇者の力を正確に把握していた。最新鋭の自慢の戦艦でさえ、勇者の魔法の前には耐えきれず破壊されてしまうことを理解していたのだ。戦艦が破壊されてしまっては自分をはじめとする多くの兵士が海に投げ出されてしまう。そうなれば命の保証はどこにもないのだ。


舌打ちをしながらも勇者はマーベルの言葉にかざした左手を下げる。そして再び左手を剣にそえて剣術を繰り出す。そして、そこからさらに激しい剣戟の応酬が始まるのだった。


戦艦の上だからこそ、勇者は攻撃手段を剣にのみに頼る他ない状況に陥ってしまっていた。


実はこの状況こそハイリが描いた展開であった。ハイリはナルカの都にて勇者の魔法を目の当たりにし、勇者に魔法を使わせては分が悪いと判断した。

ゆえにハイリは勇者に追いつきながらもすぐに勇者を倒しに行くようなことはせず、勇者が船に乗り込みハール大陸に戻るのを待っていたのだ。

ハール大陸とガイア大陸の間を大軍で行き来するには複数の船を利用するしかないとの行動を読んでの作戦であった。


そして今その作戦は功を成することになる。シエン王国軍は三等分され、勇者は魔法を使うことができないでいる。作戦は上手くいきあとは勇者の首をとるだけだと思われた。

しかし、ハイリをなかなか仕留めきれない勇者はある魔法を唱える。この魔法によりハイリの作戦は無に帰すことなる。


「ちくしょう、鬱陶しい野郎だ。ととっと死にやがれ!!スイアクリスト」


勇者は正直、戦艦が自身の魔法で破壊され兵士たちが海に投げ出されても別にどうでもよかった。なぜなら自分には魔法があり、例え戦艦が壊れ沈没したとしても助かる自信があったからだ。

それでも勇者が魔法をあえて使用しなかったのは理由がある。それは単なるプライド問題だった。自らの率いた軍隊において多くの兵士が死んだとなれば、他の勇者たちに馬鹿にされる可能性があったのだ。



勇者の左手から青白い光が放たれた。しかし、その光はハイリには向かわずに海へ向かって弧を描いて落ち行く。そしてその光が海面に触れた瞬間にそれは起きた。

戦艦の周辺の海が氷に覆われたのである。

これにはハイリも驚きを隠せなかった。ハイリは目を見開いて凍った海の方を見る。


「なっ、今度は氷の大魔法だと。しかもなんて範囲だよ!!さっき複合大魔法使ったばりだろ!まず、、っ、、」


ドンッという音とともにハイリの脇腹に衝撃がはいる。勇者の蹴りを受け、ハイリは戦艦の外側、凍った海へと蹴り飛ばされた。

ハイリが凍った海に気を取られ、ほんの一瞬勇者から意識が逸れた。その一瞬を勇者は見逃さず、脇腹に蹴りを入れたのだ。


ハイリは凍った海面になんとか着地するものの、脇腹の痛みに顔を歪める。


凍った海面上は、氷の上だけあって冷たく、おまけに足場がかなり悪かった。足が滑り、力が足に入らない。剣での戦闘にむかないことは明白だった。それを悟ったハイリは持っていた剣を捨てるとアイテムバックを取り出す。

ちょうどその時だった。


「よお、死ねクソ野郎、ファルミズノーラ!」

「⁉︎、、ちくしょうおおお!!!」


勇者は甲板から凍った海面に飛び降りるとハイリに詰め寄り、魔法を唱る。

勇者が魔法を唱えた直後、強烈な雷がハイリに襲う。そして、悔しさがこもった叫びとともにハイリは雷の光に飲み込まれるのだった。





「吹き飛んだか。虫ケラごときが神に選ばれし勇者たる俺に楯突くとは、笑わせるな!!俺は神聖ビルマス国の勇者第七位モモタロウ様だぞ!!」


勇者はハイリが立っていた場所を見ながら誇るように言う。

雷光が収まりハイリが立っていた周囲の氷は雷の熱により溶けていた。そしてハイリの姿はどこにもなく、海だけがあるのだった。





「ご無事ですか?勇者様!ぞ、賊は、賊は討つことができたのですね!」


勇者が雷の大魔法を唱えてからしばらくすると、氷上に立つ勇者のもとへ戦艦から降りたマーベルが隊長格を含めた兵士50名ほどを引き連れて駆けつけた。


「ああ、勿論だ。勇者の俺が人間如きに負けるわけないだろ」


「人間?賊は人間だったのですか?それでは賊の正体はお分かりになられたので?」


マーベルは賊の正体が人間だと知り驚く。


「ああ、人間だ。奴の瞳は緋色ではなく黒色だった。魔眼ではなかったな!

あまり喋らなかったが、俺の首をとり、魔王を取り返しに来たと言っていたぞ」


「そうでしたか。私はてっきり魔族の生き残りが復讐に来たものとばかり…もしや魔族に組し人間、神アポクリフの教えに背きし異端者ですかな?」


「可能性は高いな。だが俺が殺したのだ問題はない」


「そうですな。賊のことは本国に戻り次第改めて調査させましょう。それよりも今は勇者様のお手当てを急ぎましょう。」


勇者の腕には小さな切り傷が無数にできており、僅かではあるが血が流れている。ハイリとの剣戟の応酬中にハイリの剣圧により負わされたものだ。


「必要ない。自分でやる」


勇者が回復魔法を唱え、綺麗に傷を治す。


「流石ですな。先ほどの戦闘で大魔法を連続で使用したにもかかわらず、まだ魔法が使えるとは!」


マーベルは勇者の魔力の多さに感嘆するした後、勇者に戦艦に戻り休むように促し、勇者とともに戦艦に戻るのだった。


勇者は戦艦に戻ると魔法にて出現させていた小さな太陽を消し、氷の大魔法、スイアクリストを解除する。

これにより、再び夜の闇が空を覆い、戦艦が海に浮く。そして、戦艦3隻はシエン王国を目指して再度海を進み始めるのだった。


先ほどの戦闘が嘘のように海は静かだ。




この日、ハイリは勇者モモタロウに敗北するのだった。












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