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 違和感4

「今日は碧、こっちなんだ」

 千穂は武尊が肩に乗せてきたぬいぐるみにそう言った。

「うん!俺、武尊の使い魔だもん!武尊といる!!」

ぴょんと肩から飛び降りて胸を張る。

「はいはい、足元にいると危ないよ」

「大丈夫!武尊は俺を踏んだりしないから!」

「その気はなくても危ないでしょ」

「大丈夫だよ!」

碧は大丈夫の一点張りだ。碧は武尊と話しながら視線を千穂にやった。体がぬいぐるみのため、上半身全体を使って首を傾げるポーズを取る。

「千穂から、武尊の力のにおいがする」

そう言われ、ああ、と千穂は頷いた。

「これかも」

パジャマの下に入れている石を取り出して見せる。碧はぴょんとベッドに飛び乗り石をまじまじと見つめた。

「石も、紐も特別だ」

「先生のだからかな」

千穂は碧に差し出すように石を持った。碧はちょいちょいと石に触る。

「武尊、何かした?」

碧は振り返りながら尋ねる。

「石に紐を通したよ」

武尊はベッドの隣の床に敷かれた布団に座っていた。

「それでか」

「どうしたの?」

千穂は首を傾げる。碧は千穂に向き直った。

「石に紐を通すのを一種の儀式に見立てて、武尊の力を石と紐に込めたんだ」

「というと?」

千穂はよく分からずより詳しく説明を求めた。

「武尊の力がこもってるけど、消費されちゃうから定期的に紐を通し直してもらうといいよ」

碧はちょっと違う答えを返したが、その言葉は聞き捨てならないものだった。

「待って、定期的に紐を通し直した方がいいって、どれくらい?」

武尊が碧に尋ねる。碧はまたぴょんと跳ぶと武尊の膝の上に着地した。

「ひと月に一回くらいかな」

「それくらいで良いんだ?」

「うん」

―どうして先生はそのことを言わなかったんだろう

武尊はちらと視線を上げて千穂の石を見た。

 あれは確かにお守りとして機能するらしい。それはいい。でも、どうして紐を通し直す必要があることを言わなかったのだろう。

「先生そんなこと言ってなかったのにね」

千穂も同じことを考えているようだった。

「お守りとして使いたいなら、儀式をするのは大事だよ」

碧が武尊の足に座りながら言う。

「言い忘れちゃったのかな」

「あの人が?」

まさかと武尊は千穂の言葉に否と答えた。

「やっぱり?」

「―言わなかったの方が正しいと思う」

―徐々に無力化することを狙ってたのか?

「期限はひと月」

ちょうど夏休み一杯がきれいに入る長さだ。

―この夏休みだけ機能すればいいと考えたって事?

―やっぱり

―この村には何かあるんだろうか

「難しいことは分からないや」

千穂は考えることを放棄した。それに武尊はため息をついて布団に転がった。

「―寝よう」

「そうだね」

千穂がベッドの上で蛍光灯のひもを引っ張った。あっという間に暗くなる。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

千穂が規則正しく寝息を立て始めても、武尊は考えることをやめなかった。


 ぱちぱちと火がはぜる。ゆらゆらと明かりが揺らめく。深い深い闇の進行をわずかな明かりでとどめるその場所。今日も今日とて男たちは集まっていた。

「今日は森で遊んでたな」

「千穂だけでもあそこからかっさらってこれればなー」

「無理だよ。金色の使い手が一緒だ」

「でも、今日は昼寝してたぞ?あの隙でさらえなかったのか?」

「何か危険があると剣が鳴って教えるらしいぞ?」

「なんだって?」

「荒川のところのが聞いたらしい」

「荒川のところのは噂話が好きだからな。本当にあってるのか?」

「本人たちと直接話したらしいぞ」

「まだ信ぴょう性はある方か」

「本当ならよく考えて行動しないとな」

その言葉に男たちは黙り込んでしまう。

「・・・・・・もし金色の使い手を千穂から離すことに成功しても、千穂が危険だと思ったらそれが剣を通じてあいつに伝わるってことか?」

「そうだな」

「じゃあ、離すだけじゃだめだな」

「時間稼ぎも必要だ」

「・・・・・・殺せないか?」

「どうやって!」

あいつの強さを見なかったのか?と声が上がる。

「でも、何も知らずここに入ったら」

「「!!」」

「あいつがどれだけ強くてものろいには勝てない」

「それだ!」

一人が手を叩いた。

「どうにかしてここまで誘導できれば!」

男たちはより一層顔を近づけて話し合った。


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