表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルの秘密の資料集  作者: イナンナ
番外編 幕間劇場
38/46

217幕間 辰砂とイルの1分クッキング チャリコも余さず食べちゃおうスペシャル

「はい、ここに貰い物のチャリコがあります」


「ちゃりこ……?ですか。変な名前の魚ですね」


「あ、もしかして地方名なのかな。小さい鯛のことです。30cm位じゃまだちょっとチャリコ卒業は難しいね」


「小さいんですかこれ?辰砂の好きなウンメーアジくらいありますけど」


「魚によってどれくらい大きくなれるかが違うからね。鯵で30cmあればそこそこ大きい方だよ。ま、さばき方にそんなに差はない。鱗を取るとこから始めます」


「わあ、鱗がバリバリ言ってます。ウンメーアジのときはシャリシャリって感じでしたけど、ずいぶん固い鱗なんですね。どうしてなんでしょう」


「すまない、鱗の頑丈さが何から来るのかって言うのは詳しくないんだ。とにかく鯛は硬く、鯵は柔らかいってね。鱚や細魚も柔らかいところを見ると、食物連鎖の下の方の魚の方が柔らかい傾向があるのかな?」


「え……それだと食べられるための魚みたいで何だか切ないです。違うといいな」


「そうだなあ、ちょっと寂寥感みたいなのがあるね。さて鱗を全部剥いだら頭を落とし、腹を開けて内臓とエラを取りましょう。小さいけど骨の固い魚なので、不安があれば先に腹を開けてエラと内臓を抜く方でも大丈夫です」


「あ、確かに背骨がかなり手強いですね。すとんと落ちない」


「鰤の時にやった骨の継ぎ目を思い出して、継ぎ目に刃先を刺すようにして少し切れ目を入れるとやりやすいかもしれないなー」


「骨を少し割るような感じに見えますね。ああ、切れ目から刃元を割り込ませて背を叩いて切るんですか。ずっと刃先じゃまな板に穴空いちゃいますもんね」


「包丁にもよくないからな。間違っても刃先を突っ込んだままこじったりしてはいけません。いつか折れます。はい、そうこう言っているうちにいつも通り三枚おろしまで終わりました」


「いつもながら、切り身になるとちっちゃくなっちゃいますね。魚って意外と可食部位が少ないのがネックだなー」


「イルよ、それは大いなる誤解です。どうして鰤大根を食べているのにアラを基本切り捨てて考えてしまうんだ。ちゃんと食べられます」


「えー、だって鰤はアラも大きかったですけどこのちゃりこ?は頭すら掌より小っちゃいじゃないですか。食べるとこなんかなさそうですよ」


「何たる暴論!同じ魚類、同じパーツなのに分解できないわけがないだろう?さあイル、今こそフォークを捨てて箸を取る時です!イルのDexで箸が使えないわけがない!と、言うわけで出来上がるまでこれで練習してなさい」


「箸ってこの棒2本の事です?あ、一応お手本は見せてくれるんですね」


「持ち方を間違って覚えると食べにくいからね。そうそう、上の箸を人差し指と中指で挟んで動かす、下の箸は動かさない。ばっちりじゃないか。良しじゃあこの小豆をこっちの皿からこっちの皿に一粒ずつ運ぶんだ」


「何の苦行なんですかこれ……?つるつるしてつまみ辛いんですけど、うう。せめて食べ物で練習したかった」


「そしたら食べちゃうじゃないか。大丈夫、あとで食べられるから。何なら小豆も煮たら美味しいから」


「え、これ食べものなんですか?なんかの種だと思ってました。俄然やる気出てきました、よーしやるぞー」


「(急に速過ぎるぞ。胡麻粒でもよかったかも……)イルが練習しているうちに調理を進めていきましょう。えーっと、アラを適当に切り分けて塩をしておきます。臭みが汁になって浮いてきたら、湯通ししてたまり水で洗います。案外血の塊とか取れて楽しいですよ」


「おろした身の方は、今回は少ないのでヅケにして楽しむことにします。酒、醤油、味醂を2:1:1くらいで煮切り、そこに刺身状態にした切り身を放り込んでしばらく置くだけですね。胡麻をたっぷり使った茶漬けも美味しいですが、アラを汁物に仕立てるつもりなので今回は丼向けにします」


「辰砂、終わりましたよ」


「あ、イル、全部移したら元に戻して。繰り返しやるともっと早くなるからね」


「はーい。頑張るぞー」


「(やっぱり速すぎるなあ……)では、水気を取ったアラと昆布を水を張った鍋に放り込みます。出汁が良く出るように弱火にかけていきましょう。気分で少し酒を垂らしておくのも良いですね、澄まし仕立てのときには必須ですが味噌汁ならどっちでも大丈夫です」


「私は魚味が好きなので、入れる具も淡白なものを選びます。豆腐とか麩とかね。香味として葱は入れますが、これも煮る派と後から入れる派に別れますね」


「沸騰する頃になると、灰汁がじゃんじゃん出てきます。これは丁寧にすくっておきましょう。この辺りで昆布は取り出しておいてください。60度以上になるとえぐみが出るとかよく言いますが、味噌汁のいいところはざっくばらんでも大丈夫なところです。思い出したら除けてください」


「アラに火が通るまで煮たら、自然と良い香りがしてきます。魚臭いと魚の香りと言うのは別の物だと思うんですが、まあこれは個人の感想ですね。ここまで来たら具を入れて、具に火が入ったら味噌を溶いて出来上がりです。葱を散らしても良いし、三つ葉とか山椒とか好きな物を飾りましょう」


「ヅケ丼に使うご飯は白飯が好きですが、酢飯を使う人もいるかもしれません。正義は人の数だけありますから、好みでセレクトしてください」


「白飯に潔くヅケのみな人もいますし、薬味たっぷりを愛してやまない人もいます。私はなんだかんだ切り胡麻と大葉が定番なので、今日はこの二つと余った葱を白髪葱にしたものを準備しました。あとは山葵ですね」


「おーいイルできた……よ……(残像が見える……だと!?)」


「あっ辰砂できあがりですか?あ、もう配膳も終わってるんですね。はー、さっきからすっごい良い匂いがしてお腹空いちゃいました、練習の成果が出るかなあ?」


「う、うん。正しい持ち方が出来てるみたいでよかったよ(あんなに速くなるとは思わなかったけど)。さて、頂こう。いただきます」


「はい、頂きまーす。ずず……む!なんだろう、汁の中に魚感が溢れてる!いつもの出汁と全然違う感じですよ!」


「うん、ちゃんと臭みも取れてる。懐かしい味だな。出汁に使った材料で、全く違った特長が出るんだよ。同じ魚類でも違う味になって面白いからまた作ろう」


「そうなんですね。このさっぱりしてるはずなのに濃厚な感じ……好きだなあ。ご飯の方も食べてみようっと、あれ、これ生ですよ?」


「あ、そう言えばイルには生魚を食べさせたことはないんだっけ。うっかりしたな。とは言え美味しいから、一口食べてみて嫌いだったら火を通そうか」


「へえ?料理って必ず火を通すわけじゃないんですね。もぐもぐ……ごくり」


「(黙ったな、これは駄目だったか?……あ、二口目いった。三口、四口……かっこんでる)」


「ふはあ。美味しかった……ねえ辰砂、生ものも美味しいものなんですね」


「うん。ちゃんと気を使えば魚も美味しく生食できるんですよ。とは言え衛生面や管理面でハードルが高いので、少しでも不安な時は必ず火を通すことが大事だからね」


「もう全部食べちゃったんですが、あ、お代わりは無いんですか……後はお味噌汁だけか……。ずず……ん、出汁を取ったお魚もお椀に入ってますよ?」


「そりゃ入れるよ、だって具だもの。鰤のときと要領は一緒だ、さあどうぞ!さっき練習した箸使いを見せてごらん」


「はっ!そうか、この為に俺は小豆を……!わかりました!ええとまずは頭の後ろのあたりに肉が……」


「そうそう。あとは目の周りと頬、唇とかから攻めていくととっつきやすいね。うーんやっぱりアラって美味い」


「はあ、美味しかった……案外頭の骨ってばらけるものなんですね」


「そうだなあ。全部食べるとコンパクトな山になるよな」


「……Dex値が倍近く離れてるのに何で俺の骨の方が汚いんだろ?」


「え?何だって?」


「何でもないですよ。次はもっと綺麗に食べたいなって思って」


「いい心がけだな。次はカワハギで作ろうね。いい加減カワハギの味噌汁が食べたくて死にそうなんだ。釣れないんだけどね!」


「そうなんですか?そんなに釣るのが難しい魚なんですか」


「うーん、口が小さいので合わせづらいんだな。もうこの際ウマヅラでもいいから釣れてもらいたい。もうそろそろ寒くなって肝が太り始めるから、今年こそ食べたいんだけどなあ、もう船デビューするしかないのかな」


「最後はよく分からなかったですけど、何となくカワハギなる魚にかける熱意は伝わりましたよ!多分釣れますよ、ね、辰砂!」


「うーん、ありがとうイル。頑張ってみるよ……と、そろそろお時間が来たようですね。それではまたいつかお会いしましょう。ごきげんよう」


「ごきげんよう!」


イルをどんどん日本人化させる作戦(無意識化で)進行中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ