217幕間 カリスマちゃんとウール君 その④
ウール君はご機嫌です。だって前回イルに恐るべき真実を告げられたけれど、色々考えた結果カリスマちゃんに愛を告げることに成功したのです。これでもうウールくん達は相思相愛です。古典的表現をするならアツアツってやつです。
毎日カリスマちゃんの頭部を暖めてあげて、ウールくんはカリスマちゃんの後頭部に頬ずりしてはうっとり出来るのです。これを楽園と言わずして何と表現できるでしょう。
「……クァリスマちゃん、今日も可愛イ。愛しテる」
「あらんありがとウールちゃん。嬉しいからおやつあげちゃうわ、うふふ」
カリスマちゃんはウールくんが愛をささやく度に喜んでくれます。大体おやつが付いて来るので、中々長いこと愛を表現するのは難しいのですが、それでもウールくんには自信がありました。――すなわち、愛されている自信が。
この世で一番カリスマちゃんに愛されてやまないと確信しているウールくんでしたが、そんなある日。またあの良い匂いの人とイル、それから一度会ったらしいけれど正直覚えてない土竜の人と一緒に行動することになりました。
久しぶりに見かけたイルは相変わらず格好良かったのですが、ウールくんの目にはどことなく元気が無いように見えました。どうしたんだろう、とウールくんは一人で首を傾け、次の瞬間良い匂いのする人が紹介した小さな友人達を発見したのです。原因がわかりました。
つまりイルはまたしても、そう、またしても構ってもらえない状況に陥ってしまったのだとウールくんには解りました。思わずウールくんは悲しい顔でイルを見つめてしまいます。だって、イルはずっと一緒にいるのに。ウールくんと違ってイルは全然素直じゃないけど、何だか報われなさ過ぎてかわいそうです。
イルが小さく首を振ったので、ウールくんは今すぐ話しかける事はやめました。ウールくんは空気が読めるので、今新しい小さな友達たちについて忌憚なく話すと良い匂いの人が悲しみ、従ってイルまでしょげてしまうとはっきりわかったからです。
もっとも、イルはイルでカリスマちゃんとウールくんのやり取りを見て、「全ッ然進展してない……」と思わず呟いてしまっていたのですが。イルも、少なくともウールくんと同じくらい空気が読めるので、後で二人になったらまた指摘しておこう……と心に留め置くことにしたようです。
ともあれウールくんはイルの新たなライバル、亀と蛇を観察してみることにしました。とはいえどう見ても普通の亀と蛇です。喋りもしないし(※亀ちゃんの精神感応翻訳は、辰砂さんが喋っていた為ウールちゃん的にはノーカウントの様です)、別に活躍したりもしません。肩と首にくっついてるだけです。イルは何だってあんなに自信がないのでしょう?
どう考えても格好良さはイルに軍配が上がります。良い匂いの人とイルはおんなじ人型ですから、抱っこもしやすい筈です。まあ、イルの方が大きいから、イルが抱っこされるのはちょっとやりにくいかもしれません。戦う時も亀と蛇は全然役に立っていません。良い匂いの人が不意打ちを食らった時も、フォローしたのはイルでした。
一体何がどうしてイルはあんなに後ろ向きなのか。ウールくんは不思議がりながら、細めのミミズにストンピングを繰り出しました。
「……言えバ、良イのに?」
イルの考えは難しくって良くわかりません。なのでウールくんはカリスマちゃん達が集まって相談している間にイルの所に行って、聞いてみる事にしました。
「……ネえ。亀モ、蛇も、イルの敵じゃナくない?」
「……。あいつらがただの亀と蛇なら別に気にしません」
どうやらイルは、亀と蛇が精霊なのが引っ掛かっているようです。そう言えば、良い匂いの人も精霊なのでした。同族だから不利だってことでしょうか。やっぱりウールくんにはよく解りませんでした。全然関係なくない?だって愛にそんなの関係無いじゃん?
自称愛の体現者であるウールくんは、ドヤ顔でイルに告げました。
「……愛がアれば、種族なンて関係無いヨ。愛されルって幸セだよ?」
自信満々のアドバイスに、何故かイルは半眼でウールくんを見下ろしました。
「そりゃあ、ウールはそうでしょうとも。ウール、街に入ったら俺デコピンしますから覚悟しておいてくださいね」
「……エ!?何で?どうして?」
この後大分食い下がったのですが、デコピンの撤回はおろか何故デコピンされるのかすら教えてもらえず涙目になったウールくんでした。もちろん、カリスマちゃんにおやつを貰うまでの間だけでしたけれど。デコピン刑の事を街に着くまでに忘れてしまわないと良いのですが、どうやら難しそうです。
頑張れウールくん!信じる者は救われる、かもしれない!




