210幕間 辰砂とイルの1分クッキング金糸瓜茹でちゃおう編
「うーん……」
「どうしたんです辰砂、難しい顔して」
「いや今食べたいものがあるんだけどね」
「?作ればいいじゃないですか。その為のこの番組でしょう」
「ちょっと地味なんだよなあ……これなんだけど」
「まあまあ立派な瓜ですね。成程、地味っちゃ地味ですがこれを切って食べるんですか?」
「ああいや、これは茹でて食べる種類の瓜なんだな。生で食べられるかは知らないな」
「へえ。まあ、やってみましょうよ。あんまり駄目ならお蔵入りしますし撮るだけタダですよ」
「イルが順調に業界に馴染んでいる気がするよ。まあ、とりあえず茹でようか。まずは頭とお尻を切り落とし、五センチ程度の輪切りにしていきます」
「丸いので危なっかしいですね。最初に縦に割らないのには理由があるんですか?切りやすくなると思うんですが」
「まあ使い方によってはそれでもいいんだけどね。今回はこの瓜の特性をよりはっきり見せるためにあえて割りません。切ったら中に綿と種が見えるので、スプーンなんかで取り除きます」
「瓜の仲間ってどれも共通していますよね。見た目より食べられるところが少ないところが」
「そうだなあ、でもこの固さで中まで詰まってたらもっと切るのが大変だから。これくらいでいいんじゃないか」
「あ、そうか。皆が皆糸使ってるわけじゃないんでしたね」
「そう言う事です。さて大きな鍋の中に種を取った瓜を放り込んだら茹でましょう。サイズにもよるが沸いた後、5~15分ほど茹でると、ほら」
「あれっ……なんか瓜からたなびくものが?」
「そう、これがこの金糸瓜の大きな特長です。茹でるとほぐれて麺みたいになるんだな。ただこれ茹ですぎると食感が悪くなってしまうのでそこは注意したい」
「なるほど、それですぐ水で冷やすんですか。結構水が要るんですね」
「表面が冷えても指を突っ込んだら熱かったりするんだよなこれが。私がせっかちなせいなのかも知れないけどね。充分に冷えたら、輪っかを潰すように揉んでいく。それだけで結構ほぐれるよ」
「おお……しくじった毛糸の如く絡まる瓜の糸……うう……赤いセーター……」
「……(様子がおかしいぞ)あーっと、しまった。イル、ハム持ってくるの忘れたから向こうの貯蔵庫から取って来てくれるかな」
「……え、あ、はい。珍しいですね辰砂が材料忘れるなんて。行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。……なんか毛糸に嫌な思い出でも作ったのかな?」
「はい戻りましたー。あ、もう出来てる!辰砂素早いですね」
「ああ、まあね(まさか番組内で水の宰を総動員する羽目になるとは)」
「うーん熟練者っぽい!俺ももっと達人感出していきたいですね、練習しよっと」
「えーとそうだな、ただこの瓜は出回る季節が非常に短いんだ。また来年やろうな」
「え、そうなんですか。期間限定なんですね。ええと、それでこれはどうやって食べるものなんです?」
「見ての通り、持ち上げればまさに麺の如く長いので、つゆに浸けながら素麺みたいに食べたりもするな。ここまでの長さが必要ない献立には酢の物とかサラダが有ります。何か所かに包丁を入れて適当に短くして使えばいいよ」
「あ、それでハムなんですね。サラダかあ。具は胡瓜ときくらげとハムを細めの千切りにすると、ふむふむ」
「なにぶん主役が細長いから、絡めるためにね。極端な話、角切りにしたら同じ皿の中身を別個に食べる羽目になる。切り方一つも美味しさの準備なのです」
「先人の知恵って凄いですよね。さて、ボウルに材料全てを入れ、混ぜ合わせたら味付けです。塩と胡椒と、その白いのは何ですか?」
「見せたことなかったかな?マヨネーズと言う各異世界にて急速な普及を見せる驚異の調味料です。卵と植物油、酢と塩だけで作れるけど死ぬほど混ぜないといけなくて手作業で作るのは辛い物体」
「は、はあ……なんだかよく分からない豆知識が混じっていましたがとにかくマヨネーズも入れて混ぜ合わせます。あ、思ったより白が薄くなって素材の色が透けてますね。瓜の黄色と胡瓜の緑がアクセントになって美味しそうです」
「ちなみに茹でて解した金糸瓜は冷蔵で数日、冷凍すればもう少し保存できます。丸ごと一個茹でて、小分けにしておくと便利かもしれないな」
「お手軽もう一品!というわけですね。さて、ではいただきます!じゃくじゃく……」
「うん、いいね。茹ですぎるとちょっと芋っぽくなってしまうんだが今日は成功だ。独特の瓜風味が気になる人は尚更マヨネーズがお勧めです。平気なら酢の物で沢山食べるのもおつな物です」
「うーん、面白い食べ物ですねえ。噛もうと思えばいつまでもじゃくじゃくする……飲みこみ時がよくわかりません」
「ええと、そうだなあ。適当に切り上げときなさい、まだ沢山あるし。しかし今回はイル受けしないかと思ってたんだが」
「なんですかねえ、あんまり草食べてる気持ちにならないからかな?これは結構好きですよ、おかわりしよっと」
「く、草か。ううん、野菜好きへの道は険しそうだ。そろそろお時間が来たようですね。それではまたいつか、ごきげんよう」
「ごきげんよう!じゃくじゃく」




