95話 タルダンの武具店 (2)
「ああ……ええ、そうですね。修理をお望みなら、もちろんできますけど、おすすめはしませんよ。」
修理を拒否し、自分の商品を買わせようとする厚かましい武具店主に見えないよう、親切な笑みを浮かべてイリスを眺めながら、タルダンが言った。
「ニア。僕も、新しい武器を買うのがいいと思いますよ。」
「うぃぃ……金貨15枚も出したのに、惜しすぎるだる。」
ニアが惜しげに、壊れた槍の刃に手を置いて言った。
「ほう、金貨15枚も? それは少し高く買われたんですね? どこで買われたんですか? 見ての通り、ドワーフたちの作ったものじゃないみたいですし……うちの店で買われたものでもないようですね。うちの武具店で売ってる武具は、全部僕が自分で作ってるんで、僕の手を通った槍ならすぐに分かるはずですから。」
「あっちの通りで、髪が長くて背の高い人間から買っただる。名前は覚えてないだる。」
「通りって……放浪武具商から買われたんですね。放浪商から買ったにしては、品質は悪くない方ですよ。でも、それでも高く買われましたね。僕も長い間、放浪武器商として生きてきたんで、あいつらのことよく知ってるんですよ。あの中でも一番多いタイプが、自分の売ってる商品の品質より、それを包む言葉の腕が派手な商売人たちですよ。」
「そうかだる?」
うつむき加減の目つきと表情で、ニアがタルダンを眺めて言った。
「ああ……まあでも、放浪商から買った品が……この程度で金貨15枚なら、少し。ほんの少しだけ高く買われたんですよ。ははは……品質も結構いい方でしたよ。」
ニアにちょっときついことを言っちゃったかなと思い、フォローしようとするタルダンの説明と、力の抜けた笑い声がニアに伝わった。
「それじゃあ、ゆっくり見て回ってください! 全部、僕が自分で作った品ですよ。特別に探してる武器があれば、言ってくださいね。」
「分かっただる。」
「壊れたボアスピアをまた買うなら、うちの店にも二本くらいありますよ。あそこの壁側の陳列台にあります。」
タルダンがそばに寄ってきて、膝を曲げてニアの目線に自分の指先が見えるように、店の隅に立てられた槍のある場所を指差した。
「うーん……悩むだる。」
下向きの口角としかめた眉間で、武具店内をゆっくりとした足取りでニアが歩いていた。
「狭い場所で使える武器はどうかしら、ニア?」
イリスが悩むニアのそばに近づいて言った。
「おお。このお嬢さんが、お客様の師匠だって言ってましたよね? 師匠さんの言う通り、狭い場所で扱える武器をお見せしましょうか?」
ニアの表情が明るくなったのを察知したタルダンが、イリスの言葉をニアに伝えるように言った。
「そうしてくれだる。」
「それじゃあ、ちょっとあそこで座って待っててくださいね。」
タルダンが武具店の入り口側に置かれた椅子と四角いテーブルを指差して、自分は長い武具の陳列台のある方へ軽い足取りで歩いて行った。
入り口に比べて暗い武具店の奥、長い通路のような縦長の構造の武具店の壁には、長剣とそれに合わせた茶色の鞘が壁に固定された棚に置かれていて、薄暗い室内を油灯が小さな炎で照らしている。
―ガチャン。タン。タタタン―
「あっと! これを片付けるの忘れてたよ。昨日絶対に片付けるって言ったのに……へへへ。」
タルダンの足に引っかかった、金具で縁取られた木製の盾が派手な音を立てて床に倒れた。
すねをさすり、床に落ちた盾を拾って陳列台の横に立て直した後、再び陳列台に置かれた武具たちを眺めながら、短い剣を数本と、先端に丸い鉄塊が飾りのように付いたメイスをはじめ、他のさまざまな種類の武器を運んで、ニアが座っている椅子の前のテーブルに置いた。
「あと少しあります。もうちょっと待っててくださいね。」
再びタルダンが武具店の奥へ歩いて行く。さっき見た壁と武具店の中央に立てられた剣や斧の陳列された場所ではなく、反対側の壁に置かれた大きな木箱と壁に立てられた長いキャビネットを開けながら、椅子に座って待っている小さな客が満足しそうな武器を探していた。
「もうすぐ終わりますよ。昔、すごく上手に作った短剣があるんですけど、作りが良くて刃もすごく頑丈に叩いて作った剣で……他の剣が売れたら、お客さんの目に付きやすい場所に置こうと思ってた品なんですが……どこに置いたか思い出せなくて困ってるんですよ。」
武具店の収納箱をいくつか開け閉めを繰り返しながら、タルダンが座っているニアに向かって普段より大きな声で言った。
「ゆっくり探せだる。俺はここに置かれた武器を使ってみるだる。」
テーブルに置かれたさまざまな剣や斧、鈍器を一つずつ手に取って眺めながら、ニアがタルダンの言葉に答えた。
少し後。革の鞘に入った短い剣を二本持って、タルダンがテーブルの前まで歩いてきた。二本の剣を置いたタルダンが、ポケットから取り出した布切れを取り出して、テーブルに置かれた武器を一つずつ手に取って拭き、ニアが手に取りやすいように並べ始めた。
「気に入った品はありますか?」
最後に持ってきた短い剣が入った鞘を手に取り、刃を抜いて眺めているニアに、タルダンが尋ねた。
「うーん……分からないだる。剣が短すぎるだる。」
手に取った剣の先端を武具店の天井に向かって持ち上げて、短い剣の長さを確認したニアの表情が、どうも気に入らない様子だった。
短い剣を握って振り回してみたニアの眼差しに好奇心がよぎったが、すぐにまた消えた。何か物足りないというように、尾が力なく下がった。
「そりゃあ……狭い場所、天井の低い室内とか、洞窟の通路とか階段とか、そういうところで使う武器なら、まずは長さが短くないとね。」
「うーん……なんか短いから……変だる。」
柄の長さがニアの手でも一握りちょっとしかない小さな斧を手に握って振り回してみながら、ニアが言った。
「ふむ……それじゃあ、少し普通とは違う武器を使ってみるのはどうですか? うちの店に、僕が作った試作品がいくつかあるんですけど……。」
このままじゃ日が暮れるまで悩みが続きそうだ。タルダンが長い間商売をしてきて身につけた知識の一つが、たいていの客は気に入った武具を手に取った瞬間、眼差しからして違うということだ。
それが剣であれ斧であれ盾であれ、すでに自分のものになったように慎重に触れる手の様子から違う。さらに本当に気に入った品なら、値段の交渉さえしようとしない。そんな言葉にならない情報を捉えて、客が喜んで財布の紐を解かせるのが、優秀な商人の能力の一つだとタルダンはいつも思っていた。
そうして、長年の商人の勘が、目の前の赤い鱗の客には、普通に作りがいい武具だけじゃダメだ、と判断した。
『変わったものでないと。今までこの客が見たことのない、変わった武器でないと。』という考えが、タルダンの頭に満ちた。
「うん……そうしてくれだる。」
「それじゃあ、ここでちょっと待っててくださいね。すぐ持ってきますよ。」
言葉を結んだタルダンが、テーブルの上の武器を手に取って武具店の隅へ向かった。
そうしてまた少し時間が経ち、窓の外の雨音も弱く聞こえ、曇った空が晴れて武具店内の小さな窓の隙間から陽光が差し込んできた。そしてニアの前のテーブルには、タルダンが持ってきた変わった形の武器たちが置かれていた。
「どうですか! 一つずつ僕が説明しましょうか?」
「頼むだる!」
(お? これの中に気に入った武器があるな。それじゃあ、どれかゆっくり探ってみようか?)「それじゃあ、まずはこのクアッドエッジ・ショートソードからご紹介しましょう。」
ニアの表情がさっきと比べて明らかに変わったのを察知したタルダンが、自信たっぷりの笑みを浮かべてテーブルの上の剣を手に取った。
二つの剣身を十字形に交差させて作られた、変わった形の剣だった。
「見ての通り、四つの刃を持つ剣ですよ。だから刺すより、振り回して斬ったり、普通の剣より厚い刃を二つ使って作ってるんで、その重さを利用すれば、鉄板だろうが鎖だろうが防がれても、結構大きな威力を出せますよ。」
「おおおん……。」
目の前で刃をぐるぐる回しながら見せてくれるタルダンの様子を、ニアが大きく見開いた目で集中して見つめた。
「実際に手に取ってみてください。見た目はこう無骨だけど、バランスもよく取れてるし、刃もよく立ててありますよ。」
タルダンが剣の柄をニアに向かって差し出しながら言った。
「使ってみるだる。」
剣を受け取ったニアが、タルダンから数歩離れて歩いた後、剣を振り回してみた。
ヒュン ヒュン。剣が空気を切る音が聞こえた。虚空に剣をさまざまな方向に振り回したニアが、剣を握ったまま手首を使って回転させてみた後、再びテーブルに置いた。
「他の武器も使ってみるだる。」
「ええ。思う存分使ってみてください。(ふむ……クアッドエッジは気に入らないか……)」
ニアが剣を置いて手に取ったのは、槍の形をした武器だった。でも普通の槍とは違い、槍杆はなく、長い柄だけが槍の刃に繋がった武器だった。刃の長さは長く、柄と刃の長さが同じくらいの短い槍の形をした武器だった。
「どうですか? ハーフ・スピアっていう武器で、剣と槍の形を合わせた武器ですよ。長さも適度に短いんで、室内で振り回すのに問題ないです。いざとなったら投げられますよ。」
「おおおん。これ気に入っただる。」
手に取った短い槍を片手と両手で交互に握って振り回してみたニアの表情が明るかった。そしてそんなニアの変わった表情を見逃さず、タルダンが自分の商品の説明を続けた。
「槍の長さが短い代わりに刃の長さが大きいんで、剣に慣れた方でもすぐに慣れますよ。槍のように長い柄の上の方を握ればショートソードみたいに使えますし、真ん中くらいなら適度な長さの剣みたいになるし、端を握ればロングソードくらいの長さになるんで、武器が短すぎるって感じがしないはずです。それに、手がよく触れる柄の三か所には、丈夫で有名な巨大蜘蛛の糸を加工した布を使ってるんで、手がすり減る心配もないですよ。」
「いいだる。この槍気に入っただる。」
すでに手に取った槍を買う気満々のニアを眺めるタルダンの顔に、笑みが広がっていた。刃を覆う革の鞘の素材は何の革をおすすめしようかと考えながら、今度はハーフ・スピアの値段を言う番だと考えた。
「この武器の本当の価値を分かってくれて嬉しいですよ。そしてお客様は……この武器を買うおつもりみたいですね……」
「うん。買うだる。いくらだる?」
「おおお。買われるんですね。それが……普通の武器よりちょっと高いんですよ。お持ちになったボアスピアより高いです……うーん……そうですね。金貨20枚くらい……で」
「うぃぃ! 値下げしてくれだる!」
「高すぎます。」
ニアとイリスが同時にタルダンを眺めて言った。
タルダンの顔には笑みが保たれていた。
(さあ、今度は交渉の場だ)「お二人とも、ちょっと僕の話を聞いてくださいよ。」
あなたの今日が、最高に素敵な一日になりますように!




