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50話 レバドスの平原 (8)

「クハハ! 後ろから来るならもっと静かに来るべきだったぜ、バカ野郎!」


笑い声と共にデュバランがソウドランスの刃先(はさき)に向かって体を振り向かせると、そこにはソウドランスの刃に腰を切断され、手に持っていた二本の剣を地面に落とした剣闘士(けんとうし)が、体を二つに分断(ぶんだん)された状態で倒れていた。


再び競技場(きょうぎじょう)には地面を揺るがす歓呼の声が響き、デュバランの名を連呼する声が聞こえてきたが、デュバランがそれに応じて観客席に向かって挨拶する暇もなく、ブリックとブニックの槍先(やりさき)がデュバランに向かって迫ってくる。


デュバランが自分の武器で二人の槍を弾き飛ばし、ブリックとブニックの二人の闘士は素早く動きながら、ギリギリでデュバランの振り回すソウドランスの攻撃を避けたり、手の甲の小さな盾を使って防いだりしながら、デュバランとの攻防(こうぼう)を続けていた。


「そこの二人、なかなかやるじゃねえか! 気に入った! 久しぶりだ、このくらいの実力の奴ら。クハハ!」


ブリックとブニックがようやく両槍の攻撃を避けるように、デュバランもまた四方から襲いかかるブリックとブニックの槍を完全に防ぎ切れなかった。鎧の継ぎ目に入り込む鋭い槍先で何度か浅く刺されたり、斬られたりして血が流れていた。


だが、そんな傷がもたらす痛みよりも、自分の攻撃を避けながら耐え抜く二人の闘士との戦いがもたらす楽しさに、デュバランの顔には喜びの笑みが浮かんでいた。


「もうこれ以上見せられるもんはねえのか!? これで全部か? もっと! もっと! 攻撃してみろ!」


デュバランが自分の首を狙った二本の槍の攻撃を武器の刃と長い柄を使って同時に受け止めながら言った。


「くうっ……」


「ブリック! もう一度いくぞ!」


ブニックが叫びながら前方に飛び出した。そして続く攻撃。しかし、二人の闘士の槍は次第に速度を失っていき、軽やかな足捌きで避けていたデュバランの攻撃は、土の地面に体を転がしてようやく避けたり、かろうじて肉の代わりに斬られた鎧の欠片が地面に落ちたりしながら、綱渡りの曲芸師のような危ういバランスでデュバランとの攻防を保っていた。


ブリックとブニックがデュバランの周囲を回りながら距離を保ち、互いの反対側に位置して攻撃したが、デュバランは巨躯に似合わぬ敏捷(びんしょう)な動きを見せ、二人の攻撃を防ぎ続けていた。


威力が増した攻撃で速度の遅くなった槍は避け、速い速度で急所を狙った槍は武器と鎧を使って防ぎ、どうしようもない攻撃は危険な急所を外すよう体を捻って受けていた。


疲弊(ひへい)していく二人に比べて、デュバランの動きは次第に活気づき、速くなっていった。


そうして、ブリックとブニックがかろうじて保っていたデュバランとの攻防のバランスが崩れようとしていた。


「殺すのは惜しいから、まずはお前から休ませてやるぜ! じゃあ、しっかり耐えろよ!」


「ブニック! 危ない! 避けろ!」


大きな砂埃を巻き上げて地面を蹴り、デュバランがブニックに向かって突進した。


ブニックは槍先を突き出したが、広い歩幅で突進していたデュバランが体を捻ってそれをかわした。すぐに肩を押し込みながら突進を止めず、ところどころ破れた肩の鎧がそのままブニックの顔を強打(きょうだ)した。金属と肉がぶつかる鈍い衝撃音が響いた。


「おお! 反撃する気力があったか。じゃあ、もう一発いくぜ!」


刃の平らな面を使ってブニックの顔を殴ったため、幸いにも斬られず、分断されず、ただ鈍い音だけを立ててブニックが競技場の壁に向かって飛ばされた。続いて競技場の壁にぶつかったブニックの体が、厚く立てられた競技場の木製の壁を折る音が聞こえた。


「クハハハ! 骨の何本かは折れただろうな? じゃあ、次のお前だ!」


体を捻ってブリックに向かって高く跳び上がったデュバランが、両手で握ったソウドランスを振り下ろそうとした。今回もやはり武器の刃を立てず、刃の広い面を使った攻撃だった。


デュバランがブニックに向かって突進したのを見た瞬間、ブリックもデュバランに向かって駆け出していたため、突然自分に向かって跳び上がってきた攻撃に対応するには時間が足りなかった。


「くうっ!」


ブリックが顎からギリギリと音がするほど一瞬全身に力を入れて、前傾した姿勢のバランスを捻って自分に向かって振り下ろされるデュバランの攻撃を避けようとしたが、ブリックの顔には競技場に降り注ぐ太陽を背にしたデュバランの黒い影が次第に大きく広がっていった。


「うおっ!」


もう遅いと思ったブリックが、最後の手段として手の甲の小さな盾と武器を握った手まで支えて防御の姿勢を取った。


短い瞬間だったが、ブリックはこの姿勢では今自分に振り下ろされる攻撃を防げないことを知っていた。だが仕方ない。これ以上の方法はない。


覚悟を決め、手に持った盾をさらに上に向かって突き出した瞬間だった。


—ドーン—


重厚な金属の響き。


その音が聞こえたと同時に、デュバランとブリックの間にグリエルが立っていた。素早く駆けつけたせいで荒い息を吐きながら、土埃があちこちに付いたまま、大型盾の後ろから「遅れなくてよかったです」と小さな声でブリックに言った。


「ほう?」


片目を吊り上げ、唇をすぼめたデュバランの声が、目の前に突然現れたグリエルの姿に対する疑問と感嘆を込めた感情を表していた。


「ありがとう、グリエル。おかげで助かった。」


「私が前で防ぎます。後ろから隙を狙って攻撃してください。」


「わかった。じゃあ頼むよ、グリエル。」


デュバランが両手に握ったソウドランスを再び力強く振り回した。


グリエルはその攻撃を受け止め、力で押し返した後、右手に持った剣をすぐに振り回した。その動きに続いてブリックの槍もすぐにデュバランに向かって伸びた。


「クフフフ。なかなか楽しませてくれるじゃねえか。もう少し磨けば、かなり使えるようになる。」


デュバランが数歩後ろに下がりながら、大きく笑みを浮かべた顔で両槍と前腕の甲冑(かっちゅう)を使って二人の攻撃を防ぎながら言った。


グリエルとブリックが止まることなくデュバランを攻撃する。大型盾で防ぐ攻撃が立てる鈍い音と、鋭い刃の音が絶え間なく響いた。額と腕からは汗が流れ、武器を振り回すたびに汗の滴が飛び散って競技場の地面に落ちる。


そんな二人の姿に観衆たちも応じ、ブリックの槍が突き出されるたび、グリエルの剣がデュバランに向かうたび、その動きに合わせて声を上げて歓呼した。


まるで雷雨の中に立っているような感覚が闘士たちに押し寄せてきた。頭上には黒い空が崩れ落ちるように覆い被さり、激しい雨の筋が観客席を掻き毟るように降り注ぐようだった。観衆たちの拍手は休みなく降り注ぐ雨音となり、爆発する歓呼は頭上で裂ける雷鳴のように聞こえた。


「クハハハ! 顔を見りゃ、お前らも俺と同じ気分を味わってるじゃねえか! どうだ? 最高だろ? こんなのは俺たちみたいな闘士だけが感じられる特別な感覚だ!」


デュバランが向かい合った槍と盾を弾き飛ばしながら言った。


だが、そんな応援の混じった観衆の歓声にも、デュバランの堅固な防御を二人の闘士は突破できなかった。依然として余裕を見せ、時折攻撃を防ぐのを止めてソウドランスを横に大きく振り回し、襲いかかる二人の闘士の攻撃を止めさせていた。


だが、デュバランのそんな動作には相手の命を狙う殺意が混じっていなかった。自分自身を燃やすように速い勢いで駆け寄ってくる二人に、むしろ息を再び整える間と冷静さを取り戻す時間を与えていた。


「そろそろ終わりにするか? これくらいで十分だろ。あまり引っ張りすぎても観客が退屈しちまう。」


デュバランがソウドランスを地面に突き刺した後、腕に巻き付いていたリクタの鞭を解きながら、自分の二つの拳をぶつけ合わせて言った。


腕に刺さっていた鞭の鉄棘が抜け、一瞬血が噴き出したが、愉快な笑みと共に腕を振り、地面に血を撒き散らした後、肩をぐるぐる回しながらグリエルとブリックに向かって歩みを進めた。


結闘(けっとう)の神ラウドに見せるにはまだ足りねえ!」


デュバランがグリエルに向かって素早く駆け出し、グリエルの大型盾を拳で殴りつけた。


駆け寄る速度と前方に倒れ込むように体を投げ出して重みを乗せた重いデュバランの攻撃を受けたグリエルが、盾で地面を擦りながら後ろに押し出された。


ブリックとグリエルを生かしておこうと思ったデュバランが選んだ方法は、ソウドランスを置いて拳を使うことだった。刃を使わず武器の広い面で攻撃するには、二人の闘士の動きを追いつけないためだった。


そう予想していたデュバランの速度よりもはるかに素早い動きと攻撃がグリエルに命中すると、その隙を狙ってデュバランを攻撃すべきだったブリックの反応が遅れた。


速くなったデュバランの速度を追いつけなかったのも理由の一つだったが、より大きな原因は一瞬、競技場の隅で体を起こしているブニックの姿に視線が向いたことだった。


一番長い仲間であり、唯一の兄弟の生存を目で確認した瞬間、喜びと安堵感(あんどかん)がデュバランに向かって動くべき脚と、槍を振り上げて攻撃すべき腕を掴んだ。


「遅えよ、槍使い! そんなに油断しててもこのデュバランと戦えると思ってんのか!」


そんなブリックの隙に気づいたデュバランが、グリエルを追おうとした体の方向を捻ってブリックに近づいてきた。


一瞬の油断がもたらした代償は大きかった。


「くふっ!」


遅れて反応してデュバランに向かって突き出した槍は虚空(こくう)を切り、体を低く屈めて近づいてきたデュバランの拳がブリックの腹に突き刺さり、ブリックの体を空中に浮かべた。そして聞こえた短い苦痛の呻きと共に、ブリックが競技場の地面に倒れた。


「今度は最後の一人だ!」


デュバランの一撃でブリックが気を失って倒れ、再びデュバランが体を振り向かせてグリエルに向かった。


「最後までよく耐えたな! グリエル嬢。」


「ふぁああっ!」


グリエルが叫びながら自分の盾を高く掲げた後、地面に叩きつけて地面にさらにしっかりと固定した。


「ハハハ! そんなことしてもこれを防げねえ!」


デュバランが片足で地面を強く蹴って跳び上がり、グリエルの盾を足先で激しく蹴り飛ばした。金属が歪む鈍い衝撃音と共にグリエルの体が横にぐらついた。バランスを整える暇もなく、デュバランの拳が連続して盾を叩きつけた。一発、二発、三発—鉄甲(てっこう)手甲(てっこう)が叩きつけるたび盾が後ろに押し込まれ、その衝撃がグリエルの腕を伝って全身に響いた。


観衆たちの歓呼、盾を叩きつける手甲の重い衝突音、そしてデュバランの息の混じった笑い声が混ざり合って観客席に広がっていった。


やがて。競技場に広がる音が止み、立ち上がった小さな砂埃の雲が収まった競技場には、ただ一人だけが立っていた。そしてその下には、本来の形を失ったくしゃくしゃの盾と共にグリエルが倒れていた。


「クハハハ! 今日はここまでだ! 三人は生かしておいたから、そう思っといてくれ!」


「珍しいな、三人も生かしたなんて!!」


「お疲れ、デュバラン~」


「長すぎたんじゃねえか~?」


「ヒュ~イイイ~!!」


「ううっ……俺の……金……」


「クハハハ。ほらな! 俺が三人くらいは残すって言っただろ!」


デュバランに向けた歓呼の声が八角闘技場(はっかくとうぎじょう)内を満たす。


「じゃあ、次の試合もあるから、よく見て帰れよ!」


地面に刺さっていたソウドランスを抜いて肩に担ぎ、デュバランが競技場の外へ歩き出した。

観客席の皆さーん、生きてますかー!? 砂埃と歓声で喉がガラガラになりそうな一話でしたね。

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