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168話 ダム (11)

ダムの西南の城壁工事現場は、冬の灰色の空の下、熱気と活気に満ちていた。


生きた大木が石壁の間からそびえ立ち、空へと広く枝を伸ばしていた。木々の樹皮は深い皺(しわ) に覆われ、長い歳月の痕跡をありありと刻んでいた。


これらの木々は城壁を支える材木であると同時に、ダムが古くから城壁とともに育んできた防衛の一部でもあった。


城壁の上を風が吹き抜けるたびに、枝がゆるやかに揺れ、低い囁き(ささやき) を立てた。


城壁沿いを流れる風には土埃(つちぼこり) と汗の匂いが入り混じり、鎚(つち) が石を打つ甲高い音、橇(そり) が地面を引っ掻く音が辺りを満たした。


灰色の岩が積み重なった石山の上から、埃が舞い上がっては陽光に煌めいて(きらめいて) いた。


城壁に沿って幾重にも組まれた木の足場の上で、クラバは石の配置を指揮しながら、嗄れた(しゃがれた) 声で叫んだ。


「その石は三本目の木の隣へ!前は隙間なくしっかり積め!」


古びた革衣の袖が風にはためいた。


ダムの建築匠バルゴは、相変わらず現場を監督しながらダウィの職人たちを急き立てていた。灰色が混じった茶色の毛は汗と埃でぼさぼさになり、顰め面(しかめづら) の目がクラバへの不満でぎらりと光っていた。


「ラボロスのサルン・ケが何を知っているというんだ……」


彼は低く唸りながら、橇に積まれた石を点検した。


だが、クラバの設計——余白があり……敵の攻撃に応じて進化する城壁——は、彼の胸の片隅にじわりと食い込んでいた。


『あのサルン・ケの言葉、荒唐無稽ではあるが……否定しきれない論理がある。』


バルゴは石と石の間の隙間を改めて見渡した。余白があるということは、すなわち変化を受け入れる場所があるということだ。


心の中でぶつぶつ言いながら、若いダウィのブロンに向かって怒鳴った。


「ブロン!石を一つでも積み損なったら、今日の飯は抜きだからな!」


そのとき、重い足音と金属が打ち合う音が、城壁の下にいる多くの職人たちの視線を一点に引き寄せた。鎚の音がしばし止まり、職人たちの目が一斉に同じ方向へと向いた。


南の城壁と西の城壁が交わる地点、巨大な灰色の岩山の傍らに立つ巨漢のダウィが、バルゴの目に映った。


ダムの大軍長(だいぐんちょう) 、ガルドンだった。分厚い板金鎧(ばんきんよろい) は巨体をさらに大きく見せ、肩当てに施された鋭い鋼の装飾が陽光を受けてきらりと輝いた。


茶色の毛は戦闘の傷跡で彩られていたが、顔には豪快な笑みが浮かんでいた。手に持つ巨大な戦斧は、まるで玩具のように軽々と携えられていた。その背後には二人のダウィ兵士が従っていたが、ガルドンの圧倒的な気迫に飲まれ、他の者たちの目にはほとんど映らなかった。


「はーっはっは!これは壮観だな!石の量も相当なもんじゃないか!」


ガルドンの朗々とした声が、周囲のダウィたちとムワたちの耳に響き渡った。


その笑い声は雷のように、城壁の上下にいる職人たち全員へと轟き渡った。


「城壁を積むと聞いて見物に来たんだが!サルン・ケのクラバ、お前さんが今回の工事を仕切っているそうじゃないか?」


彼はクラバが立つ足場の真下まで大股で歩み寄り、斧を地面にどんと突き立てた。


周囲の職人たちがぎくりとして後退った。ムワの石工が落としたノミを慌てて拾い上げ、顔を赤らめた。


クラバは足場から降り、土埃を払いながらガルドンと向き合った。目には疲れが滲んで(にじんで) いたが、大軍長の豪快な気に当てられ、口元に笑みが広がった。


「大軍長殿、どうなさいましたか。こんな場所まで直々に足を運ばれるとは。」


彼は手で喉を擦り、嗄れた声を整えた。


「戦場であれ、石を積む場所であれ、ダムを守ることなら俺の足が向かうのは当然だろう!」


ガルドンは豪快に笑いながら、クラバの肩をぽんと叩いた。その手の力がいかほどのものか、クラバが思わずよろめいたほどだった。


「俺が斧を振り回すことしか好まないと思っているのか?こういう雄大な仕事も、俺の心を躍らせるってもんだ!」


彼は拳を握りしめ、城壁を見上げた。木と石が調和した城壁が、その目に映った。


「ところで——地の側(南側)と月の側(西側)の壁が交わるあの場所に、石山が山のように積み上がっているな。あそこには何を作るつもりだ?ラボロスの名匠の頭の中には、またぞろ奇抜な計画があるんだろう?」


クラバはガルドンの視線を追って石山を眺めた。巨大な岩が整然と積み上げられ、多くのダウィたちが鑿(のみ) と鎚を手にそれぞれの石の前に立ち、黙々と削っていた。


石の一つ一つがモノス採石場の深くから掘り出されたもので、表面には微細な黒い結晶が陽光に煌めいていた。彼は頷きながら説明を始めた。


「あそこには物見塔(ものみとう) を建てます。ですが、普通の物見塔ではありません。大きさは通常の三倍、あらゆる方向へ石弓と小型バリスタを放てる、多層構造の巨大な石の望楼(ぼうろう) です。」


彼は手を伸ばして虚空に円を描きながら言葉を続けた。


「各層は広い空間に設計し、兵士たちが自由に動き回りながら攻防できるようにします。望楼の頂上からは斥候(せっこう) がサアルンの森の遥か彼方まで見渡せ、下の層は武器庫として使います。この望楼は南と西の防衛において、最も重要な役割を担うことになります。」


クラバの言葉を聞いたガルドンの目が見開かれた。


「三倍の大きさの石望楼だと!はーっはっは、完成したら相当な見物だな!」


彼は拳で手のひらをぱんと叩き、興奮を露わにした。


「ミノタウルであれオークであれ、あの高さから放つバリスタのボルトの味を存分に思い知らせてやれるぞ!サルン・ケのクラバ!お前さんの計画、非常に気に入ったぞ!」


彼はクラバの肩をもう一度ぽんと叩きながら豪快に笑った。その笑い声につられるように、周囲の職人たちまで笑顔になった。


そのやり取りを聞いていた若いダウィの石工テリンが、おずおずと前に進み出た。その毛はまだ柔らかく艶やかで、手にはノミが握られていた。顔は緊張でやや強張って(こわばって) いたが、目には決意が宿っていた。彼はクラバに向かってわずかに頭を下げながら口を開いた。


「あ……クラバ様、一つ提案を申し上げてもよろしいでしょうか。」


クラバは好奇心に満ちた目でテリンを見た。


「言ってみろ、テリン。どんな考えでも、耳を傾ける準備はできているぞ。」


彼はテリンに歩み寄りながら、穏やかに微笑んだ。


テリンは少し緊張した様子で爪をもぞもぞと動かしながら言った。


「城壁にピオルンの苔を植えてはいかがでしょうか。あの苔は火を恐れず、城壁を伝いながら繁殖し、表面が滑りやすくなるため、敵が壁をよじ登るのを困難にします。火矢や攻城兵器の油壺の炎にも強く、城壁をより堅固に守ることができると思うのです。」


言い終えると、大きく見開いた目で息を整えながら、クラバの反応を窺った(うかがった) 。


クラバの顔が輝いた。彼は手を叩き、テリンの肩を軽く叩いた。


「ピオルンの苔か!それは本当に素晴らしい考えだぞ、テリン!火にも強く、敵の足を滑らせるというなら、この城壁はさらに恐ろしい盾となるな。」


彼は周囲を見渡しながら声を張り上げた。


「この城壁だけでなく、ダムのすべての城壁にピオルンの苔を植えなければ!」


声は嗄れていたが、情熱にあふれていた。


テリンは顔を赤らめ、照れくさそうに笑った。周囲のダウィとムワの石工たちも、頷きながら口々に声を上げた。


「若いのになかなかやるじゃないか!」ダウィの石工ロガンが近づいてきてテリンの背をぽんと叩いた。ムワの石工カリアは翼を一度大きく広げ、「完璧な城壁……ピオルンの苔で覆われれば、その名にさらにふさわしくなるな!」と呟いた。


バルゴは遠くからそれを見守りながら、耳のあたりをごしごしと掻いた。


「サルン・ケが気に入りそうな考えだな……」


呟いたが、その目にはわずかな認めの色が過って(よぎって) いた。テリンの提案は単純なものだったが、ダムの城壁に敵へ立ち向かう強靭さを吹き込む可能性を秘めていた。


ガルドンは顎を撫でながら頷いた。


「ピオルンの苔か……その苔をダムの城壁に植えるとなると、相当な量が必要になるな。」


城壁を見上げながら笑って言った。


「兵士どもに命じて、サアルンの森の近くから苔を採取してこさせよう。ダムの城壁が滑りだらけの化け物になって、よじ登ろうとした奴らが滑り落ちる様を想像するだけで、痛快じゃないか。」


彼の冗談に周囲の職人たちがどっと笑った。一人のダウィの職人がガルドンに向かって声を上げた。


「大軍長殿、ではミノタウルも滑り落ちますかな?」と冗談を飛ばすと、ガルドンは「滑って倒れるだけで済めば御の字だ!頭についた角くらいはへし折れるだろうよ!」と返した。


周囲は笑いで一段と明るくなった。


クラバは笑みを浮かべながらガルドンに歩み寄った。


「大軍長殿のご支援があれば、仕事がずいぶん楽になります。ありがとうございます。」手を差し出しながら、心を込めて言った。


ガルドンは差し出されたクラバの手を力強く握り、豪快に笑った。


「礼には及ばん!ダムを守ることだ、力を貸すのは当然だろう!」


彼はふと声を低めて付け加えた。


「それはそうと、今日は少し早く引き上げなければならんな。久しぶりに遠い国まで行商に出ていた息子の奴が戻ってきてな、今夜は一緒に飯を食おうと約束してあるんだ。」


その目に温かい光が宿った。戦で鍛えた顔に、めったに見せない柔らかさが浮かんでいた。手で顎を掻きながら続けた。


「あの奴め、今じゃすっかり商人らしい口を利くようになったそうだが——はーっはっは!息子自慢が少し漏れちまったな。」


クラバは穏やかに笑いながら答えた。


「家族との時間は何より大切なものですよ。お行きください、大軍長殿。城壁はこちらでしっかりと積み上げておきます。」


ガルドンは最後にもう一度周囲を見渡し、満足げに頷いた。


「よし、サルン・ケのクラバ!お前さんとダムの職人たちのおかげで、ダムの城壁はさらに堅固になるだろう!」


彼は斧を掴み上げて肩に担ぎ、大股で歩き出した。鎧が薄い陽光に煌めきながら遠ざかっていった。


職人たちの中から「大軍長殿、息子自慢はそのくらいにしてくださいよ!」という茶目っ気たっぷりな叫びが飛ぶと、ガルドンは振り返りもせず手を振った。


「お前らも子どもを持てば分かるさ!それに自慢の息子がなんと三人もいるんだぞ——三人も!」


指を三本立て、おどけた表情で振り返りながら言う彼の冗談に、またひとしきり笑いが弾けた。


テリンをはじめとする職人たちは再び鎚とノミを手に持ち、仕事へと打ち込んだ。カリアは羽を整えながらテリンに囁いた。


「お前の提案、本当に大したもんだったぞ。大軍長殿も喜んでくださったじゃないか!」


カリアの言葉を受けたテリンは、照れくさそうに頭を掻いた。


クラバは再び歩き出し、木の梯子を登って足場の上へと上がり、南と西の壁が交わる地点の石山を眺めた。


巨大な石望楼の姿が、彼の頭の中に鮮明に描き出された。生きた木とピオルンの苔に覆われた城壁、その上に高くそびえ立つ石の要塞——ダムはいかなる脅威にも屈することはない。その声が、再び胸の中に響いた。


「さあ、そっちの石をこっちへ上げろ!今日はもっと大きな石を整えておかなければ!」


鎚の音が大気を満たした。橇が地面を削りながら石を運んできた。城壁と並んで立つ木々の枝が、風にゆるやかに揺れていた。


遥か西——サアルンの森の向こうに広がるバッドランドの影がダムへと迫ってくるとしても、ダムの城壁はいかなる闇をも阻む盾へと、着実に変わりつつあった。

今日もお読みいただき、ありがとうございました

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