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堕落計画の三段階目

※Nika※


事態の重さがいまいちわかっていない様子の百奈に、私はここ数日間のにいの様子を伝えた。


「…零さんが家に来てから、にいはおかしく、というかものすんごい働き者になっちゃってるの。私が寝ている間に家事を全部片付けちゃうし、健康を意識した手の込んだ食事を作るようになるし、私の勉強とか身の回りのことも世話したがるようになって…。今だって家の掃除をしているんだよ?朝したばかりなのに…」

「なにそのスーパーお兄ちゃん、うちにも欲しいんだけど…」

「これじゃあ、にいじゃなくて、私の方が堕落させられちゃうよ…」

「あはは、二佳ちんをこれ以上堕落させるとどうなっちゃうわけ?」

「勉強しなくなるし、家から本当に一歩も出なくなるし、脱法天使ちゃんの活動だって面倒にあるかもしれな…」

「それは大変だ!早急にお兄さんを堕落させないと!」


ダンッとテーブルを叩く音がヘッドフォン越しに聞こえてきた。

どこか他人事のような態度だった百奈が、脱法天使ちゃんの活動にまで及ぶと聞いた途端に態度を改めてくる。

実際、にいの活動時間が増えたせいで収録をする時間がとれていないので、現在進行形で緊急事態だった。

百奈にもその事を伝えると、百奈は慌てた様子で言葉を紡ぎだす。


「うわ、マジでやばいじゃん…。じゃあ、改めてスーパー真面目人間と化したお兄さんを堕落させる計画を建てるとして…。とりあえず、零さんっていうでかパイお姉さんと距離をとらせればなんとかなりそ?」

「いや、にいがああなっちゃったのは零さんだけが原因じゃないと思うから…」


とはいえ結果的に、にいのやる気スイッチを推してしまったのはあの人で間違いはないと思う。

私も台所に隠れていて一部始終を聞いていたからわかる。

あんなにまっすぐにいを大事に思う気持ちをぶつけられたら、にいの性格的に、堕落の道に進めなくなるに決まっているから。

――でも、やっぱり一番にいの心を動かす原因になったのは、零先輩が訪れる前日、駅前で会社の人たちと遭遇した出来事が大きいと思う。

あの人たちのせいで、私が必死に忘れさせようとしていた嫌な現実をにいが思い出してしまった。

きっと、今のにいは現状の焦りとか将来の不安とかで頭がいっぱいになっているに違いない。そして、そんな不安な気持ちを誤魔化すために何かしら活動していないと落ち着かないのだ。かつて私が狂ったようにネトゲをしていた頃のように。

そういったことを下手くそながらも私は百奈に説明した。


「なるほどね~。でも、そういうことなら二佳ちんと同じように時間が経てばお兄さんの状況も、少しはマシになったりしないかな」

「…いや、にいはたぶんそうはならないと思う。もし、このまま放置していたら、にいはすぐにでも仕事を見つけて、頑張って、頑張って、頑張りすぎて…。今度こそ本当に身体も心も壊しちゃうかもしれない…。今日だって、私に隠れてどこかへ行こうとしてたし…」

「まぁ、そうか…。じゃあ、どうする?俺にはなんとな~く、二佳ちんはやるべきことをもう決めているような感じがするんだけど?」


さすが、百奈。鋭い…。

百奈の言う通り、私は既にこれからどうやって今のにいを落ち着かせるか考えている。

だから本当は、百奈に話を聞いてもらう必要もなかった。

でも、どうしても私の気持ちを吐き出しておきたかった。

うまく言葉にできないけれど、誰かに相談した上で計画を実行しないと、すごく『不安』だったから。

けど、百奈の反応を見て、このまま進んでも大丈夫そうだと思って、私はこの先の計画を話すことにした。


「…私はにいの堕落計画を三段階目に進めようと思う」

「わお!さんどぅあんかぁい!かっこいい言い方するじゃん!…てか、一段階目と二段階目はどこへ?」

「…一段階目は趣味を見つけてもらうこと、二段階目は趣味について話せる人を作って仲間意識を持ってもらうこと」

「なるほど、つまり一段階目と二段階目は俺や二佳ちんで既に達成してたってことか。それで、三段階目っていうのは?」

「…趣味の多様化。ぷるるんファンタジーオンラインに代わる、新しい趣味を見つけてもらう。次々と新しい刺激に触れさせて頭の中をぐちゃぐちゃにするの」

「あははは!二佳ちんがまるで洗脳実験に精を出すマッドサイエンティストみたいなこと言ってる」

「…そ、そんなに酷いものじゃない!ただ、暗いことじゃなくて明るい楽しいことをいっぱい考えられるようになってほしいだけ。アニメの最新話の内容を予想したり、ハマってるゲームのビルドを考えたり、そういうことをいっぱい考えられるようになってほしいの」

「…ほんと二佳ちんは考え方が優しいというか、可愛いというか。そういう所がほんとしゅき…」

「…何か言った?」

「いいや、なんでも。とにかく二佳ちんの考えは分かったよ。そういうことなら俺にも協力させて」

「…ありがとう。正直、既に試してダメだった趣味も多いから、困ってたの。オンラインゲームみたいに、にいに刺さりそうなものを一緒に考えてほしい」

「二佳ちんのお願いなら、オジサン頑張っちゃうゾー?」

「…そのノリはメッセージの時だけにして」

「とりあえず、おすすめのAVとか紹介すればいい?」

「…だ、か、ら!」

「ごめん、ごめん~、真面目に考えるよ」


それからは、1時間くらいかけて、にいを本格的に堕とすためのアイデアを出し合った。

ところどころ話が脱線したけれど、たくさん話した甲斐あって、にいに試してみてほしい趣味の候補を一つ見つけることができた。


「…じゃあ、今日はこれをおすすめしてみる。…いろいろ相談に乗ってくれてありがと」

「二佳ちんのお礼の言葉が沁みる~!…頑張ってね、二佳ちん!」

「…うん」


百奈と通話を切って少しすると、約束した時間ににいが私の部屋へやって来た。

いつもならここからだらだらとネトゲするだけだけど、今日は違う。堕落計画を三段階目へと進めるんだ…!

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