乳デカ宗教お姉さん
※Nika※
我が安住の地に、敵が足を踏み入れた。
どうやら名前は零というらしい。
にいが家に誘った時のあの積極性、1時間おきに家にピンポンしていたという執着性。
にいは気付いていないみたいだったけれど、私にはそれが異常に見えた。
あれは間違いなく警戒対象だ。
そして、私の予想が正しいならば、あの女性はきっと...、宗教勧誘のお姉さんに違いない。
たまに家にピンポンしては(私が居留守しているから)帰っていく、なんかひらひらした服を着ている宗教お姉さんと似た雰囲気を私は感じとっていた。
何かに全てを捧げているような、だからこそ醸し出る心の余裕があの女性にはあったのだ。
にいの反応からして、女性への耐性は皆無。しかも零とかいうあの女性は乳がデカい。ものすごくデカいのだ。
あの乳デカ宗教お姉さんを好きにさせると、怪しい壺とかを買わされて、我が家が破壊されてしまうかもしれない。
そんな危機感に駆られた私は、いそいそとベッドから立ち上がった。
その直後。
「んのああああああああ!!」
私の絶叫が家中に響き渡る。
痛い、痛い、痛い!
また、筋肉痛なのを忘れて立ち上がっちゃった...。
うぅ、今度こそこの痛みを忘れないぞ...!
私は立ち上がることを諦めて、のそのそと地を這うようにして移動することにした。
まだ成長期である私の胸はそんなに大きくない。だから匍匐前進も余裕なのだ。
二階の廊下を通過し、階段に差し掛かる。
さて、どうしたものか。
もしこのまま立って階段を降りようとすれば、私は筋肉痛の痛みに耐え切れずに階段から転げ落ちてしまうだろう。
少し考えた末に、私は足を階段の方に向けて仰向けになった後、一段、一段、身体をゆっくり滑らせるようにして降りていくことにした。
今の私はクラゲのごとし。
落下の衝撃もおしりで受け止めれば痛くない。
天才的発想で窮地を切り抜けた私(ちょっと楽しくなってきた)は、そのまま匍匐前進でリビングへ進んでいく。
しかし、ここでまたしても問題が発生した。
匍匐状態では、ドアノブに手が届かないのだ。
このままでは中の様子を覗き見ることができない。
かといって、立ち上がれば筋肉痛が待っている。
私は悩んだ末に、ドアノブに手をかけることは諦め、耳だけを近づけることにした。
こうすれば声だけは聞き取ることができる。
もし、あの乳デカ宗教お姉さんが変な壺でも売りつけようとしていたなら、ヤジでも入れて阻止しなければ。
ドアに耳をつけると、中の声が聞こえてきた。
『すごいよ一本君!190連目でワンドレッド・ニャンターンが引けるなんて!!ああぁ、ニャンターン様…!夏の水着衣装もかっこいいわぁ…!』
『ほとんど、天井でしたけどね…』
…!?
ワンドレッド・ニャンターンってことは、もしかしてにい、ぷるるんクエストをやっているの?いったい、どうして…?
『それでもすごいよ!天井じゃない状態で私の推しのニャンターン様を引くには0.5%しかないんだから!』
『でも、189回も外してしまったわけですから…。結構な確率を外してしまっているような…』
『いい?一本君。ガチャには天井かそれ以外かしかないの。0.5%の希望を掴んだ勝者か敗者かの二択よ。そして見事、一本君は勝者になった。それの何が不満なの?』
『い、いえ、そういうわけじゃ…』
『じゃあ、もっと喜びましょう!ほら』
『や、やったー!』
『ふふ、その調子ね。さて、ひとしきり喜んだところで、続きをお願い!石はまだまだあるのだから!』
なんだかよくわからないけれど、にいがめちゃくちゃガチャを引かされてる!
あ、もしかして…、にいが前に言っていたガチャを引かされていた先輩って、この人のことだったんじゃ…。いや、絶対にそうだ。そうに違いない…!
『ま、まだ回すんですか?』
『回す!石が尽きるまで、逃がさないわ!』
…くぅ、許せない。何が許せないって、さっきから平然と何十連もガチャを引いてるのが許せないよ。
にいには、コツコツ貯めて10連ガチャを引く喜びを味合わせてあげたかったのに、これじゃあ私の計画が台無しじゃないか…!
宗教お姉さんとはまた違ったようだけれど、あの人がにいに悪影響を及ぼすことは間違いない。やっぱり敵だ!
私はこの行き場のない怒りをどこかへぶつけたくて、百奈にメッセージを送ることにした。
『助けて。乳デカ廃課金お姉さんが家に来て、にいに課金の喜びを植え付けてる』
『よくわからないけれど、私は二佳ちんくらいの乳サイズが一番エッチだと思うナ~(・ω<)☆前かがみになったときに谷間ではなく、乳首が見えそうになるところとかすごくい』
ダメだ、送る相手を間違えた。
でも、私には百奈しか友人がいないのだ。
くぅ、いますぐこのガチャ祭りを止めに入りたいけれど、さすがにそこまでの勇気は出ない…。
『すみません…。今度は天井でようやく出ました』
『いいのいいの、天井までの間に一喜一憂するのもガチャの醍醐味だからね。さ、次だよ、一本君!』
『あの、だんだんとお金を溶かしている実感が湧いてきて怖くなってきたんですけど…、この短時間で、もう16万円くらい使ったんですよね?』
『そうよ。気持ちいいでしょ?』
『恐怖でしかないんですけど!』
結局、私はその場から一歩も動けないまま、私は二人の会話を盗み聞くことしかできなかった。




