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それぞれの決意

会社の先輩たちと偶然にも遭遇してしまった後、そのまま朝までぶっ通しでゲームで遊んだにもかかわらず、僕はなかなか眠れなかった。

ベッドの上でじっと目を閉じてみるも、先輩に言われた言葉が頭から離れない。


『空白期間が長引くほど働き口が減っていくぞ?お前は高卒なんだしさ』

『スタートが失敗してるんだから、死ぬ気で頑張らないと。お前の場合、要領も悪いから、人の十倍は努力しないとダメだろ』


二佳と百奈さんからは励ましてもらったけれど、先輩の言うことは僕の胸に突き刺さった。

1年間お互いを避け続けてきた二佳とはある程度また話せるようになれた。

学校の問題はまだ解決できていないけれど、二佳が楽しく毎日を送れているなら焦らずゆっくりと寄り添っていきたいと思っている。

でも、今の生活もこれまで働いて稼いだ分の貯金があるからこそだ。

この調子だとあと一月もしないうちに底をつく。それに、二佳の将来のことや、万が一に大きな怪我や病気になったときを考えれば、ある程度の貯金は必要だ。

もう現実から目をそらすのはやめにして、そろそろ僕も働くべきだろう。

できれば、二佳に心配かけないように無理しないで働ける職場を見つけたいけれど、高卒で、現在ニート中である僕が仕事を選べる立場ではないこともわかっている。

とはいえ、なんにせよまずは就活をしないと始まらない。

そう思ってスマホに手を伸ばそうとして。


そこから先が動けなかった。


同じような問答をもう何十回繰り返し、そして失敗したのだろう。

頭はさえているのに、まったく身体を動かせない。

いくら自分を奮い立たせてみても、無理をする覚悟を持っても身体が動かないというのは恐怖だった。

もし貯金が尽きて、生活ができなくなったときも今のように働けない自分のままだったらどうしよう。そんな焦りがどんどん募っていく。

二佳に何も食べさせることもできず、将来を諦めさせなくちゃいけないのか。


その時、僕の部屋の扉がゆっくりと開かれる音がした。

堕落計画の当初、二佳はずっと僕の寝つきを気にしていたようだし、僕がちゃんと寝ているか確認しに来たのかもしれない。

それなら変に心配をかけないように寝たふりをした方がいいだろうと思い、狸寝入りをする。

やがて扉が閉じられ、わずかに差し込んでいた廊下の灯りも部屋から消えた。

無事に起きていることがバレずに済んだようだ。


…そういえば、前はどうしても玄関の外から出られなかったけれど、二佳と買い出しに行った昨日は外へ出ることができたことを思い出す。

もし本当に外へ出られるようになったのなら、当初の作戦通り、ハローワークで職を探したほうがいいかもしれない。

家では二佳との時間を楽しむことだけに集中し、外では就活を頑張る。

どちらにせよ、就活のためにスマホを触ろうとすると身体が重くなるので、これしかないような気がする。

何十回と繰り返されてきた問答にとりあえずの答えを出せたことに安心する。

そうして僕はようやく眠れる程度には心を落ち着かせる事ができたのだった。


※Nika※


にいの部屋の扉をそっと開けて、中を覗き込む。

にいはベッドの上で身動き一つしていない。

さすがに、久しぶりに外へ出た後にぶっ通しでゲームをすればぐっすりだよね。

私は部屋に引き返し、”仕事”を始めることにした。


「…ん、んちゅ……、れろれろれろ…、ふふふ、お耳が弱いなんて、可愛いね……」


今回収録しているのは、メスガキによる悪戯耳舐めシチュ。

メスガキものとはいえ今回は甘々な所が多く、わからせ展開もないため、私としてはやりやすい台本だった。

ある一点を覗いては。


「…んふふ、あれれ?…お兄さん、急に前かがみになってどうしたのかな……?あ、もしかして…、ぼ、ぼ、ぼ…、ぼっ〇、しちゃったとか…?」


台本に含まれる卑猥な単語を前に、ついうろたえてしまう。

けど、めげるわけにはいかない。

私はもう一度録り直し、今度こそ恥ずかしがらずに、ぼっ〇と言うことに成功した。


先日、にいを安心させるために、少しでも稼げるようになりたかった私は、百奈にもっと販売する作品を増やしたいと相談した。

その結果、百奈がこれまで以上にペースを上げて台本を書いてくれるようになったのだけど、執筆速度を上げるために欲望のまま書き連ねているせいか、あきらかにエッチ度が上がっていたのだ。

これまでの私なら、ここまで直接的な卑猥な単語がある台本は断っていた。

でも…。

私は昨日、にいが勤めていた会社の同僚たちと遭遇した時のことを思い出す。

まっさきに脳裏をかすめるのは、あの人たちの視線ではなく、辛そうに顔を下に向けるにいの顔だ。

私は沸き上がる感情を堪えるように、ぐっと両手に力を入れる。

ずっとああいう顔をしながらにいは働いてくれていた。

そして私は1年近くそんなにいから目を背けて見て見ぬふりをしてきたんだ。

そう思うと、罪悪感の気持ちと後悔と、感謝の気持ちがないまぜになって、暴れだしたくなる。

これまで無理させてしまった分、にいにはたっぷり休んでいてもらいたい。

そのためにも、私は稼がないといけない。にいの代わりに。

にいの堕落計画を成功させるにはそれが必要不可欠なピースに思えた。

にいのように無理してまで頑張るつもりはないけれど、少しは勇気を出して自分をさらけ…、じゃなくて…!自己表現の幅を広げるくらいなら私はやるつもりだ。

やるべきことを再確認し、私は気合を入れて収録に臨む。


「……あはは、きゃんっ♡だって。何その声。女の子みたいだよ~?…ねえ、もう一回聞かせてよ。…ん、んちゅう、れろれろれろ」


…まだ、まだだ!もっともっと煽情的に耳を舐めなくちゃ!


「れろれろれろれろ♡」


いくら卑猥な単語を言ったところで、結局のところ、私の武器はこれなんだから。


「れろれろれろれろれろれろれろれろッッ♡♡♡」


にいを堕落させるため、そしてお金を稼ぎ、いままで見て見ぬふりをしてきた自身の後悔を晴らすため、私は今日も耳舐めの技術を磨いていく。

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