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第98話 妖狐のスキル

「来るぞ! って、あれ?」


 突然始まったマンティコアとの戦い。俺はすぐに二人に『支援』をかけようと二人に手を向けた。


 しかし、マンティコアは俺たちを無視して、採掘をするために置かれているであろう備品や施設を破壊し始めた。


 俺たちが思いもしなかったマンティコアの行動に唖然としていると、ルナは余裕のある笑みを浮かべていた。


「ほら、早く止めないと金の採掘が本当にできなくなっちゃうよ。ボクを捕まえている場合じゃなくなったね」


「なるほどな。それが狙いか」


 ここでマンティコアが暴れるのを放置していたら、魔物がいなくなったとしても金の採掘を再開できず、結局金の価格が高騰したままになってしまう。


 しかし、俺たちがマンティコアの相手に集中してしまうと、ルナに逃げられてしまう。


 ……多分、ルナはそう考えているのだろう。


 俺たちのパーティなら、ルナの確保にそこまで時間を要さないということに気づいていないようだ。


「逃がさないから」


 すると、リリナがバッと俺の隣から勢いよくルナに向かって駆けだしていった。


 どうやら、リリナも俺と同じ考えのようだ。


 すると、リリナの姿がフッと見えなくなった。ルナは一瞬目を見開いてから、小さくため息を漏らした。


「獣人は面倒なんだよねぇ。匂いに音に敏感だし。まぁ、敏感過ぎるのもどうかと思うけどね。……『幻聴』『幻嗅』」


 ルナがそう言った瞬間、ドドドンッ!と花火が近くで爆発するような音や、雷が近くに落ちたような嫌な音が採掘場に響いた。


 そして、それと同時にツンっとしたお酢のような強い香りが辺りに広がった。


「っっ!!」


 すると、さっきまで姿が見えなくなっていたリリナの姿がパッと現れ、鼻を抑えながらその場に蹲ってしまった。


 リリナは鼻と耳に優れている。その器官を生かすことで、『気配感知』や『空間認知』のスキルを得てきた。


 それだけに、この反撃はかなり効いてしまうはずだ。


 というか、これだけの爆音と激臭をはなってしまうと、マンティコアも普通じゃいられないだろ。


 そう考えてちらっとマンティコアを見ると、マンティコアは爆音も激臭も全く気にせず、採掘場を破壊していた。


 嘘だろ、動物なら多少なりとも不快に思うはずだろ!


「ま、まだ!」


 すると、アリシャが爆音と激臭に耐えながら弓矢を構えた。そして、不快そうに眉根をひそめながらルナに狙いを定める。


 アリシャが矢を放とうとしたとき、ルナがクスッと笑みを浮かべた。


「『幻影』」


「うおっ! 今度はなんだ!」


 すると、辺りが急にカッとフラッシュをたいたように明るくなった。突然の光に太陽できず、俺たちは視界を奪われた。


「っ!」


 アリシャの苦しそうな声を聞いて、アリシャがリリナと同じく無力化されてしまったのを察した。


 まずい、このままじゃ全滅する!


「くそっ、『縮地』!」


 俺はリリナとアリシャの位置が掴めなかったので、一旦一人でその場を離れることにした。


 マンティコアが何もダメージを負っていないことから考えれば、ルナから離れればルナのスキルの範囲外に出るかもしれない。


 俺はそう考えて、『縮地』のスキルを使ってルナから遠く離れた位置まで移動した。


 すると、俺が移動した瞬間さっきまでの爆音と激臭とフラシュがパタンと止んだ。


 俺は剣を引き抜きながら、ルナがいる方に振り向く。


「よっし、予想通りだ! このまま一気にーー」


 俺が新たなスキルを使おうとルナの方に振り向くと、そこには何もない所で蹲っているリリナとアリシャの姿があった。


「リリナ、アリシャ?」


 俺は二人が蹲っている理由が分からず眉根をひそめる。


 何だこの状況は?


 というか、激臭がしてこないだけならまだしも、爆音も全然聞こえてこない。


 範囲外に出ればと思ったが、ここまで余波が来ないのはおかしくないか。


「へぇ、やっぱりすごいね。君は」


「お、おい! リリナとアリシャに何をしたんだ!」


 俺は二人の様子がおかしいのが不安になり、ルナを強く睨んだ。すると、ルナはびくんとしてからいじけるようにそっぽを向いた。


「そんなに声を荒らげないでよ。幻を見せてあげてるだけだよ」


「幻?」


 俺はルナの言葉に眉根を寄せる。


 そう言えば、ルナがスキルを使った時、『幻聴』『幻嗅』『幻影』と言っていた気がする。ということは、さっきまで俺が聞かされていたのも、嗅がされていたのも、見せられていたのも全てが幻ということなのか?


 俺がそんなことを考えていると、ルナは陰った表情でリリナとアリシャをじっと見て、ボソッと言葉を漏らした。


「……やっぱり、ボクはこの子たちとは違いすぎるみたいだね」


「え?」


「ううん。なんでもないよ。じゃあね、ロイド」


 ルナは繕ったような笑みを浮かべて、俺に小さく手を振った。


 上手く笑えていない、悲しそうに見えるその表情を前に、俺は一瞬固まってしまった。


 なんで、そんな顔をしているんだ?

 俺が何も言えずにいると、突然ぽんっと出てきた白い煙にルナが包まれた。


「お、おい!」


 俺はルナがいた場所に手を伸ばすが、煙の中のルナを掴もうとしても手は空を切るばかりだった。


 どうやら、もうすでに俺の手の届くところにはいないらしい。


「あれ? 音と匂いがなくなった?」


「眩しい光りもなくなったみたい」


 すると、蹲っていたリリナとアリシャがくらっとしながら立ち上がった。


 二人は辺りを見渡してから、ハッとした様子で俺に駆け寄ってきた。


 それから、リリナが俺を心配そうに見上げて眉根を下げる。


「ろ、ロイドさま! 無事でしたか?」


「俺はなんともない。二人こそ大丈夫か?」


 いくらさっきまでのが幻だったとしても、二人が蹲っていたということもあり、何かダメージを負っていないか心配になる。


 アリシャは俺の言葉に頷いてから、俺たちが通ってきた通路の方を見る。


「私も問題ありません……妖狐の女の子がいませんね。逃げましたか」


「すぐに追いましょう、ロイドさま!」


「ガアアアアアア!!」


 すると、さっきまで採掘場を壊すのに夢中になっていたマンティコアが咆哮を上げて、俺たちに向かって突っ込んできた。


 野生の魔物がこれだけタイミングよく攻撃の矛先を変えるはずがない。


 やっぱり、こいつもルナに何らかの方法で操られていると考えるのが妥当だろうな。


「追いかけたいのは山々だが、こいつを倒すのが先だな」


 俺はそう言って、両手を二人に向けて『支援』のスキルを使うことにしたのだった。



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