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第110話 ルナの妹の救出

 それから、俺とルナはリリナたちをルナの妹がいるという倉庫に送ってから、もう一人の妹がいるという倉庫に向かった。


 それから、俺たちは倉庫の近くに馬車を停めて『潜伏』のスキルを使って、倉庫に近づいていった。


 俺は『潜伏』の効果でルナにもかかるよう、手を繋いだまま移動していた。


 それから、俺はどこにでもあるそうな倉庫を見て目を細める。


「本当にあの中に奴隷がいるのか? 全くそうは見えないんだけどな」


「上は普通の倉庫だよ。奴隷を隠しているのは地下だからさ」


「地下? トロッコで奴隷を輸送したり、随分と手の込んだことをしてるんだな」


 俺が倉庫を見る目を強めると、ルナは隣でため息を吐いていた。


「グスタフは奴隷商のトップでありながら貴族だからね。世間体もあるんじゃないの?」


「ろくでもない貴族だな」


「まったく同感だよ」


 俺たちは倉庫が近づいてきたので会話を切り上げ、日が上がるまでの少しの時間を待った。


 そして、日の光がスッと見えてきたのと同時に俺は隣にいるルナに手のひらを向ける。


「『支援』。ルナ、作戦通りに行けそうか?」


「うわっ、凄いねこのスキル。力が溢れてきてる……うん、これだけの力があれば、いけると思う」


 ルナは『支援』のスキルを受けて、驚いて目を見開いた。


 それから、ルナが力強く頷いたのを見て、俺はルナの手を引いて倉庫の入り口に回った。


 すると、入り口には二人の帯刀した男たちが立っていた。


 『大蛇の牙』なのか、『大蛇の牙』と協力関係にある組織なのか分からないが、見た目と帯刀している様子から、彼らがただの倉庫番をしている人たちには見えなかった。


「あれは……『大蛇の牙』か?」


「ううん。奴隷商を担当は『獅子の王』っていう別組織だね。組織図的には、『大蛇の牙』の上って感じ」


「なるほどな。二つの組織が関係しているとは思っていたが、きちんと上下関係があったんだな。」


 子供を誘拐して奴隷商をしている組織が『獅子の王』って、違和感半端ないな。


 俺はそんなことを考えてから、ルナをちらっと見る。


「ルナ。ここから狙えそうか?」


「うん。ここまで近づけば行けるよ……『幻影』『幻聴』」


 ルナは物陰から倉庫番をしている男たちに片手を向けて、スキルを使った。


 すると、男たちは目をぱちぱちとさせてから目をごしごしと擦り始めた。


「ん? あれ?」


「真っ暗になったぞ。どういうことだ?」


 男たちは何が起きたのか分かっていないようで、困惑していた。


 俺はそんな男たちを見てから、物陰から出て『潜伏』のスキルを解く。


「どうやら、成功したみたいだな」


 ルナには『幻影』で暗闇を、『幻聴』で無音の状態になるようにお願いをしておいた。だから、俺たちが男の目の前に立っても、今は真っ暗な景色しか見えていないのだ。


俺が男たちの目の前に立て振り向くと、ルナは自身の両手を不思議そうにじっと見ていた。


「離れた相手に『幻影』をかけれたのは初めてだよ。凄いね、この力」


「まぁ、元々俺の力って訳じゃないんだけどな」


 俺は掻いて、ルナから聞いた話を思い出す。


本来、ルナの『幻影』と『幻聴』は半径数メートルいる自分以外の相手対象だ。だから、ルナが近くにいないとそれらのスキルは効果がないらしい。


 しかし、それが今や二十メートルくらい遠くにいる倉庫番にかけることができていた。それも異変を全く感じさせなかったのか、男たちはただオロオロしているだけで敵襲だと思っていないみたいだ。


 

……暗殺者スタイルのリリナに、狙撃手スタイルのアリシャ、それに中近距離で相手を無力化させるルナ。


 一体、俺たちのパーティはどこへ向かおうとしているのだろうか?


「ロイド?」


 俺がそんなことを考え出すと、ルナがこてんと首を傾げて俺を見上げていた。俺は首を横に振ってから、今やるべきことを思い出す。


「いや、何でもない。それよりも、こいつらを拘束しないとな。『硬糸(魔)』」


 そして、俺は『硬糸(魔)』で視界と聴覚を奪われた男たちをぐるぐる巻きにしてから、鍵を奪って倉庫の中に入っていった。




 それから、倉庫の床下の鍵を開けて地下に降りた俺は、そこに広がる景色を見て驚きの声を漏らした。


「凄いな。こんなに奴隷に捕まった子たちがいるのか」


 地上が普通の物資倉庫になっているのに対して、地下は牢屋のような薄暗い部屋が広がっていた。


 大部屋のような牢屋が両壁に沿うように二つずつあり、そこには二つ合わせて二十人くらいの子供たちの姿があった。


 子供たちは皆、生気のない顔をしており、どのような扱いを受けていたのか何となく想像がついた。


「ナナ、ナナ⁉」


 俺が牢に閉じ込められている子供たちの数に驚いていると、ルナが牢の中を覗いて妹の名前を呼んでいた。


 しかし、皆ちらっとルナを見るだけで返事をする者たちはいない。


 まさか、ここにいないってことはないよな?


 俺はそんな最悪の展開を想像しながら、顔も分からないルナの妹を探す。すると、奥に小さな小部屋があることに気がついた。


「お姉ちゃん?」


 すると、奥にあった小部屋の方からルナの声に反応する声があった。


 俺とルナは顔を見合わせて奥の小部屋に駆け寄っていく。


「ナナ! そこにいるの?」


「やっぱり、ルナお姉ちゃんの声だ! いるよ! ここに閉じ込められてる!」


 扉の奥からどんどんっと叩く音が聞こえる。


「ロイド! さっきの奪った鍵貸して!」


「お、おう」


 俺は鍵が複数個つけられているキーリングを手渡した。ルナはキーリングをガチャガチャとさせながら、ナナのいる小部屋に付けられている鍵を探し出す。


 やがて、ナナのいる小部屋の鍵を当てたルナは、焦った様子で鍵を回して扉を開けた。


「お姉ちゃん!」


 すると、ルナを全体的に小さくしたような子がルナの胸に飛び込んできた。


「待たせてごめんね。怖かったよねっ」


 ルナはナナを強く抱きしめて、久しぶりの再会を喜んでいた。


 俺は涙を流しながら抱擁する二人を見て、少しの間姉妹水入らずにしてあげようと思い、扉に刺したままになっている鍵を抜いて、他に捕まっている子供たちを牢から解放させることにした。


 俺は抱き合ったまま楽しそうに話しているルナとナナを見て、二人を助けることができたことを一人喜ぶのだった。


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