第100話 ガランの街へ
それから、俺たちは採掘場にいた魔物たちを倒してから、ガランの街に向かって馬車を走らせた。
その道中で隣に座るリリナが採掘場の方を振り向いて、不満そうに片頬を膨らませる。
「あんな女の幻に騙されて逃がすことになるなんて、不覚です」
「まぁ、あの状況じゃ仕方がないだろ。初見殺し過ぎるスキルだったしな」
マンティコアを倒した後、俺たちは急いでルナの姿を探した。
しかし、俺たちが採掘場を出たときにはすでにその姿はなく、どこにいるか尻尾も掴むことができなかった。
「とりあえず、今は魔物を倒したことの報告に帰らないとだしな」
せっかく、魔物を倒して採掘をすることができる状態になったのだ。少しでも早く金の採掘を始めてもらうことが、偽金の流通を止める一番の近道になるだろう。
……まぁ、魔物を倒しても施設が少し破壊されているから、すぐにすぐ復旧というわけにはいかないだろうけどな。
そのことを知らせるためにも、ルナの後を無理して追うよりも、ガランの街に戻るべきだよな。
俺は頭の中でそう思いながらも、ルナのことが気になり始めていた。
去り際に見せたあの悲しそうな笑顔と意味深な言葉は、一体何だったのだろうか?
しかし、どれだけ考えてみても、あの時のルナが何を考えていたのか俺には分からなかった。
俺はそれからしばらく馬車を走らせて、地図に書かれたガランの街の門の近くまでやってきた。
「やっぱり、大丈夫だと言われても結構不安だよな」
俺は門番が見える距離にいながら、心音をうるさくさせてしまっていた。
オリスさんから、採掘場に住み着いた魔物を倒した後は街の門を通って、オリスさんの家に着て欲しいとのことだった。
もちろん、現在指名手配中の俺がすんなり街に入れるわけがないので、オリスさんに街に入る許可証を一筆書いてもらったのだ。
オリスさんの話によると、その紙を渡せば街に入るための適当な手続きはしないでいいとのことらしい。
俺が門番から少し離れた所で馬車を停めると、リリナが荷台の中からその許可証を取り出してニコッと笑う。
「ちゃんとオリスさんから一筆書いてもらった紙もありますし、大丈夫ですよ! それじゃあ、いってきますね!」
リリナはそう言って、許可証を片手に馬車を降りて門番のもとへと向かった。
それから、リリナは俺たちの方を指さして色々と話し込んでから、ぱぁっと明るい表情をして俺たちに手を振ってきた。
「ロイドさま! 大丈夫みたいです!」
「ちょっ、ちょっと、あんまり大声で俺の名前を呼んだらマズいだろ」
俺が慌ててリリナが俺の声を呼ぶのをやめさせようと手を伸ばすと、なぜかリリナのすぐ後ろにいる門番たちが俺に頭を下げていた。
「え? 何がどうなっているんだ?」
「わ、わかりません。一旦、近づいてみませんか?」
隣に座るアリシャも俺と同じように困惑して首を傾げていた。
俺が馬車を恐る恐る門番の近くに移動させると、門番の二人がちらっと顔を上げて口を開く。
「お疲れ様です、ロイドさん」
「オリスさんから話を聞きましたよ。あの、戻られたということは、本当に三人で採掘場に住み着いた魔物たちを倒してきてくれたんですか?」
あれ? もうオリスさんから話が言っているのか。
なぜか遠慮気味に聞いてくる二人に釣られるように、俺も少しおずっとした感じになる。
「え、ええ。まぁ」
「「おおっ」」
すると、門番の二人は声を揃えて驚きの声を上げていた。
……なんだこれ。
「えっと、ちなみにオリスさんに何を聞いたのか教えてもらってもいいですか?」
指名手配犯だったはずが、なんでこんな反応をされているのだろう。
ただ俺たちが魔物を倒しに行ったことだけを聞いたにしては、物腰が低いような気がする。
そう考えた俺は、門番の二人にオリスさんに聞いたという話を教えてもらうことにしたのだった。




