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面倒なことだが説明回は必要だと思う

アクセスありがとうございます。




「………」


近付く職員を目の当たりにしても龍真は焦ることなく直視していた。

彼女の視線が龍真ではなくその向こうにあることに気付いたからだった。


「…っ、やはりそうでしたか!リオン皇女様、ついに貴女様も皇帝陛下と同じようにアルティス登録へ来て下さったんですね!」


出迎えの職員が龍真の奥に控えていたリオンの存在に気付き、喜びの声を上げるとそれが近くで座っていたリリーファルナの冒険者達の耳に入り、たちまちフロア全域にリオンの来訪が広まっていった。


「成人の儀を終えたので皇帝陛下の薦めもあり、リオンも見聞を広めて経験を積みたいと思い此処へ来ました。至らないところもあるでしょうがどうか宜しくお願いしますね」


「そんなっ、とんでも御座いません!リオン皇女様の御勉学に利用戴けるのは我々一同、この上無い光栄なことですっ」


「但し…その御勉学と言えどアルティスは冒険稼業、死の危険が伴う命懸けの職業です。此処で活動する以上、御身の安全を保障することは出来ませんので依頼を受ける際にはくれぐれも熟考して判断なさいますようお願い致します」


リオンが柔らかな笑顔を浮かべて登録の意思を伝えると、1人の職員は慌ててリオンが至らないという言葉を撤回するが、もう1人の職員は生半可な気持ちで冒険者にならないように注意を促す。

勿論、その言葉もリオンのことを考えての発言なのは言うまでもないことだが。


「お心遣い、感謝します。勿論リオンも生半可な気持ちで此処に来たりなどしません…父である皇帝陛下と同じように自分の命は自分の責任で守っていこうと思います。それに…リオンにはとても頼もしい護衛の方々が傍に居てくれますので」


「………成程、承知致しました!」


龍真達を一瞥した職員はリオンが持つ覚悟の方はともかく、頼もしい護衛…というのはどうも合点がいかなかった為当たり障りない返答で対応した。

龍真もそれを察して特に何かを追及することはなかった。


「ではでは、その決心が揺らがない内に登録と致しましょうっ!さぁ、どうぞこちらへ!」


「待って下さいっ」


納得したアルティス職員がリオンを登録受付へ案内する為先導しようとしたところでリオンがその行動に待ったを掛ける。


「登録するのには、順番があるのですよね?リオン達もその順番通りで構いません」


何事かと思い首を傾げリオンの方へ視線を戻した職員に、リオンは当たり前の事を当たり前に行うように指摘したのだ。


(成程、此処では"皇女様"としてじゃなく"1人の冒険者"として扱って欲しいんだな)


ですが…と食い下がろうとしてる職員の姿を見て龍真はリオンの横へ並び職員と相対する。


「そちらのお心遣いは大変嬉しく思います。ですが彼女は特別な待遇を望んではいません、どうか1人の冒険者として平常通り扱って下さい」


「…っな、何故貴方がそのような事をっ。いきなり出て来て、貴方はリオン皇女様の何なのですか!?」


リオンの意思を汲み取りそれに添うように明示した龍真だったが、当然反感を買うのは予期していた。冒険者登録を行うといってもリオンはこの国の皇女なのだ、一般的な考え方で言えばこの様な特別扱いが礼儀であり城下の臣民と同じ扱いをする方が失礼に当たるのだ。

そこを覆して不躾な扱いをしろと要望されれば取り乱すのは正常な反応だろう。

当のリオンは龍真が自身の気持ちを理解していたことに感銘を受け、表情を綻ばせていたが。


「不躾であったならその非礼はお詫びします、済みません。我々はリオン様の護衛です…もっとも、本日正式に認められたばかりなのですが」


「!……証明出来ますか?」


隣にいた別のアルティス職員が龍真にリオンの護衛としての証明を求めると龍真は皇帝から貰ったばかりのリングを差し出した。


「…──確認しました。正真正銘、皇帝陛下に認められたリオン皇女様の護衛の方のようですね」


「納得戴けたのなら何よりです。では話を戻しますが、リオン様の意思を尊重して貰えますね?」


龍真から見せられたリングをまじまじと見詰め、やがて本物の証明だと確信が取れるとその職員は龍真の前から下がり元の位置へ戻った。

無事護衛だと証明出来たことに一安心すると、再度リオンの意思を尊重し他の臣民と変わらない対応を求める。


「うぅ…わ、分かりました。通常、冒険者登録には登録料が発生しますが、そちらもお支払いになる…ということですね?」


「はい、勿論ですっ。リオンの我が儘で心遣いを無駄にしてしまったみたいでごめんなさい」


「いえっ!とんでもありません!リオン皇女様のご意志を危うく無下にしてしまうところでしたっ。それでは、順番になりましたらまた伺いますのでそれまで席に座ってお待ち下さい」


リオンが申し訳なさそうに胸元で掌を合わせ謝罪すると、職員は慌てて訂正に入る。やはり皇女という肩書きは何処でも影響が大きいようだ。

龍真達は職員に誘導された席を囲む形で座り呼び出しを待つのだった。


───────────────────────

─────────────────

─────…


「…まぁ、こうなるだろうな」


龍真達が席に着いて間も無く、リオンの周りには皇女と少しでもお近付きになりたい冒険者達が所狭しと溢れ返っていた。

リオンの気持ちを尊重して他の臣民と同じように手続きを特例で行わず順番待ちにすることに賛同した龍真だったが、リオンを優先して通そうとした職員の判断は適切だと思っていた。

リオン本人からすれば同じように冒険者登録するだけの行為でも、リリーファルナの臣民にとっては一大事だ。何せ皇女の登録なのだから。


《マスター、彼女をあのままにしていて良いのですか?》


見るに見かねたのか、隣に座るミアティスもどうすべきか龍真に助け船を求める。

通常運転のシオンは面白そうに笑って静観するのみだった。


《…そうだな、この状況がいつまでも続くと厄介だし、早急に登録を済ませておいた方が良いだろう》


立場上、シオンのように静観しているわけにもいかないので龍真は1人、席を立ち上がるとリオンの護衛を2人に任せてアルティス職員の方へ向かった。


「申し訳ありません、リオン様の気持ちを出来る限り優先したくは思うのですが…この状況を続けると却ってこの場が混乱し迷惑を掛けてしまいそうです」


「あ…先程の」


龍真は職最初に出迎えをした職員の元へ近付くと作業が一段落した頃合いを見計らい、軽く一礼を済ませてからリオン周辺の混乱への対処を申し出る。

近付いた龍真の声に気付き視線を合わせた職員の表情は案の定困り顔だった。


「…ですので現在可能な最善策で登録を進めて戴いても構いませんか?」


「っ!よ、宜しいのですかっ!?」


龍真の提案を聴いた職員は驚きの表情を見せた後、もう一度龍真に確認する。

余程現状を打開したいと思っていたのだろう。


「はい、リオン様も良い勉強になったと思いますし宜しくお願いします」


「分かりましたっ!では早速そのように進めて参りますねっ」


再確認が出来た職員は直ぐに姿勢を正し、優先登録の手続き準備を始めるのだった。



「───…リオン皇女様、お待たせ致しましたっ。ご登録の順番になりましたのでご案内致します、こちらへどうぞ!」


「リオン様、順番になったようなので行きましょうか」


用意を済ませた職員が龍真達の待つ席にやってきて準備が整ったと声を掛けると龍真は先に立ち上がりリオンを促す所作をする。


「あ、そうなのですね。皆さん、リオン達はこれで失礼します。また機会があれば是非色々お話聞かせて下さいね」


囲まれていたリオンは声に気付くと直ぐに身なりを整え、冒険者達に笑顔を向けるとその場を後にした。

リオンの笑顔を間近で見ることになった冒険者達がその余韻を味わっている姿を龍真は見て見ぬふりをして職員とリオンに着いて行くのだった。



「それでは皆様、説明をしますのでどうぞこちらにお掛けくださいっ」


職員に案内されたのは質素な作りではあるが外部と隔てられた完全な個室だ。

恐らく大人数での登録やリオンのような身分の高い人間が登録しやすい環境を作る為にアルティス側が配慮した結果だろうと龍真は思った。


「こほん、少々長くなりますが説明をお聞きください。何か疑問がございましたら説明が終わった後お応え致します」


職員に促されて全員が席に座り、職員が一度確認すると数枚の紙を取り出してテーブルに拡げる。

そして毎回そうしているであろう営業スマイルを浮かべるとアルティス登録に関しての説明を始めたのだった。




読んで下さりありがとうございました。


諸事情で更新出来ない状態となっていましたが、また少しずつでも進めて行けたらと思っています。

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