表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/74

神殿には試練イベントが組み込まれていた


(…あの状態でも生きて…は流石に無いな)


化物と成り果てたロディックを即座に倒した龍真は確実に弱点を切り裂いて命を絶ったにも関わらず、着地した後地に伏せたロディックを再度【識別眼】で捉え絶命を確認した。

油断していて実は生きていた等と言う事が起こり背後から致命傷を受けるなんて御免だと思っている龍真の確認は実に念入りだった。


「ロディック隊長…本当にごめんなさい。どうか安らかに……」


龍真が無事を確認するとミアティス達に視線を送り、それを見るとリオンを自由にさせた。

行動の自由を得たリオンはロディックの傍へ駆け寄り膝を着いて瞼を綴じ、真摯に祈りを捧げた。

すると丁度タイミング良く亡骸が端から粒状に崩れ始め、跡形も無く飛散すると後にはロディックの着ていた服だけが残ったのだった。


「皇女様、彼にも家族が居るでしょう…遺品はシオンに持たせますので帝都に帰ったら届けて下さい」


「リョウマ様…そうですね。ロディックのご家族に伝える為にも、リオンは儀式を成功させて帰ります」


残った衣服を拾い上げ、畳み込むとシオンに背負わせている遺品を纏めた革袋に収納し祈りを捧げ続けているリオンに近付き遺族に届けるように伝える。

龍真の声を聞いて静かに瞳を開き傍に来た龍真に視線を向ける。立ち上がったリオンには恐怖の色は見えず、前向きな決意が宿っていた。


《シオン、森にはあんな姿に似た魔物も乗り移るような化物も居なかったよな…だとすると外部から持ち込まれてる可能性が高いだろ》


《それにあれは私達を狙った訳ではなく、皇女様を狙っている様でしたね》


《…うむ、皇女殿を狙った外部の仕業だとすれば帝都の手の者の可能性が高いと見るべきであろう。となれば盗賊団の存在も怪しいな…》


《…1人位生け捕りにして尋問すべきだったか》


実際戦った龍真も護衛していたミアティスとシオンも形状、能力共に"勇滅の森"に存在しない物だと判断すると即座に念話で情報共有を図った。

折角決意を固めて前を向いてるリオンに不安を煽るような余計な事を耳に入れて欲しくなかったのは勿論だが、これを提案してしまえば無関係では居られなくなってしまうと及び腰になっていたからだ。

既に儀式から帝都までの護衛に着いているのでなし崩し的に関係者の仲間入りだし元も子もないが深入りするのは面倒だと言わざるを得ない。


龍真は盗賊団の頭領と言わないまでも重役位の立場の人物を1人捕らえてシオンに尋問させれば良かったと後悔したが、その時は一介の盗賊団だと思っていたしそこまでやってしまったら結局一緒の事だと思い直す。


「皆さん、この扉はリリーファルナの皇族の血を引く者でなければ反応しない魔術が組み込まれているそうです。リオンが開けますから、皆さん準備をお願いします」


龍真達が念話している間に準備の整ったリオンが神殿の扉の前に立ち、振り向いて状況を確認する。龍真達が頷くのを見ると再び扉の方を向いたリオンは扉の中心部の円形の飾りに手をかざした。


『汝、リリーファルナに連なる血筋の者と認めたり…儀式遂行の為に我が与える試練…見事乗り越えて見せよ…──』


「私の名はアイシス・リオン・リリーファルナっ!リリーファルナの皇女としてその試練、制してみせます!神殿の門よ、開いて下さいっ!」


リオンの掌が触れた場所から光輝き、これまでくすんだ色をしていた神殿が白を基調とした鮮やかな色合いを取り戻す。

地球で例えるなら発見された古代遺跡が現代の建築技術で建て直されたような変貌だった。


(一瞬の内にこんなに様変わりするなんてファンタジーだな。色が変わる家、か…使えそうだ…それにしても試練なんて有るのか)


光が放たれ神殿の門が開かれるまでの光景を目の当たりにしている龍真は自分の作品に取り入れて使えそうな変化を眼に焼き付けながら試練を受ける事を危惧し始めていた。

子供から大人と認められる儀式なのだから水でも浴びて身体を清めて、成人の証みたいな物を授かって終わり…程度にしか考えてなかった龍真にとって試練イベントは完全に誤算だったからだ。


《主よ、この状態の私では迂闊な動きを見せそうだ…此処で待たせると伝えた方が賢明であろうな》


龍真がどうこうしようかと指示を出す前に荷物を背中に乗せたシオンが自分の待機を提案する。

これから行われる試練の内容は人族…それも皇族が受ける試練である事と、自分の現状を客観的に見て冷静に分析した結果、シオンは門前での待機を選択する考えに至ったのだ。


「皇女様、人族が行う試練でしたら荷を背負っているシオンを同行させると何かと不便な点が出てくるかと思います。神殿内の変な場所で待機させるより神殿の外の影で待たせた方が良いと判断しましたが如何でしょう?」


「え…?ですが、この危険な森に単独で残して行っても大丈夫なのですか?」


「幸いな事にこの神殿が皇女様と接触して変化してから自分の感じる範囲にも、翼人族のミアティスが感じる範囲にも魔物の気配は感じられません。こう見えてシオンも隠れていれば大丈夫でしょう」


シオンを置いて試練に挑もうと提案した物の、入り口付近とは言え"勇滅の森"の内部であり、危険視するのが当然の場所だという事を失念してしまっていた。

"しまったな…"と思った龍真だったが、直ぐに切り替えると納得出来そうな理由を並べて違和感の払拭を図る。

実際はシオンが聖獣だから魔物が殆ど寄り付かないという単純明快な理由だったが隠蔽してるので仕方無いのだ。


「そして外のシオンにミアティスを付けたら戦力が分散してしまいます、我々の事は我々で責任を取りますので皇女様が気に病む事ではありません」


「分かりました、リョウマ様がそこまで仰るなら…リオンはその言葉を信じます」


龍真が絶対に大丈夫だと安心させるように自信に満ちた視線でリオンに進言するとリオンはそうする事が当然だというように頷き、龍真の提案に納得した。

姫という存在が未だ警戒対象の龍真は【識別眼】を常時発動して動向思考を探っているが、やはりリオンは裏表無い反応のままだった。

これが仮に心まで仮面を被り演技しているのであれば大した魔性の女だと考えたが対処出来る内は必要以上に理解しようと思わなかった。


「そう仰って戴けると助かります。では次は隊列や緊急時の対処を話し合いましょう面倒かも知れませんが儀式の成功を確実にする為です」


「はい、マスター」


「リオンも異論ありません、宜しくお願いしますっ」


シオンを待機させる事が決定して龍真が次に持ち出したのは陣形や緊急時の対処に関する話し合いだった。

長年連れ添ったパーティーだったり連携が取れるパーティー同士が組んだなら開門の瞬間に試練に挑んでも平気だろうが、龍真達は今日出会ったばかりの急増パーティなのだ。下準備するのは多い方が良いのは明白な事だ。


《やれやれ…もし神殿に意思でもあるのなら早く挑んでくれと思うであろうな…》


試練を目の前にして出鼻を挫かれ門前で話し合いをする龍真達を見たシオンは儀式の神殿を一瞥して同情の意を呟き、周りと同化出来るような神殿の死角に足を運ぶとその場所で横たわり不慣れな荷物持ちをしている疲れを癒し始めた。


──────────────────────────────

──────────────────────

────────…


「…という感じで行きましょう。ミアティスは自分と一緒に居るので問題無いと思いますが、皇女様が不明な点は今の内に教えて下さい」


一通り大まかな話し合いを終えた龍真は今の内容でリオンが把握し切れなかった部分は何度でも説明するつもりでいた。

実演している訳ではないのでこうして話し合っていてもいざイレギュラーな出来事が起こった場合、確実に対処出来るとは言えないが話を理解してイメージしているのと何となく聞いているのでは明白な差が出るし時には自分の命運を左右する事にも繋がる事を重々理解しているからだ。


「ありがとうございます、リョウマ様…リオンなら大丈夫ですから試練に参りましょう?」


「分かりました、基本的に自分が前に立ち対処しますがもしもの時は宜しくお願いします」


リオンが理解したと頷いたのを見た龍真はその場で立ち上がりそれに促されてミアティスも立ち上がる。

遅れてリオンが立ち上がると開門している入口の方を向いた。先頭を歩く龍真の後ろをリオンとミアティスが歩く形で門の敷居を潜り神殿の中へ入る。


《1日経って戻らなかったら普段のシオンの姿で援護を頼む…》


《頃合いなど分かっておる、安心して楽しんで来るのだぞ主よ》


リオンが完全に門を潜った矢先他の侵入を許さないと言わんばかりに門が閉まっていき、完全に閉鎖する直前に龍真とシオンは念話を交わした。

大抵の事は対処出来ると思っている龍真だが備えは大事である。

皇族の同行が無ければ成り立たない限定的な攻略に龍真の心は躍っていた。




読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ