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魔物が増えた生活 6


《んっ…あふっ、マスターぁ…これ、なんか凄く…きもちぃ》


《ミアティス…慣れたらもっと気持ち良くなる。その為には、何度も入れないとな》


一応弁解しておくが龍真達は別にやましい事をしてる訳では無い。

入浴前の作業を全て終えて怖がるミアティスを龍真が手を引く形で湯船に浸からせ、恐怖を和らげるという名目でミアティスが龍真の腕に絡み付いてるという状況でミアティスが湯船に入った感想を告げてるだけだ。


結論から言うと、ミアティスは自分で身体を洗う事が出来なかった。

温水でも固まってしまうのに幾ら主人の保証が有ったとしても知らない液体で身体を流すのは無理だった。

仕方無く龍真は3枚目のタオルを取り出してそれでミアティスの身体を洗った。


本人の羞恥心は皆無とは言え年頃の女子に見える肌を隅々まで洗うのを龍真は幼子だと言い聞かせ、なるべくミアティスの方を見ないようにして何とか乗り越えた。

あまり直視せずに洗った為、くすぐったそうなミアティスから変な声が漏れ出して龍真は【感情保護(マインドガード)】まで使って平静を保った。

所謂スキルの無駄遣いである。

そして全身を掛け流して汚れを落として現状に至るという訳だった。


《マスター、こっちは…大丈夫…っ》


水と比べてじんわりと身体全体に染み渡っていく温泉の感触はミアティスも気に入ったようで、時間の経過に比例して緊張も緩まり表情も穏やかな物へと変わっている。


《こうして入って、手で流すなら…洗えるんだけど…》


ミアティスは水浴びの時にしているであろう仕草で腕や肩を擦り苦笑いを浮かべる。


《今までして来なかった事を俺に合わせてしてるんだ、こうして我慢しながらでもやろうとするお前は頑張ってると思うぞ?》


だからそんなに気にしなくて良いと付け加えて龍真はミアティスを褒める。

初めて経験する事に関しては子供に接してきたようにしようと方針を固めた。

龍真がしようとしてる褒めて伸ばそうとするやり方が一概に正しいとは言えないが、龍真個人的にはそうして接した方がお互いに平和的だろうと考えていた。


子育てしていても可笑しくない年齢だった龍真だが生憎そういう事には縁が無かった為幼子相手の経験はほぼ皆無に等しかった。


《ありがと…マスター、その…明日も、これ…入るの?》


《そうだな、資源に限度が有るなら入る回数も限定されるが、見ての通り此処は湧き上がってる。寧ろ使わない方が勿体無いと思わないか?》


元々数日に一度身体を清めて居たからなのか、資源の状態を気にしたからなのか、ミアティスは龍真に連続で入るのかどうかを確認してくると温泉の仕組みを知ってる龍真は遠回しに毎日入っても問題無いと答える。


《そう、なんだ?じゃあ、頑張って入る、慣れるように…するっ》


毎日入る事に何も問題が無い事を心に留めたミアティスは何故か意気込んで入浴する事に対する意欲を燃やしていた。


《やけに積極的になったな…何か有ったのか?》


それを見た龍真は入浴で身体を解し、寛いで表情を和らげてるリラックスした姿を晒しながらも気になってしまい、思わずミアティスに問い掛ける。


《…私、マスターのスレイモンスター。スレイモンスターは…少しだけマスターとリンクする、から…嫌な時とか、嬉しい時とか、少し…分かるの。それでマスター、おふろ?この中入ってると安心、みたいだから…だから、頑張るっ》


《…成程、そういう事か》


《…うん》


ミアティスが意欲的になった理由は表層的な物とはいえ龍真の感情を捉えたから故のものだった。

それを理解した龍真はスレイリンクする事自体の少なさを改めて実感する。

契約の儀を行ってからでしかお互いの意思疎通が図れない状態ならば、魔物側も人族側もわざわざリンクする必要性を感じない。

知性の少ない魔物なら尚更だろう。そして知性の有る魔物は大概強力な魔物なのがセオリーだ。


魔物から見た人族の評価と精霊であるもちこから聞いた話しでしかこの世界の人族の事を知る事が出来無い龍真からして見れば、強さの強弱に関係無くある程度警戒が必要な相手な事には変わり無かった。


因みに湯船に入る前、龍真の腕に自分の腕を組んで恐る恐ると言った様子で入浴したミアティスだが現在進行形で腕を組んで密着していた。

当然の事だが龍真の腕には人間と何ら変わり無いミアティスの乳房が龍真の腕に程良く柔らかく、程良く弾力のある絶妙な感触を伝えている。


あまりその感触に集中してしまうと一部に熱が溜まってしまう為、出来る事なら早めに何とかしたい龍真だったが自分の生活に合わせて尚且つ慣れようと決意を固めるミアティスを無下には扱えず、龍真の羞恥心とやせ我慢がスキルのお陰でミアティスに伝わっていない事を内心感謝した…ご都合主義である。


《ミアティス、そろそろ上がろうか。自分で身体を拭けるか?》


《あ…あぅ》


終始龍真の腕に絡み付いていたミアティスを促し湯船から上がって髪や身体を拭こうと言う時に龍真は一度自分の身体を吹いて服を着れるか確めてみた。

自分で作った服を自分で着ていた時点で服に関しては大丈夫だと思ってはいるのだが一抹の不安は残るのだ。

龍真はミアティスの着脱してる姿は見てない為、そのまま着たら大変な事になるだろうと考えたがミアティスが困惑しながら俯くのを見て"拭く"という行為が出来ない、もしくは分からないのだと確信した。


《何度も言うけどな…今までやって来ない行為、慣れない行為は出来なくて仕方無い。初めから完璧に出来るなんて殆ど無いからな…少しずつ覚えていけば良いんだ》




頬を赤く染めるミアティスの手を引いて龍真は湯船から上がり、簡易的なスペースで先ずミアティスの身体を拭いていく。

自分の家族だと思って拭き上げるとミアティスに服を着るように促し、後ろを向いて自分の身体を拭いた。

着替えてる筈のミアティスがしきりに龍真の方へ視線を送っていたことに龍真は気付かなかった。




《ミアティス、今から寝室を組み立てる。1人じゃ難しい所もあるから手伝ってくれるか?》


《寝室?はい、マスター…聞かなくても、マスターの役に立てる事は…全部やるの》


入浴から上がってもシオンは未だ戻っていなかった。

眠るには未だ早いだろうと判断して龍真はミアティスが服や剣を加工してる間シオンと共に作り上げた木材を【自由保存(フリーストレージ)】から取り出す。


《これ、人族の住処の材料?》


洞窟の中に並べられた木材を見てミアティスは物珍しそうに眺めている。


《いや、森の中で一番豊富な材料と言ったら木だからな…今後も継ぎ足せるしこれが一番だったんだ》


《あの、マスターは…作った事、あるの?》


《大きい物は見たり聞いたりして知識としてあるだけだ…それじゃあ、始めるぞ》


ミアティスの疑問に答えながら龍真は今まで使っていたテントと寝袋を【自由保存】へ収納する。

その後、同じくスキルの一つ【識別眼】を使用して建物を作っても崩れない平坦な土台となる土のスペースを探すとテントを置いていた場所の少し横辺りから始めるのが丁度良さそうだった。


《これとこれを合わせるから、この端を持っていてくれ》


《はい、マスター…っ》


頼む形でミアティスに指示すると訂正に入ったり不安がる傾向にあると察した龍真は不慣れながらもミアティスに命じる形で指示を出す。

ミアティス本人は何の抵抗も無くそれに応じて指示通り動き寝室の組み立てを続けていった。



──────────────────────────────

───────────────

─────…



《よし、これで完成だ。…次は、ベッドだな》


《ほぅ、手探りで作った割には見事な物だな!》


龍真が材料を適度に取り、ミアティスに手伝わせて組み上げて屋根で上を塞いだ所で寝室の完成とすると龍真達は一息着いて今一度作った寝室を眺めた。

散歩に出ていたシオンも終わり掛けになると戻って来て龍真達の作業を偉そうに眺めていた。


洞窟の明かりに関してはミアティスの魔法で松明のように火を燃やして賄っていたのだがシオンが戻ると得意の光属性魔法を使用して、今は昼の光が差し込んでる時よりも明るくなっていた。

龍真が次の作業の時は自分も光を集めて同じように照らして作業しようと思った事は言うまでもない事だった。


《…ところでシオン、散歩にしては随分時間を掛けたみたいだけど、結構遠くまで行っていたのか?》


作業を再開する前にふとシオンの行動が気になった龍真はシオンの方を向いて問い掛ける。

本来友人の動向などあまり踏み込んで聞いてはプライベートの侵害になるだろうと興味が有っても自分からは聞いたりしない龍真だったが、シオンは聖獣とはいえ魔物だし別に良いだろうと判断したのだ。

この世界に転移する前の龍真では考えられない事である。


《いや何、龍真と鍛錬するのに都合の良い場所を探しておったのだ。一ヶ所での戦闘に慣れてしまえば柔軟な対応が出来ぬかも知れんだろう?》


問い掛けたは良いが要らない詮索だったかと一瞬後悔の念が浮かんで龍真だったがシオンは何も気兼ねなく外出先の内容を暴露した。


《そうだったのか…それじゃあ寝る場所を作るかな》


《マスター、私…次も、手伝う》


当たり障りのない返答を返して納得すると龍真は立ち上がり寝室に向かうと今度はその中でベッドを2つ作り上げる。

木材を組み立てて重ね、嵌め込んで寝室に比べて極めて早く自分とミアティスの分のベッドを作り上げた龍真は解体したイビルティグレスの皮を二等分に切り分け敷き布団にした。


ベッドの準備を終えた龍真はそろそろ休もうかと思っていた所で1つ問題が起こった…。


《マスター、こっちの上で寝るの、だめ。マスターに何かあったら動けるように、私も、こっち》


ミアティスが同じベッドで眠ろうとして動かなかったのだ。

説得を試みた龍真だったがミアティスは頑なに譲らない、流石に密着する狭さで一緒に眠るのも床に寝かせるのもさせ切らない龍真は作ったベッドを一度解体して使おうとしていたベッドに隣接させた状態で再び組み立てた。


《これなら、良い…っ》


今度のはミアティスも納得出来る配置だったようで納得の表情だった。


《さて、今度こそ眠るか…明日もシオンと鍛錬から始まるしな》


龍真はシオンに眠る事を報告すると組み立てて嵌め込んだ寝室の引き戸を閉めると新しく出来たベッドに仰向けに寝転ぶ。

寝袋を出して使おうかとも考えたが折角の出来を味わいたかった為使わなかった。

まどろみの中龍真は1日を振り返り1つ結論が出ると眠気に誘われ意識を落として行った。



(…魔物と暮らしてる筈なのに、普通に人間らしい生活してるな…)






読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。



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