溶かされていく緊張感
個室の微灯の中、蓮は張り詰めていた緊張の糸が、指先からほどけていくのを感じていた。
一昼夜、張り詰めた緊張感の中で安全を守り続けた身体は、自分が思っている以上に軋んでいる。アミの白く細い指先が、蓮の強張った肌を優しく滑り、凝り固まった輪郭をなぞるように触れていく。その絶対的な肯定感に満ちた愛撫に、蓮の思考は次第に白く染まっていった。
「蓮さん、お疲れ様。今日も駅のお仕事、すごく頑張ったんだね。身体、こんなに熱いよ……」
アミの吐息が耳元をかすめ、甘い香りが鼻腔をくすぐる。彼女の手のひらがもたらす、容赦のない、けれどどこまでも優しい刺激が、蓮の理性の境界線をじわじわと溶かしていく。
(ああ、もうダメだ――)
限界は唐突に訪れた。アミの巧みな指の動きに導かれるまま、蓮の身体の奥底から、せき止められていた熱い塊が一気に突き上げる。
視界がフラッシュバックするように、一瞬だけ真っ白に弾けた。
「……っ」
声にならない吐息を漏らし、蓮はアミの腕の中で小さく身を震わせ、すべてを吐き出した。
体中の力が抜け、押し寄せる圧倒的な解放感の波に揺られながら、蓮は深く息を吐き出す。シーツに沈み込むような心地よさの中で、彼の胸を満たしたのは、極上の快感と、それと同じくらい深い「切なさ」だった。
アミは優しく微笑みながら、蓮の額に張り付いた髪をそっと指で払う。
「お疲れ様、蓮さん。よく頑張ったね」
そのプロフェッショナルで、完璧な優しさ。
だからこそ、蓮は行為のあとの静寂の中で、またしても自分を冷酷な現実に引き戻してしまうのだった。
(こんなに凄い快感をくれるアミが、僕個人に惹かれるわけがない。これは彼女の『技術』で、僕はただ、お金を払って救われているだけの、大勢いる客の一人に過ぎないんだ……)




