ベッドルームの真実
アパートのバスルームで温かいお湯に包まれ、お互いの疲れと愛を確かめ合った二人は、そのまま濡れた身体をバスタオルで包み、ベッドルーム(寝室)へと場所を移します。
かつてお店のベッドルームを支配していた「客とキャストの虚無感」はもうそこにはありません。お互いがお仕事を一生懸命に生きているからこそ、この静かな寝室での交わりは、より深く、生々しく、そしてどこまでも甘く二人の心を満たしていきます。
あの「タンパク質」のレトリックを交えて、本物の愛で結ばれた二人の濃厚な夜を執筆しました。
バスルームのシャワーの音が遠ざかり、小さなアパートの寝室には、二人の遮るもののない吐息だけが残された。
微灯の薄暗い光が、シーツの上に横たわる二人の肌を優しく浮かび上がらせる。蓮が手を伸ばすと、亜美は待っていたようにその胸に滑り込んできた。メイクを落としたすっぴんの肌、いつもの柔軟剤の香り。それはお店の「アミ」がまとっていた artificial(人工的)な甘さではなく、蓮が心から愛した長谷川亜美という一人の女性の、ありのままの体温だった。
「蓮さん……もっと、ぎゅってして……」
亜美の細い指先が、蓮の首筋に絡みつく。蓮が一昼夜交代勤務の仮眠室でいつも感じていたあの冷たい孤独は、彼女の柔らかな肌が密着した瞬間に、完全に消えてなくなった。
亜美はゆっくりと蓮の体に乗り、その長い髪が蓮の鎖骨のあたりをくすぐる。お互いにお仕事でクタクタのはずなのに、触れ合う場所から火がつくように、新たな熱が二人の身体の奥底から突き上げてくる。亜美の不器用で、けれど一途な愛撫が、蓮の最も敏感な部分を捉え、じわじわと理性を溶かしていく。
「あ……っ、亜美ちゃん……」
蓮の喉から、低く掠れた歓喜の息が漏れた。
お店のベッドではいつも「これはビジネスだ」と自分にブレーキをかけていた亜美だったが、今は違う。目の前にいるのは、自分のすべてを愛してくれている恋人だ。
蓮は亜美の細い腰をしっかりと掴み、彼女の身体を自分の熱へと導いた。亜美が小さく、愛おしそうな声を上げて蓮を迎え入れる。部屋の隅にある小さな時計が刻む規則正しい秒針の音さえも、二人の激しいピストンと、肌が擦れ合う生々しい音のなかに掻き消されていった。
「蓮さん、すごい……私、蓮さんので奥まで、いっぱいに、なってる……っ」
耳元で本名を呼ばれるたび、蓮の快感は限界を超えて跳ね上がった。頭の中が真っ白な光で満たされ、一瞬、時間の感覚すら失われる。亜美の温かい身体のいちばん深いところにすべてを捧げるように、蓮の生命の源である熱いタンパク質が、激しい奔流となって、何度も、何度も、彼女の奥深くへと解き放たれた。
「――っ、はぁ、はぁ……」
静まり返ったベッドルームに、重なり合う荒い呼吸の音だけが響く。
すべてを出し尽くした脱力感の中で、蓮は亜美を横から強く抱きしめ、その濡れた額に優しくキスをした。亜美は蓮の胸に顔を埋め、彼の心臓の音を聞きながら、その背中を愛おしそうに何度もなぞっている。
(この温もりは、僕だけのものだ。お金を払ったからじゃない。僕が僕だから、彼女はここにいてくれるんだ……)
お互いのお仕事への誇りと、それを支え合う本当の愛。その確かな絆を感じながら、二人は深い幸福感に包まれて、静かに眠りへと落ちていくのだった。
お店の時とは全く違う、お互いの存在そのものを全肯定し合うベッドルームの決定版シーンとなりました。
この至福の夜を終え、列車はまた次の日常へと向かいます。お仕事を頑張る二人に、次はどのようなドラマを起こしましょうか?




