王宮からの招待
翌日、午前中にエドガーから手紙が届いた。
『昨日のパーティーで君の話をしたら、第二王子殿下が会いたいと仰ってるんだ。午後、迎えに行くから一緒に王宮へ行こう』
「えええ! 王宮へ? 大変ですわ!」
メラニーがかなり慌てふためいている。
「ドレスは……ああ、ドレープが豪華なブルーのにしましょう。奥様にティアラをお借りしないと!」
「待って待って、メラニー。それじゃあ舞踏会のいでたちだわ。名目はお茶の誘いなんだから、アフタヌーンドレスでいいのよ」
「あっ、そ、そうですね。すみません、私ったら……」
興奮しているメラニーをよそに、私は落ち着いていた。
「アイリス様、緊張なさらないんですか?」
「そうねえ。慣れ親しんだ場所だし今さら……」
「えっ? アイリス様、王宮は初めてですよね」
しまった、つい。
「も、もちろん初めてよ。でもほら、お父様はよく行ってらっしゃるから、話をよく聞いているのよ」
「そういうもんですか? 私ならもう緊張でガチガチになっちゃいますよ」
ふう、危ない。それからメラニーに指示を出し、
露出の少ない若草色のドレスに身を包んでエドガーを待った。
「アイリス! 急で済まない。昨晩、騎士団長と話をされた殿下がどうしても君に会いたいと仰るのでね」
昨夜の騎士の服装ではなく、今日は王宮を訪問するための正装をしているエドガー。紺の上着に金色の飾緒がよく似合ってとても美しい。
「別に私は構わないわ、エドガー。でもどうしてアンドリュー殿下は私なんかに会いたいのかしら」
「私が君の励ましで勇敢に戦うことができたと言ったから、君にも直接感謝の言葉を掛けたいんだそうだ。これはもの凄く名誉なことだよ。団長クラスにならないと、王族の方とお話などできないのだから」
「良かったわ、エドガー。これでますますあなたの株は上がるわね」
「違うよ、アイリス。君が素晴らしい女性だからだよ。泣き虫で引っ込み思案だった私を励まして、君は自信を持たせてくれたね。あなたは素敵だ、といつも言ってくれた。だから私は、君の期待に応えたくていろんなことを頑張ってきたんだ」
「エドガー……」
見つめ合っているうちに馬車は王宮の門に着いた。
「エドガー。もしかして緊張してる?」
「うん。初めて王宮でアイリスをエスコートするんだもの」
「じゃあ、慣れるために先に手を繋いでおきましょ」
エドガーの手を取ると、彼はまた真っ赤になったが今度は手を離そうとはせず、もう一方の手を重ねてきた。
「そうだね。君と結婚したら、四六時中こうして手を繋いでいたいな」
エドガー、こんなことも言えるようになったの⁈ 美しいサファイアの瞳でそんなことを語りかけられると、ドキドキしてしまう。七十も歳下の相手なのに!
(ああ、私、ちゃんと恋をしているのね……)
こんなにときめいているのに結婚するまでは清らかな関係でいなければならないもどかしさ。でもそれもスパイスとなって、ますます結婚が待ち遠しくなる。




