表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世は大聖女でした。今世は普通の令嬢として、泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!  作者:
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/63

二人のエドガー

 そろそろ夕刻になろうとしていた。どんよりした空がさらに暗くなり、まるで押し潰されそうに重たく不気味な雰囲気に包まれていた。トラル山のふもとに着いた私はその全貌を伺っていた。


 あまり高い山ではない。こんもりとした形で、草木が生えていたらピクニックにはちょうどいい山だろう。しかし、土砂崩れでもあったのか、山裾には流れ落ちた木と大量の土砂が折り重なっていた。そして山肌はゴツゴツとして固い岩だらけだ。


(とても観光向けとは言い難いわね)


 私は登山道らしきものを歩いて登り始めた。しばらく歩いているうちに、何か違和感を感じる。


(何だろう、この山……普通と違う……)


 やがて頂上に出た。見渡す限り岩だらけで、これが最近まで緑に覆われていたとはとても思えなかった。じっと見つめているうちに、違和感の正体に気付く。とてもゆっくりとだが、岩が上下しているのだ。一定のリズムで……まるで、呼吸しているかのように。


(まさか、この山は)


 この山は生きている。そう直感した私は弓を取り出して矢をつがえた。辺りを見回して一番大きな岩の裂け目を狙い、「浄化せよ(プリフィカーレ)」と言って矢を放った。


 矢は白い光を放ちながら裂け目に吸い込まれていった。するとその裂け目がまばゆく光り出し、岩の一部が溶けていった。そして。


「――エドガー!!」


 岩の中に身体が半分埋まった状態で目を閉じうなだれているエドガーがいた。


「エドガー! エドガー!」


 私は老婆の声のままだったことに気付き、ローブを脱ぎ捨ててエドガーに駆け寄った。首を触り脈を確かめる。


(生きてる。まだ、生きてる。でもひどく体温が低い)


 なぜこんな所に埋まっているのだろうか? いや、埋まっているというより岩の一部になっていると言った方が近いだろう。手や足を覆う岩は、見る間にまた範囲を広げてもう一度エドガーを飲み込もうとしている。


 私はエドガーのまわりの岩に向かって何本も矢を放った。その度に岩が浄化され溶けていき、ようやくエドガーの身体が岩から離れた。


「エドガー!」


 意識のないまま倒れてきたエドガーの身体を支え、抱き締める。


「しっかりして、エドガー!」


 身体が冷た過ぎるので、さっき脱いだローブで身体を包んだ。


「どうしてこんなところに……」


「何やってるのさ」


 背後から掛けられた声に、私はサッと振り向く。そこには、エドガーがいた。いや、今私の腕の中にいるエドガーと同じ顔をした()()が。


「姿が見えないけど、その声はアイリスだね? 駄目だよ、僕のエドガーを持って行っては」


 私は魔法を解き、姿を現した。


「あなたは、誰なの。エドガーの姿をしたあなたは――ディザストロなの?」


 彼は綺麗に口角を上げ、冷たい微笑みを作る。


災厄(ディザストロ)、ね……君たちが勝手に僕のことをそう呼んでいるだけだろう」


(やっぱり、これはディザストロだ。何故人間の姿なの? どうしてエドガーを捕らえていたの?)


「君ら人間は、いつも僕の生んだ魔獣を殺してしまうよね。僕の子供である魔獣たちをさ。だから今回の目覚めで、僕の邪魔ばかりする人間も妖精も全て殺してしまおうと思ってね」


 そう言って恐ろしく冷たい目をした。エドガーと同じ顔なのに、中身が違うだけでこんなにも与える印象が違う。


「ただ、魔獣には知能がない。小さい奴らはもちろん、上位種のドラーゴだって頭の中は空っぽだ。効率的な戦いなんてできやしない。本能のまま、動く相手を攻撃するだけ。だから僕は知能が欲しかった。今度こそ世界を僕らのものにするために」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ