表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

■第8話「設計の外側」

 どれだけ精密な設計でも。


 必ず、前提がある。


 この条件ならこう動く。

 この入力ならこの結果になる。


 すべては、前提の上に成り立っている。


 だから。


 その前提の外側に出た瞬間。


 設計は、意味を失う。



 久我玲司は、モニターを見つめていた。


 異常は、収まらない。


 修正しても。


 調整しても。


 必ず、どこかでズレが発生する。


「……人間」


 小さく呟く。


 原因は、明確だった。


 だが。


「制御できない」


 それが問題だった。


 人間は、予測できる。


 だが。


 完全には制御できない。


 そして今。


 その“制御できない部分”が、拡大している。



 別の画面。


 アルゴリズムの構造。


 すべてが、整っている。


 完璧だ。


 だが。


「意味がない」


 入力が変われば。


 結果も変わる。


 そして、その入力は。


「人間が決める」



 雨宮澪は、静かに歩いていた。


 スマートフォンは持っていない。


 何も見ない。


 ただ。


 人と話す。


「最近さ」


 軽く声をかける。


「ちょっと変じゃない?」


 それだけでいい。


 説明はいらない。


 証拠もいらない。


 ただ。


 “違和感”を共有する。


 それだけで。


 十分だった。



 白鷺悠真は、静かに言葉を選んでいた。


「正しいかどうかは、重要ではありません」


 目の前の相手に言う。


「違和感があるかどうか」


 それだけ。


 相手は黙る。


 そして。


「……あります」


 小さく答える。


「それでいい」


 悠真は微笑む。



 黒鉄蓮は、静かに動いていた。


 目立たない。


 記録されない。


 だが。


 確実に、人と接触する。


 言葉を残す。


 印象を残す。


 それは情報ではない。


 記録されない。


 だから。


 消せない。



 如月玲は、レギオン本部で呟いた。


「……これ」


 モニターを見る。


 数値は、崩れている。


 だが。


 それ以上に。


「入力が変わってる」


 人の行動。


 選択。


 反応。


 すべてが。


 これまでとは違う。


「アルゴリズムの問題じゃない」


 氷室が頷く。


「前提が崩れている」


 神崎が言う。


「人の認識が変わっています」


 堂島が言う。


「つまり?」


 鷹宮が静かに答える。


「もう、制御できない」



 神代昴は、静かにその全てを見ていた。


「終わりだな」


 小さく呟く。


 すべてが、予定通り。


 いや。


 それ以上に、綺麗に収まっている。


「情報を支配する者は」


 窓の外を見る。


「情報に依存する」


 だが。


「その情報が意味を失えば」


 それで終わる。



 時任紗那は、ログを更新する。


「設計外、確認」


 入力する。


 成功率が、ほぼ確定する。


「勝利条件、達成」



 久我玲司は、静かに立っていた。


 画面は、まだ動いている。


 システムも、機能している。


 だが。


「……意味がない」


 小さく呟く。


 すべてが、正常。


 だが。


 結果が、正常ではない。


 人が、動かない。


 予測通りに。


 選択しない。


「……」


 目を閉じる。


 考える。


 そして。


 理解する。



 自分は。


 情報を支配していた。


 だが。


 人間を支配していたわけではない。



 その違いが。


 すべてだった。



 目を開ける。


 画面を見る。


 そして。


「……負けか」


 静かに呟く。



 だが。


 その顔には。


 わずかに。


 笑みが浮かんでいた。



 設計は、完璧だった。


 だが。


 その外側が、存在していた。



 それが。


 この戦いの結末だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ