11. ちょうさ の いらい
よろしくお願いします。
僕達とアークさん達が一緒に行動する機会は、思いの外早く訪れた。
それは僕達が、3級のギルド証を受け取ってから数日後のこと。
ここドーヴから東、ラサギという町へ向かう道の途中、町から歩いて1日程の地点で、行商人の荷馬車が何者かに襲われたとの報告が冒険者ギルドに入ってきたのだ。
発見したのはその道を通った乗り合い馬車。
彼らがドーヴへと向かう途中、道路の脇に大破した荷馬車が放置されているのを見つけた。
呼びかけてみたけど返答は無く、馬車の護衛が荷馬車の中を確認したところ、生存者の姿どころか死体も無し。
車体には明らかに何者かにより破壊された痕が見受けられたことから、襲撃を受けたと判断。
大急ぎでその場を離れ、ドーヴに到着すると同時にギルドに通報したという経緯だった。
破壊された荷馬車には矢が突き刺さっていたという目撃証言から、襲撃を行ったのは盗賊か、もしくはゴブリンやオークのような人型の魔物と考えられる。
冒険者ギルドは警備隊と話し合いの上で、直ちに現地調査の依頼を貼り出した。
ところがちょうどその時のギルドでは、こうした事態に対応出来る4級以上の冒険者の多くが、先日のドーヴとホウロ間で起きた異常の調査で出払っている状態。
もう数日もすればある程度の数が戻ってくる予定だったとはいえ、事は早めの対応が望まれる。
誰か出てくれる者はいないかと探していたところでギルドの目に留まったのが、3級冒険者でちょうど駆除依頼から帰って来たところだったアークさんと、同じく3級でここ数日何をするでもなくふらふらしていた僕達だったというわけだ。
その日の朝、いつものように宿の庭で軽く基礎練習をしてからギルドを覗きに行った僕達。
入口から中に入って、依頼の掲示板を見ようとしたところに受付から声がかかった。
「あ、コタロウさん皆さん!すみませんちょっと良いですか?」
「?」
呼ばれたので受付に足を向けてみると、声をかけてきたのはソランさん。
彼女のカウンターの前には、先日話題になったアークさんが立ってこちらを見ている。
「おはようございますソランさん、アークさん。今日は何かありました?」
「おはようございます皆さん。実は3級冒険者である皆さんに、是非お願いしたい依頼がありまして」
「おはよう。ちょうど良いところに来てくれたね。ちょっとこれを見てくれないか」
ソランさんとアークさんが示す、カウンターの上に出された依頼状を僕達3人で覗き込む。
そこに書かれていたのは前述の荷馬車襲撃事件の概要と、襲撃者の調査及び可能であれば捕縛もしくは殲滅という依頼内容だった。
依頼者はドーヴ市及び冒険者ギルドで、期間は受注から10日以内にギルドに結果報告。
報酬は参加者1人につき金貨1枚。
調査のみで終わった場合は、持ち帰った情報の質に応じて上乗せあり。
襲撃者の捕縛もしくは殲滅まで完了した場合は、追加報酬で1人につき金貨がもう2枚。
これも倒した相手や規模によって増額あり。
「おぉ~これまでの採集や駆除依頼と比べると破格の報酬額」
「ほう……」
「高ランクに向けて出される依頼ってこういうものだよ。私も最初は驚いたもの」
感嘆の声を上げる僕とアリサに、ユーナが教えてくれる。
そんな僕達を笑顔で見ていたソランさんが声をかけてきた。
「いかがでしょうか?先日のドーヴとホウロ間の件もあって、出来るだけ至急に解決をとの要望なんです。場合によってはこちらの道も封鎖なんてことになりかねませんし。報酬は人数分出ますので、是非アークさんと皆さんで受けていただけないかと」
ソランさんの言葉に、顔を見合わせる僕達。
アークさんを見ると頷きを返してくる。
僕達と組んでの行動に異存はないらしい。
僕達としても特に急ぎの用事があるわけでもなし。依頼の受注に問題はない。
調査だけでも報酬は出るので、例えば手に負えない奴がいて逃げてきたなんて場合でも、依頼失敗という扱いにはならない。
依頼遂行の間町を出ることについては、ソランさんに確認したらそれくらいは問題無いとのこと。
僕はアリサとユーナと頷いて、ソランさんに向き直った。
「この依頼お受けします。アークさん、今回はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
「お受けいただきありがとうございます!皆さん4名で受注ということで手続きしておきますね。それでは、お気をつけ――」
「その前になんですけど、被害に遭った荷馬車の発見者の人に話って聞けますか?荷馬車の破損の様子や荷物の荒らされ具合とか聞きたいんですけど。それから被害場所周辺の地図とかあれば貸してほしいです。無ければ誰かその辺りのこと詳しい人紹介してもらえませんか?周りの地形とか、特に洞窟とか建物跡とか襲撃者の拠点になりそうな場所が無いかどうか。あとは過去にその近辺であったこと、わかる範囲で良いので調べてもらえます?特に昔あった集落等が無くなった話とか、以前に似たような事件がなかったかとか。他には壊れた荷馬車とか中の荷物ってどうしたらいいですかね?マジックバッグ持ってるんで、もしかしたら持ってこれるかも。え~とそれから……」
毎度のごとく矢継ぎ早に質問を始める僕に、目を丸くするソランさんとアークさん。
そして僕の後ろではアリサとユーナが「こういうやつなので……」「悪いけど、教えてあげてくれる?」とすまなさそうにしていた。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




