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4. ぎるますへ の ほうこく

よろしくお願いします。

冒険者ギルドドーヴ支部のキサイギルドマスターに連れられて、彼女の執務室に通された僕達。


来客用の、見た目は簡素ながらも質の良い素材を使っているらしい長椅子に3人並んで腰かけ、対面にギルドマスターが座る。



「さて、それではこの度の1級と2級の魔物、出現と討伐の経緯について教えてもらえるかしら。それからあなた達はパーティということでいいのよね?パーティ名は無い?」


ギルドマスターに促されて、僕達は夫婦でありパーティ、パーティ名などは特に無いことと、この町に来る途中の山道であったことを彼女に話す。


ドーヴに向かう途中、道の途中で乗っていた魔獣車を引いていたコクルージアンが、急に前に進もうとしなくなったこと。


原因確認のため3級冒険者のガンユさんと前方を調査に行ったら、小型の魔物の群れに遭遇したこと。


なんとかしのいでドーヴの冒険者パーティ『斬羽ガラス』と出会ったと思ったら、森の中から突然タイタニックアダーが現れ交戦となったこと。


その際に『斬羽ガラス』のキョウさんが死亡したこと。


苦戦していたら更にそこにブラッドレクスが現れて、タイタニックアダーを食い殺してしまったこと。


他の冒険者と魔獣車を逃がし、僕達3人一生懸命頑張ってなんとかかんとかブラッドレクスを倒せたこと。


そのまま放置していくのもどうかだったので、マジックバッグに詰めて持って来たこと。


出現の原因については、先日ホウロの近辺で地震があったので、それが何か関係してるんではないかと思われること。




メモを取りながら聞いていたギルドマスターは、僕達の話が終わると軽く息を吐いて、


「それで、結局のところブラッドレクスを倒したのは……」


彼女がそこまで言ったところで、アリサとユーナが同時に無言で僕を指差した。


「……いや違うよね!?3人で勝ったんだよね!?1人でも欠けてたら僕達勝てなかったよね!?」


「そう言われても……」


「なあ?」


と、ユーナとアリサは顔を見合わせる。


「何かあった時に備えて罠張ろうって言ったのキミだし」


「その罠を使って奴を仕留めようという作戦を立てたのもお前だし」


「最終的に止めを刺したのだってキミの、あの変なビンだよね」


た……確かにそうだけど、いやでも!


「そ、そうかもしれないけど、だけど2人がいなかったら、僕だけじゃあんな状況……」


2人に上手い反論が出来ずにあたふたしている僕を見て、ギルドマスターはため息をひとつ。



「わかりました。討伐について確認したいことは以上です。それで今後なんだけど、今回持ち込みの2頭、素材に関しては全て冒険者ギルドで買い上げます。それで問題は無いわね?」


「魔石などはいいんですが、あいつらの素材で装備品作りたいと思ってて……」


「どこの部分で何を作りたいのかをこの紙に記入して。職人などはギルドで信頼出来る者を手配します」


そう言ってギルドマスターから紙とペンを渡される。


有無を言わせない感じではあるけど、でも職人を手配してもらえるというのは正直ありがたい。



僕達が3人して、ああでもないこうでもないと相談しながら書き込んでいるとギルドマスターから、


「書きながらで良いんだけど、あなた達から他に何か要望や質問はある?」


1度顔を見合わせる僕達。


どうするかはここに来る途中で話し合ってきてはいるので、それぞれの希望を言ってみる。


「まずは、この件については出来るだけ大事にはしないでいただきたいのですが」


「それは問題無いわ……というより、今はまだ大事に出来ないのよね」


アリサの希望に頷くギルドマスター。



考えてみればそもそも当然の話。


1頭で都市1つ落とせるような魔物が、こんな大都市の近くに現れるというのは大変なことだ。


ギルドマスターの話ではこの件については既に箝口令を敷いており、早急に警備隊及びホウロのギルドと連携の上、冒険者に依頼を出して森の調査を行う予定とのこと。


当事者である僕達も調査に加わってほしいと言われたけど、「今すぐは無理です」と断った。


なにせ今はアリサの剣は折れてるし、僕の火炎瓶はすっからかん。


無事な装備も手入れしなきゃいけないし、ユーナの矢の補充も必要だ。


ギルドマスターにその話をして、何をするにも最低1ヶ月程度は時間がほしいと伝えると、特に問題はないようで了承してくれた。



続いてユーナが口を開く。


「あの、これで私達のランクってどうなりますか?」


「それについてなのだけれど、まずはコタロウとアリサ、あなた達は私の権限で3級に昇級。それからユーナについては直ちに本部へ報告を上げて2級以上への昇級を具申します。1級はわからないけど、2級なら問題なく通るでしょう」


「えぇ!?」



なんと一気に飛び級でランクアップ。


ユーナに至っては一流冒険者の仲間入りだ。


3級は手続きやら何やらで、ギルド証の作成に1週間程かかる。


一方で2級はギルド本部の承認がいるので、急ぎの便で報告上げるのと同時に、申請書類作って手紙で送って向こうで審議して結果出たら返事をもらってとで、大体1~2ヵ月程かかるのだそう。


ギルド証が本人の手に渡った時点で昇級扱いとなり、それまでの間はこの町で待つことになる。


なので他の町へと移動はせず、ギルドにも居場所がわかるようにしておくように、とのことだった。



「そ、そんな……私が2級なんて……」と慌てるユーナに、ギルドマスターは冷静な口調で答える。


「1級モンスターを討伐したというのは、それだけ大変なことなの。本当であればあなた達全員1級へ昇格になっていてもおかしくありません。ただ今回については戦い方の関係もあって、この辺りが妥当だろうという判断をしました。これについては後でギルド内で話し合いをした上で、正式にギルド証を発行します」


戦い方ねえ。要は不意討ちに目眩ましに罠に嵌めての急所狙いと、真っ向勝負で1級モンスターを倒せたわけでは無い。


一方で実際に仕留めているのは事実なので、間を取ってこの辺りのランクにというところか。



「ランクについてはこれが決定事項です。異論は聞きません。他には?」


「それじゃ、売却金の一部でアリサにマジックバッグ売ってください。なるべく高性能なやつ」


「マジックバッグね。わかった、手配するわ」


これは前々から3人でほしいねと話をしていた案件。


今現在マジックバッグを持っているのは僕とユーナだけ。


今回も大型モンスター2頭を運べたこともあり容量的には問題はないと思うのだけど、彼女の私物の管理や今後のことを考えたら、アリサもマジックバッグを持っていた方が絶対に良い。


これまでの町では価格や性能的な問題で手に入れられなかったのだけど、首都であるこの町だったらきっと良いのがあるだろう。



「あとは……タイタニックアダーの売却額の3分の1ずつを、ガンユさんと『斬羽ガラス』の人達に支払ってほしいです。両方ともこの町を拠点にしてるはずなので」


「3級冒険者のガンユと『斬羽ガラス』パーティにタイタニックアダーの売却金を3分の1ずつね。それでいいの?けっこうな金額になると思うけど」


ギルドマスターの問いに僕は頷く。


これも来る途中3人で話し合って決めたこと。


ブラッドレクスはともかく、タイタニックアダーは彼等も戦ったわけだし、僕達が倒したわけじゃない。


それに『斬羽ガラス』はメンバーの1人を喪っている。


この後何かと物入りになるだろう。



そのことを伝えるとギルドマスターは了承してくれた。


「後はない?」


「あ、じゃあせっかくなので、この町でおすすめの武器屋と防具屋と壺屋と油屋と薬師ギルドと錬金術士ギルドの場所と、あと魚料理が美味しいお店を教えてください」


「……」


ギルドマスターは呆れ顔をしながらお店の場所を書いてくれた紙を差し出し、僕達の書いた作成希望装備品の一覧を受け取りながら告げる。


「それでは、話は以上です。さっき言ったギルド証の発行と魔物の解体と査定には大体1ヶ月程見込まれるので、それまではこの町に滞在するようにしてください」


「わかりました」



ギルド証の発行と素材の解体と査定と買取りに1ヶ月で、装備品の作成状況によってはそれ以上。


少し長めの滞在になるけど仕方ない。


特に急ぐ旅でもないのだし、ここはしばらくゆっくりするか。


大きな町だし、見て回れば何か面白いものもあるだろう。


僕達は挨拶をして立ち上がり、部屋の出口へと足を向けた。



「最後に1ついい?コタロウの着てる服ってシャドウタイガーの革よね?もしかしてそれもあなたが討伐したものだったりする?」


「あ、いやこれはもらいも「「そうです」」のおう!?」


「なるほど、シャドウタイガーの討伐実績もありと。それも3人で?」


「「いえ、彼1人での討伐です」」


「なぁおう!?」

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



この世界の郵便については、運輸ギルドの担当になります。

普通の便と急ぎ便については、馬で運ぶか魔獣で運ぶかの違いで、当然急ぎ便の方が高額です。

他には、冒険者ギルドに依頼する、知り合いの行商人に頼む、などの方法もあります。

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