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2. かいたい の いらい

よろしくお願いします。

ドーヴの町の冒険者ギルドは、僕達が泊まっている宿から歩いて20分程の所にある。


この世界の城や塔以外では珍しい3階建ての建物で、首都ドーヴの拠点に相応しい立派な支部だった。



そして僕達は今後の展開への恐れもあり、この立派な建物にはあまり相応しくないこそこそとした態度で入口のドアから中へ入る。


入口から入ってすぐに他のギルドと同じく大ホールがあり、その広さはコモテやホウロのギルドのホールなら2つか3つ入りそうなくらい。


並べられた席には数組の冒険者パーティが腰掛けていて、それぞれちらりと僕達に視線を向けてくる。


中には「ほお……」という少し感嘆したような表情で僕を見てくる人もいた。


何か気になるところでもあったのかな。



そして正面の奥には受付のカウンターがずらり。


中には閉まっている受付もあるけど、全部で10以上の窓口が並んでいる。


大きな町で人の数も多く、従って冒険者の数も多いんだろうから、受付もこれくらいの数が必要ということなんだろうか。


横を見ると、少し離れた先の壁にはこれまた大きな依頼の掲示板。


ここから見た限りでは、大体5分の1くらいが埋まっている感じ。


どんな依頼があるのか少し興味はあったのだけど見るのは後にして、まず僕達は一番近い受付に向かった。




「すみません~……」


少し気後れしながらも受付嬢さんに声をかけてみると、彼女から笑顔で元気の良い返事があった。


「いらっしゃいませ!依頼の受注ですか?」


「あ、いえ。一昨日ホウロの町からドーヴに到着したので、その報告で」


彼女は僕達が差し出したギルド証を素早く確認し、再び笑顔を向けてくれる。


「ユーナさん3級にコタロウさん6級、アリサさん7級の、3人パーティですね。ようこそ、ドーヴ支部へ!本日は何か依頼は受けられますか?」



ここからが今日の主目的。


誰か代わりに言ってくれないかなあと後ろの2人に目を向けるも小突かれるだけだったので、僕はおそるおそる受付嬢さんに話を切り出した。


「いえ……ええとですね。依頼は受けてないんですけど、ここに来る途中でちょっと大物モンスターの討伐に成功しましたもので、解体と素材の買取りをお願いできればなあと」


冒険者ギルドでは素材の買い取りの他に、倒した魔物の解体などもやってくれることがある。


対応は支部によって様々で、解体の職人が常駐していたり、そこらの暇そうな冒険者に依頼としてやってもらったり。


ドーヴみたいな大きな都市のギルドなら、多分専門の人がいるだろう。



「解体と買取りですね。解体は魔物が人くらいのサイズまでであれば素材買取り総額の1割、それ以上であれば2割を手数料としていただきますが構いませんか?」


アリサとユーナに確認すると2人共それでいいという回答だったので、僕はそれで解体を申し込むことにする。


「はい、承りました。えーと、解体する魔物は……外にでも?」


見た目手ぶらな僕達。荷車にでも積んで来てると思ったらしい。


「いえ、マジックバッグ持ってるので、それに入れてまるごと持って来てます。ただ何分やたらと大きいので、ここで全部出したら迷惑になりそうで」


「ああ、マジックバッグですか。道具の用意などもありますので、どういう魔物か少しだけ見せていただくことは出来ますか?」


受付嬢さんの言葉に僕は頷く。


さて、いよいよ本日のその時。



僕はマジックバッグからブラッドレクスの顔の一部だけ出して、受付嬢さんに見せた。


うわ、ちょっとだけでも出すと重っ……!


マジックバッグからつき出したティラノサウルスの鼻面を見て、たちまち受付嬢さんの顔が青ざめ冷や汗が流れ出す。


「あの……それは?」


「はあ、ブラッドレクスという……」


「勉強不足で申し訳ないのですが……これのランクとかってご存知ですか?」


「1級、って言われたかなあと……」


「分かりました。ただ今手配しますので少々お待ちください」


彼女は口元をひきつらせながらのにっこり笑顔で僕達に告げると、次の瞬間「ギルドマスター!ギルドマスター!!」と叫びながら奥に走って行ってしまった。



うん、これは完全に面倒なことになるね。


ブラッドレクスを再びマジックバッグに押し込み、嫌だなあ帰りたいなあと思いながらも僕達3人、5分程その場で待ってみたけど奥から誰かが出て来る様子などは無い。


ただ他のカウンターの受付嬢さん達からの視線が痛いだけ。


きっと皆奥で忙しくしているんだろう。


あまり皆さんの手を煩わせるのもどうかと思うし、ここは一度改めた方が良いかな?


うん、きっとその方が良い。



僕は振り返ってアリサとユーナに声をかけた。


「なんか立て込んでるみたいだし、ここは一旦出直そうか?」


それに対して2人は「またこいつは……」という呆れ顔で僕を見てくる。


いいじゃないか。これは日頃から奥で一生懸命働いているであろう職員さん達を考えてのことなんだ。


決して、この後起こるであろう面倒事から逃げようとしているわけではない。


そんな疑いの目で見られても断じてない。


ないったらない。



「お邪魔しました〜」


カウンターに置きっぱなしになっていた冒険者証を回収してアリサとユーナに押し付けて、奥に向かって一声かけたその途端、奥からわらわらと大量のギルド職員が飛び出してきた。


慌てて逃げようとするも僕達3人なすすべも無く取り押さえられ、ギルドの外に連行されることとなってしまったのだった。

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



今回コタロウ達が冒険者ギルドに入った際に注目してきた人がいたのは、コタロウの着ているシャドウタイガーのジャケットが理由です。

魔物としては見たことがなくても黒と銀の虎縞柄は高級品としても有名なので、イコールこれを手に入れられる実力もしくは財力がある人間と見られることになります。

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