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メインクーン・ダンス〜異世界しっぽ冒険記〜  作者: オー
ブライダル・パニック
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14. くらやみ の きき

よろしくお願いします。

そのオークは、これまで倒したオーク達とは様子が違っていた。


まず身体が他のオークよりも一回り程大きい。


それに身体の色も白みがかっているように見える。


もしかして……これが上位種なんだろうか。


なんで今外に出てきた?



上位種は何か様子を探るように周囲を見渡している。


まずい……これは、潜入していることがバレた?


これまでのオーク達は出来る限り声を出させないように仕留めたつもりではあったけど、騒いだのが聞こえたか、殺気に気づかれたか、それとも血の臭いでもしたのか。


何にせよ不審なものを感じて外に出てきたのには違いなさそうだ。


そこでふと、急に女性の泣き声が聞こえなくなったことを変に思われたのではないかと考え付いた僕は、後ろの女性達に小声で指示をする。


(泣き真似、泣き真似して!さっきみたいに泣き声出して!)


固唾を飲んで見ていた彼女達は突然の指示に驚いていたけど、年嵩の女性に促されて皆でか細い声ですすり泣きを始めた。



後はどうしよう。


上位種はまだ家に戻る様子はない。


ただ戦って倒すだけならともかく、今の状態で上位種に一言も声を出させずに仕留めるとなると厳しい。


今僕達がいる家も村長の家も広場に面しているので、この位置では忍び寄っての不意討ちが出来ないのだ。


上位種なら、普通のオークよりも腕が立つだろうし知恵もあるだろう。


仲間を呼ばれたらそこで最後。


周囲をオークに囲まれて自分だけ逃げるならともかく、女性達を守りながらというのは正直言って不可能。


何か手はないか……



様子を見ながら悩んでいる間にも、上位種は今僕達がいる建物に目を向け、様子を見にかこちらの方に歩いてくる。


最悪だ。


ここに敵がいると確信しているわけではないようだけど、これは……覚悟を決めるしかないかな……


なんとか上手く、部屋に入ってきたところを一撃で仕留められないか。



僕がそう考えて、手の中のククリを握り締めたその時だった。


上空で「ギャッ」という小さな悲鳴が上がり、続いて上位種の顔の上に何か黒いものが落ちてきた。


暗い中、目を凝らして見てみるとそれはコウモリ。


パニックでも起こしているのか、飛び上がることもせずにバタバタと上位種の顔にまとわりついている。


なんでいきなりコウモリなんかが落ちてきたのか。


ユーナが何かやってくれたのだろうか。



上位種は鬱陶しそうにバタついているコウモリを掴み捕り、不審そうに空を見上げる。


しかし結局、月明かりに照らされた夜空には何も見つけられなかった様で、もう1度こちらの方をちらりと見た後、捕まえたコウモリの頭を噛み千切りながら、出てきた家へと足を向けた。



助かった……


上位種が家に入って行き、少しの間オークに動きが無いのを確かめて、僕は黒布を被った女性達を連れて外に出る。


今度こそ集落からの脱出だ。


見張り台に向けて「脱出」の合図を送ったら、身を小さくして音を立てないように、でも出来る限り急いで集落の入口を目指す。


途中で見張り台から降りてきたユーナが、先程助けたもう1人の女性を連れて合流する。


彼女には先頭を任せて僕は最後尾に付く。


普段何事も無ければ住民達が日常的に行き来していた距離でも、今のような状況ではやたらと遠く感じる。


入口の少し手前、あと少しで脱出できるというあたりが気が緩んで1番危ない。


女性達は早く逃げたいのは分かるけど、急いてオーク達に気取られないよう注意を払いながら進む。


そしてそれが起こったのはその時、集落の入口にたどり着こうという、正にその時だった。




突然周囲が炎の色に明るく照らし出され、集落の建物の、明かりの付いている家の1つが大爆発を起こした。


続いて間髪入れず集落の四方で上がる鬨の声。


しまった、討伐隊の攻撃が始まった!


建物から慌てた様子で飛び出して来るオーク。


そしてそのオークに向かって矢が、火炎が浴びせかけられ、怯んだ敵に闇の中から現れた冒険者達が雄叫びを上げて斬りかかっていく。


燃え上がる家からは、全身を火に包まれたオークが転がり出てきて地面の上をのたうち回る。



「布から顔出して!後ろ見ないでそのまま走って!!」


オークに間違えられて撃たれたらいけないので、僕は女性達に顔を見せるように指示。


幸い討伐隊の攻撃は集落の中心へ向かっているので、僕達の方に流れ弾が飛んでくる気配は無い。


ユーナと一緒に、悲鳴を上げる彼女達を連れて集落の入口に向かって走る。


その入口には、武装した冒険者風の男性が1人で立っていた。


よく見ると彼はホウロの町のギルドマスター。


そういえば討伐隊に同行するって言ってたっけ。


彼らが乗ってきた馬車は、少し後方に並べてあるのが見える。



入口の守りを固めるように、ギルドマスターは仁王立ちでこちらを睨み付けている。


駆け寄ってくる僕達を認めて、その顔に驚きの表情が浮かぶ。


そんな彼に向かって僕達が走って行くと、その横からアリサが飛び出して「こっちだ!」と手を振った。


「おいお前ら!?」


「お邪魔しました!!」


見咎めてくるギルドマスターの横を駆け抜ける。


アリサの先導で討伐隊のものより、もう少し後方に隠してあった僕達の荷馬車へ。


救出してきた女性4人とユーナをまとめて荷台に押し上げて、御者台に飛び乗ったアリサの「行くぞ!!」という声と共に、僕達は夜の山道を逃げ出した。



走りながらちらと後方を見ると、激戦の続く集落の中、討伐隊の魔法使いが次々に建物に火を放っているのが遠目に見えた。

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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