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18. おれい の かばん

よろしくお願いします。

領都ラヌルに来てからもう半月。



魔王が人類に宣戦布告をかましてくるでも、ガラの悪い先輩冒険者に絡まれるでもなく、薬草と毒草と、そして魔物から魔石の採集を続ける日々。


実際採集に出て魔物に遭遇することはあるけど、どれも小物ばかりでそれほどの危険は無い。


ただ盗賊の噂は以前と比べて増えてきているようだ。


前にも言ったけどこのクレックス領は今景気が良い。


景気が良いということは、商人などの人が集まる。


人が集まるということは、同時に変なのも集まってくるということだ。


冒険者ギルドの依頼掲示板を眺めていると、盗賊討伐の依頼が日に日に増えていってるのがわかる。


まあ7級冒険者の僕は盗賊の討伐依頼なんてのは受けられないし、盗賊なんて基本領都みたいな大きな町の近くには現れない。


なので僕がいつも採集してるラヌルの近くの森は比較的安全で、盗賊だの強力な魔物だのと遭遇なんてことはまず無いと言っていい。


とはいえ世の中何が起こるかわからないので、一応警戒は怠らないようにはしてる。



何が起こるかわからないといえば、時間がある時などには冒険者ギルドの受付に頼んで、ギルドの規則などを読ませてもらったりもしてる。


支部の壁に貼ってある冒険者用に簡略化されたものではなくて原本というか、もっと細かく書いてあるやつ。


受付の人に珍しがられながら、辞書とはいかないまでもそこそこ分厚いのを渡された時はさすがにちょっとげんなりしたけど、まあ1回くらい目を通しておいてもいいだろう。


頭の隅にでも置いとけば、それこそ何かあった時役に立つかもしれないし。


中には支部を通して本部に意見を入れる手続きのやり方とか、意外な発見もあってちょっと面白くはあった。


本部に文書で連絡が届いてそこから確認して手続きしてで時間がかかるので、あんまりやる人はいないらしいけど。




そんなある日の朝(注文した武器がそろそろ出来上がる頃かなあ)なんて思いながら冒険者ギルドに顔を出すと、受付嬢さんが声をかけてきた。


「あ、コタロウさん!ちょっといいですか?」


「?」



呼ばれたのでカウンターまで行ってみると、受付嬢さんが笑顔で言った。


「おめでとうございます!コタロウさんは今日から6級にランクアップです!」


おお、ランクアップしたのか。


6級ってことはホーンラビットやブラッドラクーンの角とか毛皮とか、簡単な魔物相手の採集依頼なら受けられるようになるな。


「ありがとうございます。意外と早い気もしますが皆こんなものですか?」


「いえ、コタロウさんは早い方ですよ。大体皆さん順調に行って1ヶ月くらいかかりますから。コタロウさんは数をこなしていたのと、採取が丁寧だということでランクアップが決まりました。買い取りの方でも評判良いんですよ?それではギルド証を新しくしますので一旦お預かりします」


彼女はそう言って、僕の差し出したギルド証を受け取った。


僕は数こなしてる方だったのか。


1回に3件ぐらいずつまとめて受けてたからな。


「すぐに出来ますので少々お待ち下さいね。あ、それからコタロウさん宛に荷物が届いてますよ」


「荷物?」


「ロホスさんという方からです」


ああ、盗賊討伐の報酬か。


ちゃんと届けてくれたんだ。




僕は受付嬢さんが奥から出してきた荷物と、ついでに出来上がった6級のギルド証を受け取った。


早速ホールのテーブルに座って、ギルド証と荷物の確認。


ギルド証は、カードのこれまで7級と書いてあった箇所が6級に変わっただけ。


特に色が変わるとかはないんだな。


もっと高ランクになればまた違うんだろうか。



荷物の方は……はて?


ちょっとした小包ぐらいあるんだけど、約束の金貨2枚にしちゃ大きいような?


そう思いながら包みを開いてみると、あれ?これって……


「ぅええぇああ!?」と大声で叫びたくなるのを必死に飲み込む。


これ、見た目はちょっと小さめのショルダーバッグだけど、中が底の見えない黒い空間になってて……


これ……マジックバッグじゃないか!?


内部に空間魔法が仕込まれてて、見た目よりも遥かに大容量の荷物が入るってやつ!


こんなの1番下の等級のやつでも大金貨1枚はするぞ!?


え、なんで!?



小包には他には何も入ってなかったので、マジックバッグに手を入れてみたら、中から金貨2枚と手紙が出てきた。


手紙を読んでみるとそれはロホスさんからの物。


同封の金貨2枚は報酬で、マジックバッグは感謝の気持ちだとのこと。


回収した盗賊の略奪品の中に混ざっていた物で、等級も最下級で中に入れられるのも30kg程度みたいだけど、役に立つと思うのでぜひ使ってほしい、と書かれていた。




そっかぁ、嬉しいなあ。


これは袋の口より大きい物も入る上に、かさを取らないし重さも変わらないという、冒険者や旅をする人にとっては喉から手が出る程欲しいアイテムの1つ。


でもとても希少で高価だから、なかなか手に入らない物なんだ。


この中に入れた物は、時間の経過が外に出してる時よりも少し遅くなるんだっけか?


等級が上のになると、中の時間経過が半分とか、10分の1とか、流れないとかになるんだったか。


商人さんにとってもあると助かる物のはずなのに、僕にくれるとは。


いやありがたい、大事にしよう。


それからお礼も言わないと。


ああ、でもこんなのを僕みたいなルーキーが持ってるなんて、周りに知られたら狙われるかもしれないな。


なんか誤魔化す工夫を考えておこう。




とりあえずマジックバッグを肩に引っかけ、今日は依頼を受けるのは止めにして、まずは武器屋へ。


頼んでおいたククリ2本を受け取り、持っていた剣を売り払い(大した金額にはならなかった)、一緒に作っておいてくれた鞘と、あと手入れ道具とついでに多目的用として大型のナイフを1本買って店を出た。



ククリは後で試しに振ってみるとして、後せっかくマジックバッグが手に入ったことだし、以前からちょっとやってみたかったことが今なら出来そう。


そうと決まれば早速挑戦開始だ。


まずは壺屋、それから油屋。

お読みいただきありがとうございます。


また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。



コタロウが、マジックバッグは袋の口より大きな物も入ると言っていましたが、今回もらったマジックバッグは等級が低い物なので、袋の口よりも横幅のある物は入れられません。


これが等級の高い物になると、大きさ関係無しに入れられるようになります。


また、棒などの長いけど横幅を取らないような物であれば、問題無く入れられます。




それでは最後に、ハッピー・メリー・クリスマス!

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