19. わるだくみ の さくせい
よろしくお願いします。
僕はまず一旦町の外に出て、ククリの具合を試してみた。
20分程振って見たけどかなり良い感じ。
僕にとってはロングソードよりも遥かに使いやすい。
せっかく2本買ったんだし、どうせなら今後は二刀流も少しずつ練習するようにしていこう。
1対多数での戦いの際などでは、二刀流をやれば上手く立ち回れたりするだろうか。
町に戻った僕はまずはお礼を言うため、旅の途中で教えてもらったロホスさんのお店に行ってみた。
ところがあいにくロホスさん達は行商に出てしまっているみたいで、店の表戸は閉じられ人の気配は無い。
戸を叩いても返事が無く、中に誰もいない様だったので、紙にお礼の言葉を書いて戸の隙間から中に入れておいた。
次に壺屋と油屋とついでに雑貨屋で買い物を済ませ、大荷物を抱えて宿に戻る。
マジックバッグを持ってることは、今はまだ周囲にはあまり知られたくない。
なのでわざと全部担いで、道行く人に見られながらタンポポ亭までの道をえっちらおっちら歩く。
大汗かいて宿に着くと、おかみさんに驚かれながら部屋に上がって、後は暗くなるまでひたすら手作業を続けた。
まずはマジックバッグの肩掛け紐を外して、腰のベルトに着けるポーチに改造。
これなら常に身に付けてるから何かあれば気づきやすいし、装備としてもありふれた物なので気づかれ難いんじゃないかと思う。
何より邪魔にならず動きやすい。
後は人前で、迂闊に大きな物を出し入れしないよう気をつけることにする。
続いて買ってきた物で残りの作業をせっせとやっていたら終わる頃にはいい時間になっていたので、夕御飯食べて休むことにした。
何をやっていたのかというと、1つは毒薬の作成。
薬草のついでに採集してきた毒草や毒キノコなどを薬師ギルドのアドバイスを基に乾燥させておいて、すりつぶして粉末状にした物を小さめの皮袋に入れる。
粉末を吸い込んだりしたらえらいことになるので、そこは慎重に。
今の僕の武器はククリとボウガンだけど、世の中にはそんなもの通用しない相手がいくらでもいる。
冒険を続けていけば、いつかそういった敵に出会うこともあるかもしれない。
そうした相手にいざ遭遇してから慌てても遅い。
自分の手札は出来るだけ多くしておきたい。
これなら刀や矢に塗ってもいいし、罠にも使える。
気に入らない奴のコーヒーに混ぜるとか……冗談冗談。
薬も物によっては時間が経つと劣化して効果が無くなったりするけど、マジックバッグに入れとけば普通よりも長い時間、使用期限を持たせることが出来る。
ちなみに町中で毒薬なんてのは一般には売ってない。
専門店や薬師ギルドに行く必要があり、買うには薬師とか、薬を扱う仕事についていること、もしくは高ランク冒険者などであることを証明する必要がある。
当たり前といえば当たり前の話。
僕の場合は薬を買ったわけではなく、アドバイスをもらいに行っただけということで例外的に対応してくれた。
というより見逃してくれた。
もう1つは瓶。
500mlペットボトル大の酢瓶やら酒瓶やら油瓶やらで、作る時に形が歪んだりした失敗作を一山いくらで買ってきた物。
これに油屋で買って来た燃えやすい油を入れて、口にボロ布を詰める。
そう、いわゆる火炎ビン。
僕は自分で言うのもなんだけど動きの速さには自信がある。
その一方で、力ははっきり言って強くはない。
身体強化である程度はカバー出来るのだけど、それにしたって限界みたいなものはある。
そんな僕なので、何か破壊力のある攻撃手段がほしいと思っていたのだ。
前世のテレビで見た戦争映画でやってた、手で持って投げる爆弾みたいにして使えないかと考えて作ってみた。
当然あの爆弾程の威力は無いし、攻撃魔法の代わりというにもちょっと弱いけど、それでも火という攻撃手段を持てるのは大きいんじゃないだろうか。
マジックバッグに入れとけば持ち運びが楽だし、なによりぶつかって割れたり中身が漏れたりという心配が無い。
魔法の『種火』で着火も自由自在。
とりあえず12本程作ってマジックバッグに入れといた。
実は毒も火炎ビンも前々から考えてはいて毒草も集めてはいたんだけど、中身が漏れたらっていうのが怖くて手を出せなかったんだ。
マジックバッグならその心配は無い。
これで取れる戦術の幅も広がるな。
剣も新しくて良いのが出来たし。
そうなるとこの手作りボウガンも何か考えたいな。
もともとこれは狙って撃つというよりは、少し距離のある敵への牽制や、敵に一気に距離を詰められた場合、奇襲を受けた場合などの咄嗟の反撃手段として考えている。
だから森の中など戦闘が予想される場所に入る時や、こないだの盗賊退治みたいな作戦行動に移る時なんかは基本矢を装填した状態で携帯するし、毎日の抜き撃ちの練習は欠かさない。
もちろん危険で無茶な使い方をしてるってのは理解しているし、実際部品の劣化も早い。
ついでに素人の手作りなので、はっきりいってそんなに当たらない。
そこら辺をなんかこう、もっと良い感じに……
まあ、今はまだこれといって思いつかないし、これは追々考えていこう。
さて、この宿の予約もあと数日だから、そろそろ出発を考えようかな。
準備も始めなきゃ。
次はどこの町を目指そうか。
翌朝、僕はけたたましく鳴らされる鐘の音で飛び起きた。
乱打される鐘は非常事態の合図。
外からはおそらく衛兵さんの「住民は家の中に入れ!戸締まりをして1歩も外に出るな!」という大声が聞こえてくる。
一体何が起こったのか。
僕は急いで服を着て装備を身に付けた。
いつもはここで軽くボウガンの抜き撃ちの練習をするんだけど、今はそんな暇はなさそう。
外に飛び出した僕は、近くにいた衛兵さんを捕まえる。
「あの、何があったんですか?」
声をかけられた衛兵さんは、僕の姿を見ると慌てたように詰め寄ってきた。
「あんた、冒険者か!?」
「え、ええ……」
「今すぐ東門に行ってくれ!」
「いや、あの、何が……」
「いいから!早く!!」
切羽詰まった様子で方角を示されたので、とりあえず東門に向かってみることにする。
東門に着くと、そこも上を下への大騒ぎ。
とりあえずまた誰か捕まえて聞いてみるか。
あ、良い所に。
僕はちょうど責任者っぽい人が指示を出しているところを見つけたので、声をかけてみた。
「あの~、何が起きてるんですか?」
「……冒険者?冒険者か!?何級だ!?」
「え?6級ですけど……」
「6級!?なんで6級が来てるんだ!」
「いや、街にいた衛兵さんから、冒険者はここに行ってくれって言われて来たんですけど……何事ですか?」
頭を抱えていた責任者さんは気を取り直すように頭を振って、そして僕を見て言った。
「この町に、2級モンスターが向かって来てる……!」
お読みいただきありがとうございます。
また、評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。
今回コタロウが宿の部屋で行っている作業ですが、言うまでもなく大変危険な行為です。
まさか日常生活で毒物をいじる方はいらっしゃらないかとは思いますが、絶対に真似しないでください。
コタロウは薬師ギルドのアドバイスの下、窓を全開にして紙と布でマスクをする、自分と部屋に入念に『クリーン』の魔法で消毒と清掃をしながら毒物を扱う、などの対策を行った上で作業をしています。
また、毒については異世界の物であり、地球にある物とは異なる成分ということでご理解いただきたく、お願いいたします。




