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どうやらこの魔族とは話し合う必要があるようだ  作者: 森谷礼二
VS天界ランド
22/25

勝負開始

 メインテーマが決まった途端、他のコンテンツもトントン拍子で決まっていった。

 さながら百貨店のコスチュームセレクト館に隣接して、男女別に数百人が一度に使用できる更衣室や数万人分のロッカー、広大な化粧室、シャワールーム、さらには繁忙期のみ営業する有人の手荷物預かり所などが建てられる。


 また、それらの施設とは別に、別途料金で行われる『最新特殊メイクセンター』という名目の擬態魔法施行所も作られることになった。

 地階にはコスチュームの修理工場やクリーニング工場、魔力発電所などの施設や、資材倉庫やスタッフ待機所を含むバックヤードが予定されている。


 インフォメーション・センターのある多目的ゾーンを中心に、アトラクションやゲーム中心の若者対象ゾーン、各種ショーやキッズスペース中心の家族連れゾーン、メインステージのある全年齢対象ゾーンといったふうに、施設内の棲み分けも決めた。


 リリスのアイデアは、すべて名称を変更し、モンスターも実際には近づいてくるだけだったり、襲うフリをするだけだったり、ゲストがギリギリで助かったりするような安全なものに再構築された。

本物のモンスターを調教魔法で使用するのだから、実際にはものすごい迫力になるだろう。


 また、魔界から派遣されるスタッフのうち、案内役やアトラクションのキャストなどの接客系には、獣人族や耳長族の女の子が多数選ばれた。ケモミミ娘とエルフ娘、ベタベタだが、その分わかりやすい。


 キッズスペース近くの魔界ふれあい牧場には、ウサギ型やネコ型・子犬型などの小動物系の魔獣に調教魔法をかけて、子供たちとふれあってもらうことになっている。

 施設内の建物の外観や内装は、あえて魔界風に統一して雰囲気を出してもらうことになった。魔界の建築家たちも手間が省けて助かるそうだ。


 こうして図面や段取りも建築開始の大規模空間魔法使用前になんとか間に合い、設備に関しては目途がついた。

 他にもやらなければならないことはたくさんある。

 例えば宣伝や広告なども。



「やられました、サトル君」


 魔界ランド仮事務所で、電話を切った宣伝広告担当の二階堂先輩が意気消沈している。


「どうしました? 宣伝広告に何かトラブルが?」

「いや、それどころではなくて、広告代理店への依頼が全滅なのです。電●も博●堂も東●エージェンシーも、その他中小の代理店まで、天界からの圧力というか、実際には彼らの信者がらみの圧力を受けて、すべて魔界ランドの宣伝を断ってきたのです」


 二階堂先輩は頭を抱える。


「それって営業妨害で反則じゃないんですか?」

「いえそれが、魔界政府が抗議したのですが『営業の妨害は禁止となっているが、宣伝広告までは知らん。だいいち、一信者のやることまでいちいち管理できない』と天界側に突っぱねられたそうです」


 すでに勝負は始まっていたということか。


◇  ◇  ◇  ◇


「ふふふ、魔界のウジ虫の諸君、無駄なあがきをご苦労さん」


 勝負開始日、開園前のセレモニーの席で、見習い天使アルメルスが声をかけてきた。


「ずいぶん汚いマネをしてくれたな」

 僕はアルメルスを睨みつけながら言った。


「はて、何のことでしょうか」

 相変わらずくわえたバラをいちいち手に持ち替えながら、とぼけるアルメルス。


「なるほど、あなたが噂の悪質なキャッチセールスのアルメルスさんですか。初めまして、私がテーマパーク研究部部長、三年A組・二階堂清隆です。好きなアイルランドの川は『ボイン川』です」


「き、キャッチセールスではない! 妙な噂を流さないでくれたまえ!」


 コホンと咳払いをし、アルメルスは挑発を続ける。

「それにしてもなんですか、この魔界ランドの下品な外観は。おどろおどろしくて気味が悪い。まるで辺獄(リンボ)のようではないですか」

「ほっとけ」

 僕はめんどくさそうに返事してやった。


「それになんですか、入場料を取るなんてずいぶんとセコイですね」

 さらにネチネチと嫌味を言い続けるアルメルス。寂しがり屋かよ。


「信者をタダで働かせる天界ランドに、セコイなんて言われる筋合いはねえよ」

「ふふん、もう荷物をまとめて魔界に帰る準備をしておいたほうが、よろしいのではないですかな」


 すると二階堂先輩ほか三名の眼鏡が鋭く光る。(ただしほか三名はエアメガネ)


「ご心配にはおよびません。我々は勝負終了後にあなたに科する罰ゲームで、どうやってその減らず口を塞いでやろうかと協議していたところですよ」


「まずはわたくしの実家で使役している屈強なゴーレムたちの『(こぶし)のシャワー』を存分にお浴びいただき、そのユニークなお顔をさらにご変形いただいた上で、地面にキスしていただきますわ」


「その次はリリスが、全身の穴という穴にアロ●アルファをガッツリと流し込み、もう二度とウ●コもショ●ベンもできなくするという幻の必殺技、『エターナル・アルファ・ソリッド』をお見舞いしてやるっス!」


「リリス、せめてヤオイ穴ぐらいは残すのが、武士の情けというものですよ。その上で『ご自由にお使いください』と張り紙して、新●二丁目の公衆トイレに裸で縛り付けましょう」


 するとアルメルスは怯えたような表情で、

「くっ、あ、あとで吠え面をかきゃないように、せいぜいぎゃんびゃり(頑張り)たみゃえ!」

 と、裏返った声で捨て台詞を吐いて去って行った。

 どうやら負けた時のことを想像して、恐ろしくなったらしい。


 そんなわけで序盤の舌戦は魔界側の逆転勝利。

 しかし、セレモニーの客は、一部を除き天界側の招待客ばかりだ。


 天界ランドは、事前の大々的な宣伝広告もあって、入場門前には長蛇の列ができている。

天界ランドの内容は、入場料無料で世界中の宗教の秘宝をごっそりと集めて展示し、さながら世界宗教博覧会といったところだ。

 さらに場内は飲食まで無料で食べ放題・飲み放題の大盤振る舞いだった。

 また、天界ランドでは、不要なトラブル防止のため、各宗教・宗派への入信案内状の手渡しやグッズ販売程度までは行えるが、勧誘行為は一切禁止されているという。


 一方、ネットを使ったゲリラ的な宣伝ぐらいしかできなかった魔界ランド側は、ほんの少ししか開園待ちの客が並んでいない。その少ない行列も、天界ランドの行列を横目で見て、そっちに並び直そうか迷っているようにさえ見受けられる。

 もはやアイリスが元気なほどの惨状だった。


 この状況を見れば、見習い天使アルメルスがあんなに強気なのも無理はないだろう。


「ううっ、このままでは初日から随分と差をつけられそうっスけど、大丈夫なんっスかねぇ」

 リリスが心配そうにつぶやく。


「今は天界ランドのことや勝敗のことは気にせずに、魔界ランドに来ていただいたお客様を、全力で楽しませることだけを考えよう」


 僕の考えでは、勝負はまだまだこれからだ。



お読みいただき、ありがとうございます。

あと数話、ぜひお付き合いください。

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