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正論より感情論。



あたしの言葉に動じていない尊。

そう…さっき呼んだ名前は彼のものじゃないのに、全く驚いていない。

確信を感じ、思わず言葉を続ける。


「アレク様は尊の前世の記憶ってこと…?」


『無礼ですわよ、紗菜』と心の中でスザンナの声が響く。

アレク様がいる動揺でスザンナがまた話してくれるようになった。

殿下には無礼で悪かったけど、小さくガッツポーズをするあたし。


「前世…?記憶…?たける…?」


あたしの言葉を聞いてふっと意識をなくし、ベッドに倒れる尊。いや殿下。

いやもうどっちかわかんないけど!

とにかく駆け寄って様子を見に行く。

胸は一定のリズムで浮き沈みしている。よかった~。

ついでにおでこに触って確認してみたけど熱はないみたい。


ん?ていうか、なんで尊がアレク様?

まじまじと気を失っているこいつの顔を見る。

どっからどう見ても尊だよね~。


「う…………ん。」


目を閉じたまま、寝ぼけたような声を出した。

目を覚ましたみたい。


「大丈夫?」


声をかけると驚いてのけぞった。

あぁ、これは、尊じゃない。


「き…みは…、スザンナ………?」


かなり驚いた様子であたしをじっと見つめながら話し出す。


………え?

スザンナは腰まである淡い赤色の髪であたしとは全然違う…。

間違えようもないのにアレク様はなんであたしをスザンナと呼ぶの…?

混乱して返事もせず、ぐるぐる考えてると


「名乗りもせずに失礼した。

私はアレクシス=フォン=カイムヴァルト。

カイムヴァルト王国の王太子だ。

だが、今この体もとい、この人生は別の人間のもののようだ。違いないだろうか。」


さっきとは違って意識のはっきりしたアレク様は、

堂々たる態度と言葉であたしに話しかけてきた。

もう理解してる……

アレク様の賢さは作中にもたびたび登場する、目の前にいるのは本当に私の推しなのだと実感させた。


『紗菜!殿下に返事なさい!』

スザンナも突然のことに驚いているはずなのに、

身分が上の人からの言葉には即返答という冷静さがある。

あたしは怒られたことに驚いて慌てて返事をする。


「はい、そのとおりです。あなたは川向尊かわむかいたけるという人の体にいます。

殿下、アレク様はゲームのキャラクターです。」


『なんてことを…!ゲームなどと言わなくてよろしいのに!』

余計なことまで言ってしまったあたしを注意する。

推しを前に、急かされたから動転しちゃったんだよ!


「……ゲーム?ふむ…。」


そう口にすると一点を見つめぶつぶつと何かを言っている。

しばらくすると…


「この体の持ち主、尊殿に紗菜嬢がよく話していたゲームに存在しているということなのだな。

それよりも、スザンナそこにいるんだろう。」


さっきとは違い、はっきりとスザンナの名前を口にする。

そしてあたしが返事をする間もなく続ける。


「私には人の魂をオーラで感じられる天性の才がある。君がいる事は間違いないとわかっている。」


…あ、そういえば、そんな設定あったかも!

推しを前にウキウキしてて細かい設定なんて頭から抜けてた。



ーーーーーーーーー



『紗菜、私のことは黙っていてくださらない?』


 え?なんで?アレク様に会えて嬉しくないの?


心の中で聞こえるスザンナの声に、心の中で返事をする。


『私の処刑は…殿下自ら言い渡したのです。

私が紗菜の中にいるせいで冷たくされてしまうかもしれないわ…。』


 なんでそんなこと…。自分は冷たくされて当たり前みたいな言い方おかしいよ。


『いいえ…。私はやり方を間違えてしまいましたの。殿下の求める人間になれなかったのですから。』

当然ですわと続きそうな言い方をする。


 でも…今は王太子でも公爵令嬢でもない。

 そんな二人だったら…わからないよ…?

 隠す必要なんてないと思う。


『……。』

スザンナは何も言わなくなってしまった。


あたしはしっかりとアレク様を見つめる。

見た目は違っても推しだとわかる。だからウキウキはする。

でも…全然ドキドキしない。

だけどスザンナの心は違う。ずっと…ドキドキしてる。

あたしのわがまま押し付けてごめんね、でもやっぱりスザンナがいないなんてあたしには言えない。


「はい、スザンナはここにいます。」


胸に手を当てて答えると自然と柔らかい微笑みがこぼれていた。


「そうか、やはり。スザンナと話はできないか?」


冷たい声でそう言うアレク様。

それはあたしが夢中になってたアレク様の声じゃない。

そんな声で自分が処刑させた婚約者に何を言いたいの。

理解が出来ず、思わずべーっと舌を出したくなったのをぐっと堪えた。


「スザンナと直接話すことはできません。でも、アレク様の声はスザンナに届きます。」


そう、スザンナに聞こえてる。でもスザンナは何も言わない。

こんなに冷たい声なのに、どうして……。


「そうか。ではスザンナに告げる。

君の行為はなくなったわけではない。

同じ過ちを犯すようであれば、同じ運命を辿ることになる。

忘れぬよう、よく心に刻め。」


はっきりとあたしの目を見つめた視線は冷たく、背筋が凍るようだった。

声は低く、おなかの底まで響かせてくるような重さ。

そこにスザンナを想う感情は一切感じなかった。


………わざわざ言いたかったことがそれ?

あたしは怒りに手が震え、思わずアレク様の胸倉に掴みかかりそうになった。


その時


『紗菜、よいのです……!!』


あたしの動きを制止する様にスザンナの今までで一番強い感情を見せた声が聞こえる。

でもその声は震えていた…。

怒りじゃない…これは……悲しみ……。


『私は…愛されなかったのです。殿下の仰る通りです……仕方ありませんわ。』


スザンナは諦めてるだけ。

アレク様に愛されないことは自分のせいだからと。

悲しみを見ないふりしてるだけ。

本音じゃないのに無理して言葉にして強がってるのに。

それなのに……


「仕方ないなんてことあるわけない!!!」


あたしが突然大声を出したことにアレク様も、スザンナも目を丸くしている。

心の中で返事したつもりがつい口から出てた。


「お言葉ですが、一度過ちを犯したらもうやり直せないんですか?

あなたにそんな言葉を言われたスザンナの気持ち考えた事ありますか?

どれだけ冷たい声や冷たい目をしているかご存じですか?

ご自分の考えが全て正しいと思ってらっしゃるんですか?

ていうか?お言葉も何も、あなたもう殿下じゃないから処刑なんてできないし、

そもそもこの国は一人の権限で処刑することなんてできないし、

これ以上!スザンナ傷つけるのやめてくんない!?わかった!?」


気が付いたらあたしは、怒りが堰を切ったように溢れ出ていた。


推しにこんなこと言ってるのおかしいかもしれないけど、我慢できなかった。

スザンナにあんなこと言わせて、許せなかった。


あたしの言葉を聞いて、目を丸くしたまま口をぽかんと開けてるアレク様。


「体調も大丈夫なようなんで、帰ります。

二度と会いたくありません!!さようなら!」


と叫んで、ドアをバタンと閉める。

あぁ、すっきりした。

スザンナもぽかんとしながら『紗菜はすごいですわね…。』って言ってた。


 不敬ですわ、とかいわれるかと思った。


と返してにっと笑うと、


ケタケタ笑い出すスザンナ。


『淑女としてあるまじき行為をしてしまいましたわ。なんて恥ずかしい…』


って大笑いしたことを恥じてたけど、笑ったおかげでさっきまでの悲しい気持ちも吹き飛んだみたい。

スザンナが気にせずに笑いたいときに笑えるようになったらいいな…。




バタンッとしまった扉を見つめながら呆然としていると、

ドクンッドクンッーー

「なんだこれは……」

感じたことの無い激しい鼓動を感じ胸を抑えながら思わずつぶやく。



あたしたちが帰った後にそんなことをつぶやいてるアレク様のことなんて知る由もなかったーーー







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