表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/31

第21話 赤い月のディストピア④ 〜あの夜の記憶〜

 ――あの夜のこと、今、ハッキリと思い出した。


 

 深夜1時過ぎ。


「――明日も頑張りましょうね、タケナカさん! リアハゥイ」

 

「リア……え? おう、気をつけて。いろいろ聞いてくれてありがとな」


 

 コンビニの仕事を終えて、バイト仲間のソムナン君と別れた俺は、国道をトボトボ歩いてた。


 十二月の冷たい風が頬を刺し、店長にもらったコロッケが入ったコンビニ袋がスースー揺れてた。


 コロッケを静かに取り出して一口かじる。



 ――また怒られた。

 

 ――明日のシフト、だるいな。

 

 ――ソシャゲのデイリー忘れてた。


 頭の中はいつものモブな思考でいっぱいだった。



 俺が憧れる転生系主人公「レオン=アークブレイド」みたいに、クールで、誰にも臆さず、誰からも好かれるヒーローとは大違いだ。

 

「はぁ……ソムナン君はああやって励ましてくれたけど……こんなしょーもない人生、いつまで続くんだよ。異世界転生でもしねえかな……」

 


 そんなグチをポロッとこぼした瞬間――

 



 ドーン!


 

「うおっ!?」


 歩道に4トントラックが突っ込んできた!

 

 反射的にコロッケ投げ捨てて、横にドーンと飛び込む!


 

 ガシャーン!


 よし、華麗に回避!

 

 俺、運動神経だけはそこそこ――

 


 ブウォオオーーンッ!


 

「ちょ、マジ!?」


 

 目の前にタンクローリーが!

 

 何このコンボ!?

 俺の人生、こんなド派手な終わり方かよ!?


 


 でも――


 

 ――異世界転生、クル!?

 

 叫んだ瞬間、視界が真っ黒。

 


 夜空にコロッケがスローモーションで舞う――


 

 それが、最後に見た光景。


 

 

 ――俺は死んだ。



 ふわっと体が浮く感覚。

 


 目を開けると、キラキラ光る白い空間。

 

 雲みたいなフワフワの床に、光の粒子がチラチラ漂ってる。

 

「マ、マジで転生空間キタ!? やった!」


 ラノベ読みながらずっと妄想してた展開!

 ガチでキタ!

 

 テンション爆上がりでガッツポーズ。


 目の前にドーンと現れたのは―― 


 片手に杖を持ち、黄金の椅子にふんぞり返るオッサン。


 白いローブに金ピカの王冠、モサモサの白髭。


「ザ・神様」な貫禄あるけど、目がニヤニヤしてて、ちょっと詐欺師っぽい雰囲気も。

 


「ふむ、騒がしい若者よ。ワシは『ゼノス』。いわゆる『神』と呼ばれる存在。この次元の管理者じゃ」

 

「神様!? てことは、やっぱ転生確定!?」

 

 俺、興奮で前のめり。

 さっきの悲劇も吹っ飛んで、目ギラギラ。


 ゼノス、ニヤリと笑って髭をガシガシ撫でる。

 

「ホホ、落ち着け。コロッケかじりながらタンクローリーに轢かれし哀れな魂よ」

 

「うっ、コロッケは無罪だ! ……そんで、どんなチートスキルくれるんです? 無敵バリア? 魔法全マスター?」


「ホッホッホッ!」

 

 ゼノス、デカい声で笑う。

 椅子からズリ落ちそうになる。

 

「まあ、焦るな。実はお前には“特別な資質”がある。我が姪っ子、月の女神『イオネラ』が管理する世界を救うのにピッタリの力じゃ」

 

 おお、“資質”に“女神”!

 それっぽいワードがバンバン出てくる!


「じゃ、じゃあ俺、選ばれし者!?」

 

 ゼノス、ニヤケ顔で指パチン!

 

 空中にキラキラ光るスクリーンがポップアップ。


 俺のステータスだ!


 

【名前】竹仲タケル

【職業】勇者

【ステータス】

攻撃32、防御26、素早さ31

武力31、知略3、政治2、統率4


【スキル】

『シルバーフレイム』(古代魔法、竜属性特攻+100%、炎攻撃+50%)

『剣術S』

『主人公補正Lv.20』

 

 

「すげぇ……スキル『シルバーフレイム』!? スタイリッシュ系チート!?」


 ゼノス、椅子の背もたれにドカッと寄りかかる。

 

「ふむ。“シルバーフレイム”はな、イオネラ世界の古代勇者『タケルティオン』が『暗黒竜』を原始の世界へと封印した魔法――お前の魂に宿る力じゃ」


「お、俺、伝説の古代魔法使えるんすか!?」


「そうじゃ! イオネラの世界の1つが暗黒竜復活により壊滅。生き残った反乱軍も敗れ、闇に飲まれてしもうた。お前がその力で世界を救うのじゃ!」


「うおお! 主人公すぎる展開!」

 

 

 ――って、ちょっと待てよ!?

 

「そもそも何でフリーターの俺がそんなすげえ魔法を!?」


 ゼノス、一瞬キョドッて目を逸らす。

 

「……実はの、本来イオネラ世界の正勇者に継承されるはずが……転生課の新人職員が死亡者リスト見て『タケル=勇者』と勘違い。神々の世界もバタバタじゃったからのう……“凡ミス”じゃ!」

 

「は!? 理由ショボ! あと『滅びスタート』ってハードモードすぎません!? 神様の力でどうにかなんないんすか!?」

 

 俺、焦ってゼノスに詰め寄る。

 さすがにこれは上級者向けすぎるぞ!


 ゼノスは髭をいじりながら渋い顔でフムフムと頷く。

 

「確かに厳しい状況じゃ。神々のルールでワシらの直接介入は無理でな。できるとしたら世界そのものの『消去』じゃ。実際、評議会でもその話が出とる――」


「うわぁ……消去とか、えげつな……」


「じゃろ? イオネラはあの世界を愛しとるからのぉ……。そこでタケル! お前を百年前、暗黒竜が召喚される『五ヶ月前』に転生させる。それがワシにできる最大限の介入じゃ」

 

「タイムリープ!? かっけぇ! 過去で暗黒竜復活阻止して世界救うんすよね? ち、ちなみにその後……ハ、ハーレムって、イケます?」

 

 ゼノス、ニヤリと笑って指をピッと突きつける。

 

「ホホッ、正直じゃの! それはお前次第……じゃが、ステータスがぶっちゃけ微妙じゃ。だから転生時にワシが3倍に盛ってやる。感謝せい!」

 

「え、3倍!? あざます! あっ、あと……この『主人公補正』ってメタいスキル、何なんすか?」


「それはの、ワシの世界の転生者なら誰もが持つ力じゃ。“魂に宿る運命の炎”、世界の理を超え、“定められた物語を書き換える力”――それが『主人公補正』じゃ!」


「おお、さっぱり意味わかんないけど凄そう!」

 

「レベル20はまだその火種に過ぎんが、その信念と魂が燃え上がれば、“運命すらねじ伏せる”可能性を秘めとる。お前の情熱がその力をどこまで引き上げるか、ワシも楽しみじゃぞ!」

 

「俺、完全に主人公! これでモブ人生脱却だ!」

 

「よほど『主人公』に憧れとるんじゃのぉ。まるで25歳とは思えん。まあ、そのバカみたいな情熱、嫌いじゃないぞ。派手にやってこい!」

 

「あ、待って神様! 俺、あっちの世界で死んじゃったらどうなるの? 転生って1回キリ?」

 

 俺、急に不安になる。

 ゼノス、ニヤニヤがちょっと引きつって、咳払い。

 

「ふむ。ワシの世界では転生は“1回のみ”。死ねば終わりじゃ。ただ、運が良ければ、イオネラ世界のルールで転生できるかもしれん。あっちは“転生チャンス10回”じゃ」

 

「10回!? 鬼アツ! やり直しまくったらハーレムも余裕でイケそう!」


 俺、拳握って大ジャンプ!

 でもゼノスは渋い顔で手を振る。

 

「まあ、待て。あっちのルールはな、転生条件が“完全ランダム”。案内人ですら予見できん。“オーク姿”で転生とかもあるらしいぞ」

 

「完全ランダム!? オーク!? あ、ああ……それ微妙っすね……」

 

「ま、そもそも転生できる保証もない。死なないように頑張るんじゃ! ド派手にハッピーエンド掴んでこい!」

 

「OK、神様! 俺、世界守って、最強のハーレム主人公になる!」

 

 ゼノス、デカい笑い声で両手の親指をグッと立てる。

 

「ホッホッホッ! 可愛い姪っ子の愛する世界、よろしく頼んだぞ、タケル!」


 ゼノスが杖を振り上げると俺の体が光に包まれる。


 

「――あ、そうそう! 容姿はお前の“理想の姿”を想像するんじゃぞ〜!」


「えっ! そんな直前に!?」


 

 光がバチーンと弾ける。


 俺の意識はスーッと新世界へ――


 

 

 目を開けると異世界の森の中。


 とりあえず、剣の反射で顔面チェック。



 燃えるような真っ赤な髪に銀色に輝く瞳――


 こ、これ「レオン=アークブレイド」じゃん! 

 やった、理想通り!



「――敵襲だ!」


 む、遠くから誰かの叫び声!

 

 早速イベント発生!?


 赤いターバンの盗賊が馬車襲ってる!

 

「よっしゃあ! 腕試しだ!」


 今日から俺は「フリーター竹仲タケル」改め「勇者タケル」!

 

 馬車からチラッと覗く「紺色髪」と「瑠璃色瞳」の超絶美少女!


 うおお!

 こりゃ、メインヒロイン候補間違いなし!



「ハーレム王への第一歩! 主人公、行くぜ!」



 

 この出会いが、俺の運命を変えたんだ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ