第11話 天下統一で中華ハーレム!②
その後、俺とリンは茶屋で夕暮れまで話し込んでた。
俺、デートなんか無縁だと思ってたけど、こうやって自然にリンと話すのって楽しいな。
最初はセリィナの名前呼ぶだけでも心臓バクバクだったのに……成長、感じるぜ。
外はすっかり茜色。平和な空気。
――と、思った瞬間。
「うわぁぁああ!」
村の外が騒がしい!
「宝玉とカリムシャールの娘を差し出せ!」
赤い目出しターバン巻いた盗賊みたいな連中が襲撃!
リン、強張る!
「こ、紅鱗蛇刃……!」
「リン、こいつら何!? カリムシャールって!?」
「わたくしを攫った連中よ! タケルが撃退してくれたでしょ! カリムシャールはわたくしの故郷!」
「え……ああ、そうだった、そうだった!」
ホント、遅延覚醒めんどくさい!
でも、またまた好感度アップチャンス到来!
するとガキンチョが木の棒持って参戦。
「オ、オレもみんなを……村を守る……!」
生まれたての子鹿ぐらいガクブル。
さっきのゴロツキたちがフラフラ戻ってきて、なぜかボロボロの鍬や鎌握ってる!
「アニキ! さっきは悪かった! 俺たちも村守るぜ!」
「他所モンに好き勝手させてたまるか!」
は!? ゴロツキ、急に仲間意識!?
いや、さっき「勘弁してください」って逃げたじゃん!
「お前ら、名前ナニ? 急に気合い入ってんじゃん!」
ゴロツキのリーダー格が胸張って叫ぶ。
「俺はカン・ウーサー! あんたの強さに惚れた! 一緒に戦わせてくれ!」
他のゴロツキも負けじと名乗る。
「チョー・ヒートだ! 熱くいくぜ!」
「チョ・ウンスト! お、俺、ビビってねえから!」
「コー・チュウズ! 若い炎がたぎるぜ!」
「バー・チョップスタ! ド派手にぶっ飛ばす!」
うわっ、何か知ってる名前と微妙にかすってて気持ちわりぃ!
特に「チョップスタ」は受け入れがてぇ!
「全員下がってな! 武力カンストの俺一人で十分だ!」
「で、でも……!」
ガキンチョ、めっちゃ悔しそうな顔。
ゴロツキたちも「お、俺たちだってやれるって!」って食い下がるけど、ビビりすぎてガタガタ震えてる。
「いいから! お前らはリンのこと守れ!」
こんだけへっぴり腰じゃ、ぶっちゃけ足手まといだ。
即席とはいえ、味方が死ぬ展開は苦手だしな!
「タケル、無茶しないで!」
リン、120点の心配顔。
彼女の好感度、独り占めだぜ!
「任せとけ! 一瞬で蹴散らしてやるぜ!」
敵十五人、湾曲した変な形の剣持ってる。
敵リーダーが俺に剣を向ける。
「また貴様……! 大人しく娘を引き渡せば見逃してやる。これ以上ザルド帝国に歯向かうな」
またザルド!?
はい、固定世界継続確定!
三国志知識無駄確定!
「うっせえ! 帝国には恨みがあんだよ!」
「ならば皆殺しだ! やれ!」
敵の一人が斬りかかってきた!
ガキィンッ!
カッコよくリンの前で受け止める!
「へなちょこが!」
アクションゲーのマネして突撃!
一人倒す!
さらに一人! もう一人!
今の俺、最高に主人公してる!
でも、ちょっと数多すぎ!
敵リーダー、部下にチラリと目配せ――
殺意の合図だ。
――シュッ!
敵の一人が吹き矢を放つ!
矢の先が――リンに向かって一直線!
「なッ!?」
こいつら、リンを殺す気なのか!?
目当ては宝玉だけなのか!?
体が勝手に動いた。
「リン、危ない!」
俺はシュバッと背を向けて矢を受け止める!
――ケツにブスッ!
「痛え!」
「タケル!!」
リンが涙目で俺の肩を掴み、必死に声を絞り出す。
震える手で矢に触れようとする。
「だ、大丈夫……!? 血が……!」
「リン……大丈夫だ。俺の武力は99、こんなのダメージのうちに入らねえ! 」
俺は振り返って吠える!
「てめえら……よくもリンを! 絶対許さねえ!」
脳内ハーレムゲージがMAX!
銀炎を纏った剣を振り上げる!
「うおおお! シルバーフレイム・スタイリッシュ乱舞だああぁ!!」
ズババババーンッ!
叫びながら敵リーダーまでまとめて一気に薙ぎ倒す!
「がはっ! 申し訳……ません、グリ……メラ……様……」
敵リーダー、バタン!
「フッ、相手にならねえ!」
俺キメポーズからのドヤ顔!
ケツの矢を抜いてポイッと投げ捨て、両手をパンパンと叩く!
「こんなもんで主人公倒せるかよ!」
イキった瞬間――
ズキッ!
視界グラグラ!
バタン!
――え、さっきの吹矢、やっぱ毒?
結構やばい系だった!?
リン、俺の手握って泣いてる。
「いや! タケル、死なないで……!」
ガキンチョが駆け寄る。
「おっちゃん、ねえ! 大丈夫!?」
ゴロツキたちもフラフラ寄ってきて……
げっ! なんか目ウルウル!?
「アニキィ! 村のために無茶しやがって……」
「くそっ、死なねえでくれよ、アニキ!」
えぇ……
お前らに関しては付き合いほぼゼロだろ。
……でも、悪い気はしないか。
「ガ、ガキンチョ……」
俺、顔面スカイブルーでガキンチョに勇者の剣渡す。
「おっちゃん……これ……?」
「お前、強いよな? リンと……宝玉頼む。ゴロツキ、お前らも……だ……!」
ガキンチョ、涙目でコクン。
「わかった!」
そして片手に拳をパンッと宣言。
「この“リュ・ウビ”、絶対リン姉ちゃん守ってみせるよ!」
――リュウビ!?
お前がそのポジかよ!?
ゴロツキたち、ガタガタ震えながらも拳握って叫ぶ。
「アニキの魂、俺らも受け継ぐ! 俺ら五人でウビのこと支えてリン姐さんを故郷に送るぜ!」
ああ……
てことは、こいつらが“五虎将軍”的な?
もう、わけわからん!
「タケル……わたくしのために……ごめんなさい……」
リン、大粒の涙を流して俺の体を抱き抱える。
俺は親指をグイッと立ててニヤつきながら……
ガクン。
――俺は死んだ。
またケツ!
また毒かよ!
トカゲの時よりはマシな死に様だったけど……
三国志ミスリードが露骨すぎだろ!
知識で無双するはずが……
リン、故郷送れなくてごめんよ……!
白い空間。
ミオ、腕組みで待ってる。
呆れ顔が歴史書レベル。
「タケル、7回目の死。また毒?」
「もう、毒ヤダ! ランダム転生、やっぱ悪意しかないよな!? 俺の知識、全く役に立たねえ!」
ミオ、クソデカため息。
「キミの歴史の知識、何基準なのよ。でも、リンを救えたんだから、まあ、よかったわね。ちょっと可哀想だけど」
同情2回目!
やっぱ「知略8」で突っ込んだのやばかったか……。
「ミオ、もうそろそろイージーなハーレムチャンスくれよ! 全部ハードモードすぎるよ!」
ミオ、ボソッと「バカ」って呟く。
「ランダム……って、何回言わせるのよ。こっちも心臓ドキドキするんだから……」
――心臓ドキドキ……
はっ!?
その一言が、俺の胸に火をつけた。
7回も死んで、7回もミオに会って。
最初はただの「案内人」だった。
冷たくて、呆れてて、たまに優しくて。
でも、毎回毎回、俺が死ぬたびにここで会うたび――
ミオの存在が、俺の中でどんどんデカくなってる。
初めて会ったときから、不思議だったんだ。
俺みたいな冴えないフリーターが、こんな綺麗な子と自然に話せるなんて絶対ありえないのに。
なぜかミオの前だと、ダサい自分を全部さらけ出せる。
カッコつけなくていい。
失敗しても、死にまくっても、ちゃんと迎えてくれる。
……これって、俺、もうミオのこと――
「なあ、ミオ……」
声が震えた。
さっきまで自然に話せてたのに。
膝がガクガクする。
いつもどおりのミオなのに。
高校で気になってた子に話しかけるより、100倍緊張する。
……いや、あのときは結局ダメだったんだ。
当時の俺は男友達の前で「恋愛なんてダセエ」とか笑って硬派ぶってたけど……
本当は……そんなことなかった。
普通に興味もあったし、憧れてた。
彼女がいる同級生がうらやましかった。
だから高校最後の文化祭のとき、意を決して告白しようと思った。
――でもダメだった。
フラれたわけじゃない。
逃げたんだ。俺が。
――声かける勇気がなくて。
――変に思われるのが恥ずかしくて。
――ちっぽけなプライドが傷つくのが怖くて。
以来、俺は無関心を装って逃げ続けたんだ。
戦うこともなく、負けることもない楽な道へ。
それで自分を守れたわけじゃない。
逃げるたびに自分が弱っていくのがわかる。
楽なはずの道が、毒のように俺の自信を削っていくのがわかる。
虚しかった。
変わりたかったけど、変われなかった。
変わる機会すら自分から遠ざけてたから。
でも、ここに来てもう何度も死んでる。
もう傷つくことになんて慣れてる。
だから伝えたい。
自分が変わるためにも――
「俺、ミオのこと――」
好きだ。
そう言おうとした瞬間――
ミオの動きがピタッと止まる。
白い空間の空気が、急に重くなった。
「タケル……」
ミオの声、低くて静か。
まるで凍てつく湖の表面みたい。
「勘違いしないで」
――ズキン。
痛い。
そして次の言葉が、俺の胸を貫いた。
「私はあくまでも案内人。キミとは次元が違う」
ミオの言葉、冷たいけど、なんかその奥に隠れた感情があるような……。
でも、俺にはそれが何か分からない。
「で、でも、俺……」
「言わないで」
ミオが一歩、近づく。
白い空間に、初めて距離が縮まる。
黒い手袋に包まれたミオの指先が、俺の頬に触れる。
冷たい。でも、熱い。
「……次の世界で、必ず目的を達成しなさい」
ミオ、ゆっくり背を向ける。
銀髪が、ふわりと揺れて、光に溶ける。
「ミオ、待ってよ……!」
叫んだ。
今度は声が出た。
ミオの背中が、ピタッと止まる。
「残り3回。無駄にしないで、ね」
その声、いつもより小さくて、どこか震えてる気がした。
でも、ミオの背中はもう遠い。
「ミオ、待ってよ……!」
俺、叫ぼうとしたけど、もう声が出ない。
白い光が俺を包み、次の世界へ――




