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狩りの始まり

家に戻った俺たちは、さっそく狩りに行くべく、お互い準備をし始めた。


アネモネさんが母屋で準備をしているうちに、俺も納屋に入って、自分の装備などを確認し始める。


防弾チョッキを着こみ、サバイバルナイフや投げナイフを装着し、バックパックに小物を入れた後、リボルバーやスナイパーライフルに不備がないか入念に確認を行う。

特にスナイパーライフルは、ウルフから逃げているときに無理な使い方をしたので、銃身が曲がっていないかなど、より丁寧に確認していった。


ちょうど確認を終えたころ、納屋の外からアネモネさんが俺を呼びかける声が聞こえた。


その声を聞いて俺はスナイパーライフルを背に掛け、納屋の扉から外に出た。


アネモネさん普段着であるシャツの上から茶色い革のジャケットのようなものを羽織り、少しぴっちりした伸縮性の高そうな繊維でできたズボンをはいていた。そして、ひざ下近くまでを覆うブーツを履いて、足を保護しているようだった。

頭には、深緑色のバンダナを付けており、他の服装の色合いも相まって森の中で目立たないような配色になっていた。

また、腰には矢筒や刃渡りが少し大きめのナイフを鞘にしまい装着しており、背には獲物を入れることができそうな大きな革袋を背負っていた。

そして、何より目を引くのは、その背に背負っている弓だった。

それは、目測で120センチほどの大きさの弓で、緩やかに湾曲した持ち手の部分は、黒く染色され、日の光を浴びて艶々と輝いていた。


アネモネさんの装備をじろじろと見ていた俺に、彼女は気にする様子もなく、声をかけてきた。


「準備できたみたいだね。とりあえず、歩きながら狩りの予定を伝えるからついておいで」


その言葉で我に返った俺は、少しどもりながら返事をした。


「は、はい。了解です」


そうして俺たちは、村の外壁にある門のところまで歩いていった。


「今日は、前に仕掛けた罠に獲物がかかってないかを確認しに行くよ。かかってたらそいつを回収して持ち帰るけど、かかってなかったら森の浅めのところで狩れる動物がいないか探すことになるかと思う」


「了解しました。ちなみに罠はどれぐらい作ってるんですか?」


「5つほど場所をばらけさせて仕掛けているけど、正直なところそこまで精巧な罠じゃないから期待薄だろうね」


「そうなんですか。どんな罠を仕掛けてるんですか?」


「作るのがそんなに難しくない落とし穴と箱罠ってやつさ。ただ、あたしはあまり罠を作ったりするのが得意じゃないから、基本的に自分の腕で狩りをすることが多いね」


そうして二人で話し込んでいるうちに外壁の門のところまで近づいていた。外壁の門はそこまで大きくなく、幅としては一般的な自動車がぎりぎり通れるくらいで、高さは2メートル50センチほどで、金属のような質感を持ったよくわからない素材でできていた。


両開きの門の傍には、細身だが鍛えているとわかる40代ぐらいのおじさんが、椅子に座って見張りをしていた。男性にしては長い少し白髪の混じった茶髪を後ろでまとめ、槍を肩にかけて村の外の様子に目を走らせていた。


その男性に向かって、アネモネさんは声をかけた。


「アーロン、通るよ」


声をかけられた男性は、振り返ってアネモネさんを見ると、俺の存在を全く気にすることもなく、気を付けろよ、といって何事もなかったかのように再度見張りに従事し始めた。


アネモネさんも特に気にすることなく彼のそばを通り過ぎて、村の外に出た。

俺はその様子に少し面喰いつつも彼女の後を追って、ついに村の外に足を踏み出した。


門を出たそこは、木が伐採されて比較的見渡しがよくなった森が広がっていた。ただ、自分が想像していた以上に、人の通った後が見当たらず、獣道と言っていいくらいの小さな通り道がいくつかあるぐらいだった。


そんな俺の疑問が顔に出ていたのか、アネモネさんは俺に向かって説明を始めた。


「こっちの門は、正門じゃなくて、裏門の方なんだ。この村は開拓村って言った通り、国の端っこの方に位置していて、正門の方はもう少しましな道が通っているよ。こっちの裏門の方は、隣国側に建っていて国のちょうど境目にある森が広がっているんだ」


「なるほど。だから人の通った後があまり見られないんですね」


「そういうことだね。さぁ、少しここからは気を引き締めていくよ。森の外縁部とはいえ、はぐれの魔物なんかもたまには出るからね」


分かりました、と返事をして、俺は彼女の背を追ってゆっくりと森に足を踏み入れた。


しばらくお互い無言で歩いていたが、アネモネさんが少し遠慮がちに声をかけてきた。


「もしよければだけど、その背に背負っている武器?のことを聞いてもいいかい? あたしが運んだ時は見当たらなかったけど……」


そこで初めて、俺は彼女に自分の武器のことを説明していないことに気付いた。

自分の間抜け具合に少し呆れながら、もしかすると自分が想像していた以上に緊張しているのかもしれないなと、少し気持ちを落ち着けるために深呼吸してから、彼女に説明し始めた。


「すいません、完全に忘れていました。この武器は詳しくは言えないんですが、おそらく俺にしか出来ない特殊な方法で出現させたもので、弓みたいに遠距離から敵を狙い撃ちすることができます。ただ、弓よりも精度がかなり高く、威力もそれなりにあります」


明らかに無理がある説明にも関わらず、彼女は気を遣ってか俺の事情を深く聞くことなく返事をした。


「へえ、なかなか便利な武器なんだね。確かにそれがあれば、森の深層でも何とかやっていくことはできるかもしれないね」


「ええ、これが無かったら多分生き延びることはできなかったと思います。特に、向こう側から襲ってくる魔物と違って、人間の気配を感じたら逃げる動物を狩る時はかなり重宝しました」


俺の武器に関する説明がひと段落したころ、森の木の密度がかなり高くなってきた。


するとアネモネさんは、一度その場にとどまり、革袋の中から、木でできた円形の小さな箱を取り出した。小箱の口を開けると、そこには白いクリームが入っていた。


彼女は俺にそばに来るように手招きすると、おもむろにそのクリームを手に取って、自分の首などにつけ始めた。


「これは、匂い消しの一種だよ。首とか、汗の臭いとかが気になる部分に軽く塗りな。しないよりはかなりましになるから、動物にも少し気づかれにくくなったりするからね」


その言葉通りに俺は、クリームを手に取って首などに塗り込み始めた。

その様子を見ながら、彼女はさらに言葉をつづけた。


「この辺りから本格的に森が深くなってくるから、周囲には注意しなよ。毒性の植物とか虫はもう少し深くに行かないといないけど、藪とかに足をとられたりしたら、思わぬ怪我とかもするからね」


その言葉を聞いて頷くと、俺は再度気を引き締めなおして彼女の後ろを慎重に歩いて行った。


森が深くなってから30分ほど歩いたところで、一つ目の罠を発見した。

箱型の罠で、木でできているが、箱の表面には蔦や葉が這わせてあり、ぱっと見だと藪にしか見えないほど巧みに隠されていた。


アネモネさんは箱罠の中をのぞいて小さく息を吐くと、こちらを振り向いて首を振った。


「ここは駄目だったね。次に向かおう」


そう言って、立ち上がると再度足を進め始めた。


俺は遅れないように彼女の後を追って歩いた。


そうしていくつかの箱罠や落とし穴を確認した俺たちだったが、結果は芳しくなく、どの罠にも獲物は引っかかっていなかった。


アネモネさんは最後の罠を確認したところで、一度休憩を入れようと提案してきた。

探索を開始してから2時間ほどが経っており、少し疲れが出始めていたので了承すると、彼女は革袋から革の水筒を取り出して飲み始めた。


俺も木の根に腰を下ろし、バックパックからあらかじめ空のポーションの入れ物に注いでいた水を飲み始めた。


「やっぱり罠は駄目だったね。道中に動物の気配は結構感じたから、村への道を戻りつつそいつらをできれば狩っていきたいね」


そう発した彼女に、俺は素直に驚いていた。

それなりに長くサバイバル生活をしていたから、生き物に対する感覚は敏感になっていると思っていたが、それでもそんなに気配を感じることができなかったからだ。


「よく動物の気配を見つけられますね。俺は全然見つけられなかったです」


「まあ、いつもこの森に入っているからね。どの辺りに動物がいるのかとかは、慣れてくれば分かるようになるさ」


そうして少し狩りについて話した後、俺たちは来た方向へ足を向けて、慎重に動物を探し始めた。




全然進まなくて申し訳ないです。

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