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~ IF ~  作者: 名城ゆうき
第二章
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幕間 或る『安栖』の独り言


 俺、藤好東佐ふじよしあずまさは激しく身悶えていた。


 だって……だってさぁ!!


 マジ、『安栖の寵児』かわぇえええ!!!!



 息が苦しくなりながらも、傍にいることの幸福を噛みしめながら心の中で叫んでいた。



***



 一言で言うと、人と多種の人外との混血。

 それが『安栖』という種族なんだという。


 所謂多妖の一族の元で生まれた俺は、半分というより、もっと妖の血は薄い。実際従弟は俺と同じ濃さの血を持ちながら『安栖』ではないくらい。

 あくまで『安栖』とは、その血がある程度流れている上その力が現れた者を指すらしい。

 しかも血の濃さで確率は上がったとしても、その濃さの程度と『安栖』になるかどうかは違うらしい。


 まぁ、だからたまたま俺の家族……親兄弟は『安栖』が割といるけど、血の薄さもあって『安栖』の自覚も薄かった。




 それが崩されたのは――――『宴』であの『安栖の寵児』達に会ってからだった。




 自覚している限り、今まで自分の人間関係は淡白だった気がする。

交友関係は普通に広いほうだし、愛想もいい方だけど、深くは関わらないって言うか。



 だけと――――自分が初恋だと思っていた、アレはただの幻だったと思えるほど、このヒトに恋に堕とされた。

 いっそ、暴力的な程に惹き寄せられ、魅入ってしまった。


 ほんと、なのに、泣けてくる。


 同時にその恋を――圧し潰された。

 横にいる男に、身の程を知らされた。叶うはずがない、と。

 思いの深さも、畏怖の念も、服従してしまうほどの『存在』の壮絶さも。破壊的な程の『力の美しさ』も。


 諦めた。


 それでも。

 深みにハマって、抜け出そうという気にもなれない。

 あの可愛いヒトは、猛毒だ。


 何もかも、捧げてもいい。

 時々、ほんの少しでいいから、こちらに向いてくれるだけでいいから。

出来る限りそばにいたい。


 もう、知らない頃には戻れない。


 だから必死で、別の意識の中では狂ってるなんて思いながらも、『安栖』としての力を高めて『つかね』の称号を得た。

 そしてわかったことは、『束』とは、もしかすると『当主』に溺れた者の集まりなんじゃないかということ。


 それは一様に『束』達の『目』が似ていたから。




 先祖返りした『安栖』は――――『力』の強い、もとい、『当主』に近づくほど、他者に対しては排他的だ。無意識下で。

 それが『安栖』の本質。


 ただ、内の中に入れた者に対しては――――蜂蜜に黒蜜と生クリームとキャラメルソースを加えて小さな飴玉に濃縮したようなくらいに甘く、慈しむ。その『排他』から見違えるほどに。


 その対象になりたくて。


 あのヒト達は俺達のことを、そんな気にも留めてなんかいないのに。


 それでも傍にいるがために、上り詰めた、そんな者達。


 表向きは、『安栖』の系統の中で、その頂点に立ち、『束ねる』者。

 実際は、その蠱惑的な存在に、追従する僕。


 変態だと思う。ストーカー上等、犯罪に踏み込んでいるかもしれない。

 ただ、許容してもらえる限り、いいじゃないか。

 ちゃんと社会的に問題ないように取り繕うから。



 そして。



「――――――東佐君」



 今日も、あの可愛いヒト達の媚香を僅かでも取りこぼすこともなく、幸福な時間を噛みしめる。



 あぁ!もうっこの双子なんでこんっなに可愛いんだっっ!!

 お互いを信頼している感じとかもう愛おしくて仕方ない感じとかちょっと離れたところから一点集中で俺だけピンポイント殺人光線を浴びせるあの男の執念とかもや微笑ましくて可愛いらしい域に入る感じとかっ!

 や、でも、もちろん一番可愛いのはあのヒトだけどさ!

 もうひっくるめたセットでもいいよもう!禿げ萌えるわ!



 ……少し自分の気持ちが、初めに抱いたものとは歪に、変わってしまった気がしないでもないけどな。




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