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世界会議

本日より新章「騎士学園対抗戦編」スタートです!

虚飾の騎士王国編まで読んでくださった皆さま、ありがとうございます。

今章もぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!

 世界の中央に位置する聖都。


 重厚な白亜の大広間には、円卓が配置され、世界各国の代表たちが一堂に会していた。


「これで、全員か?」


 代表の一人が口を開く。


「いや、まだ各種族の代表……六大覇王達が姿を見せていない」


 普段ならば、各国の情勢や交易について語られる場所。


 だが、今日の空気は、明らかに違っていた。


「彼らは今回も遠隔参加と聞いているが、それでも尚、待たせるか……」


 会議場には青く澄んだ光を放つ巨大な魔導投影陣が展開されている。


 ヴォン……!


「すまない、待たせた」


 そこに次々と映し出されているのは、世界の頂点に君臨する『六大覇王』達の姿だった。


 第六席――獣王レオン。


 第五席――海王ネプチューン。


 第四席――化神ウドガル。


 第三席――妖精王ユグドラシル。


 そして――


 第一席――魔王モルドレッド。


 六大覇王の第二席――英雄メドロードの姿だけはなかった。


 錚々たる絶対者たちの幻影が並ぶ中、首脳の一人が眉をひそめて呟いた。


「……そういえば、メドロードはどうした?」


「あの男は国王ではない。国を持たない以上、この会議への参加権はない」


 別の首脳が苦々しく吐き捨てる。


「ふん、相変わらず食えん男だ……」


 英雄と呼ばれる男は、国家の枠組みに縛られるような存在ではなかった。


 やがて、議長が重々しく咳払いをして口を開いた。


「では、本題に入ろう。近頃、各地で報告されている魔物や魔力に関する不可解な異変についてだ」


「我が国でも、不自然な魔力の痕跡がいくつも報告されている」


「こちらでも同様だ」


 次々と上がる報告。


 会議場にざわめきが広がっていく。


 やがて、第四席・化神ウトガルが、魔導投影から威圧を放ち、睨み据えた。


「単刀直入に問おう。魔王モルドレッド。……貴様ら魔族が、何か良からぬ企みをしているのではないだろうな?」


 ウトガルの重い声に呼応するように、レオンやネプチューン、ユグドラシルも冷徹な視線を向ける。


 モルドレッドは、きょとんとし、困ったように笑う。


「全く困っちゃうな。そんな風に疑われちゃうとさ」


「各地で魔族に関係すると思われる異変が起きている。疑うのは当然だろう」


 ウドガルが低い声で告げる。


 モルドレッドは頬杖つきながら告げた。


「怖いなぁ〜。覇王のみんなにそんな睨まれちゃうなんて」


「ふざけるな」


 レオンが睨む。


 だが、モルドレッドは意に介さない。


「ふざけてなんかいないよ。そんなこと言われる筋合いがないだけさ」


 笑みを浮かべながら、ゆっくりと言葉を続ける。


「君達、魔族以外の全種族が僕たち魔族を魔界に追いやって、閉じ込めてるんじゃないか」


「……!」


 会議場が静まり返った。


「僕たちが何をしたっていうのさ?」


 モルドレッドは、まるで自分たちこそ被害者であるかのように肩をすくめる。


「ずっと魔界に閉じ込められて、外の世界にも出られない。そんな僕達を疑うなんて……ちょっと酷くない?」


「……貴様」


 ネプチューンの目が細くなる。


 そして、ユグドラシルも静かにモルドレッドを見つめた。


「あなた、言葉遊びはそのくらいにしたらどうかしら?」


「そっちこそ、一回落ち着いたらどう?」


 モルドレッドは笑った。


 その時だった。


「モルドレッド殿の言う通りです」


 声が響く。


 一同が振り向く先にはバルカーン王国の国王――エギルの父を器として奪った、ヴァルガンだった。


「魔族が世界各地で異変を起こしているという証拠は無い。我が国で起きた騒乱も国内の不穏分子による内乱に過ぎ無い」


 穏やかな声でヴァルガンは続ける。


「根拠のない疑惑で種族間の緊張を高めるのは、賢明とは言えますまい」


 この場にいる者たちは王の肉体の中身が、すでに魔族ヴァルガンによって乗っ取られていることなど知る由もなかった。


 彼をただのバルカーン王国国王として見ている。


「……確かに、証拠はない」


 別の代表が呟く。


「だが、異変が起きていることも事実だ」


「それは否定しません」


 ヴァルガンは静かに答えた。


「だからこそ、今後も慎重に調査する必要があるでしょう」


 モルドレッドがニヤリと笑う。


「ほらね?」


 誰も答えず、疑惑は消えない。


 しかし、決定的な証拠もない。


 それ以上、追求することはできなかった。


 やがて、各国の代表が席を立っていく。


 世界会議は、一旦の終わりを迎えた。

◇

 季節は巡り――秋。


 王立騎士学園。


 校舎を囲む木々は赤や黄色に染まり、涼しい風が校庭を駆け抜けていた。


 バルカーン王国での過酷な戦いを終え、学園へと帰還したレイクたちは、いつもの日常を過ごしていた。


 だが、校内の様子はどこかいつもと違っていた。


「今年もそろそろだな」


「そうだな。去年は凄かったらしいぞ」


「今年は誰が優勝するんだろうな」


 廊下を歩く生徒たちが、何やら楽しそうに話している。


「ん?なんだ?」


 並んで歩いていたレイクが、不思議そうに首を傾げた。


「今日はやけに騒がしいな」


「貴様……知らなかったのか?」


 隣を歩くエギルが、呆れたようにため息をついた。


「毎年秋に行われる、学園の最大行事だよ」


 ミリアがレイクへ優しく告げる。


「あぁ、もうそんな時期か」


 ゼノンが天井を見上げ呟く。


「そうか。世界が注目するあれか」


 リゼットも顎に手を置いて呟いた。


 その時、全校集会の鐘が響き渡る。


『全校生徒は、ただちに大講堂へ集合してください』


 レイク達は大講堂へ向かった。

◇

 大講堂。


 全校生徒が集まり熱気とざわめきに包まれている。


 そして、壇上へ、髭を蓄えた学園長が立った。


 学園長は生徒たちを見渡す。


「諸君」


 ざわついていた講堂が、静まり返っていく。


「今年も、この季節がやってきた」


 生徒たちの間に緊張が走る。


「――騎士学園対抗戦を開催する」


 ――ドッ!


 うぉぉぉぉぉぉ!


 講堂が一気に沸いた。


「来たぁぁぁ!」


「今年は本戦に出るぞ!」


「絶対に勝ってやる!」


 歓声が響き渡る。


 学園長は続ける。


「この大会には、世界各地の騎士学園から選手本校へと集結する。学年は問わん。一年生、二年生、三年生……その資格を持つ者ならば、誰でも舞台に立つ」


学園長は力強く言葉を紡ぐ。


「参加予定者は――約一千名」


「……一千人!?」


 レイクの声が講堂に響いた。


「そんなに……」


 思わずミリアも目を丸くした。


「規模が大きいな」


 エギルが静かに呟く。


「……なるほどな」


 ゼノンは壇上を見つめ呟いた。


 リゼットも腕を組む。


「世界中の騎士候補生が集まるというわけか」


 学園長が静かに語り始める。


「我が王立騎士学園は、世界中から才能ある者が集まる最高峰の名門校である。歴代の卒業生には、各国の近衛騎士団長や英雄たちが名を連ねておる」


 学園長の視線が、壁際に立つ教官陣へと向けられた。


「現在、本校で教鞭を執るラルク」


「エストレア国で近衛騎士団長を務め、豪傑と謳われるガルディオ」


「そして、かの英雄――メドロード」


 その名が上がった瞬間、講堂が割れんばかりのどよめきに包まれた。


「メドロード様も……!?」

「あの英雄も、この学校の出身だったのか……!」


 生徒たちが熱狂する中、レイクは不敵な笑みを浮かべた。


「メドロード……!」


 胸の奥が、カッと熱くなった。


(あいつも……この学校で、この大会に出てたのか……!)


 全身の血が激しく巡り始める。


 壇上の学園長が、全校生徒を見渡して厳かに締めくくった。


「諸君には、その名を背負う者として、本校の名に恥じぬ戦いを見せてもらいたい」


 一瞬の静寂。


 その後、集会が解散になると同時に、講堂は爆発的な熱気に包まれた。


「おもしれぇぇっ!」


 レイクが拳を突き上げた。


「絶対優勝してやるぜ!」


「世界中から……頑張らないと」


 ミリアが小さく意気込む。


「自分を試すいい機会だ」


 リゼットが微笑む。


「……おもしろい。優勝するのはおれだ」


 エギルは瞳に闘志を宿らせた。


「……悪くねぇな」


 ゼノンも拳を握った。


 秋の空の下。


 世界中の若き騎士候補たちが集う、巨大な舞台。


 王立騎士学園に、新たな戦いの幕が上がろうとしていた。

本日より新章「騎士学園対抗戦編」スタートです!

今回は、世界各国の代表が集う「世界会議」から物語が動き始めます。

ぜひ新章もお楽しみください!

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