開戦
レイクが血走った目で叫ぶ。
「そこを退け!!退かねーならぶっ飛ばす!!!!」
その瞬間、警鐘が打ち鳴らされた。
「侵入者だ!!」
「王宮内に侵入者がいるぞ!!」
「捕らえろ!!」
周囲から兵士たちが次々と駆けつけてくる。
あっという間に、レイクたちは大勢の衛兵に取り囲まれた。
「まずいな……この数は」
エギルが腰の剣に手を添えた――その時だった。
シュパシュパシュパシュパ!!
次の瞬間、衛兵たちが次々と叩き伏せられた。
「なんだ!?」
シュタ!
レイクたちの前に、セレナード以外の黒薔薇六傑が舞い降りる
「……あんた達は?」
ゼノンが問いかける。
一人が振り返り、笑みを浮かべた。
「大丈夫、味方だ」
「みんな……」
リゼットが目を見開く。
別の者が剣を構える。
「セレナードさんに言われたらな。加勢する!」
「お前ら……」
ガルディオも目を見開いた。
動揺するガルディオを他所に、セレナードが素早くリゼットへ語りかける。
「リゼット」
「はい」
「今、王宮内は混乱しています。マルフィアのことです。それも予測し、ミリア様へ続く道には三魔将を配置しているでしょう」
「……それは」
「……!」
「ですが、その分こちらは動きやすい。今のうちに人質を解放するのです」
セレナードは六傑たちを見渡した。
「ガルディオほどの戦士です。この場は我々に任せてください」
「いけ!」
「はい!!」
意を決したリゼットが疾走していく。残されたエギルとゼノンが、レイクの左右に並び立った。
エギルが剣を抜いた。
「突っ走りすぎだ、レイク」
ゼノンも構える。
「あぁ、あの人相当強いぞ。三人でやるぞ!」
「おう!!」
ガルディオは大剣を構え直し、静かに腹を括った。
「くっ……!来い!!」
「『黒鉄の針林』」
無数の漆黒の針がガルディオへ降り注ぐ。
しかし――。
大剣が一閃。
針はまとめて弾き飛ばされた。
「『白煌一閃』!」
エギルが神速で斬り込む。
ガギーーーン!!!
だが、それすらもガルディオは見切った。
その頭上から、炎を纏わせた拳を振りかざし、レイクが宙を舞う!
「火拳!」
ドォン!!!
それすらもガルディオは左手一本で受け止めていた。
「マジかよ……」
レイクの額に汗が浮かんだ。
ガルディオが低く息を吸う。
「うぉー!!」
ドンっ!!
ガルディオが力強く踏み込むと、周囲の空気を薙ぎ払うような凄まじい衝撃波が巻き起こった。
「うぁ!」
「がっ!」
レイクとエギルが吹き飛ばされ体勢を崩した、その一瞬。
ビュン!!
ガルディオは驚異的なスピードで迫り、ゼノンへ大剣を振り下ろした。
ガギーーーン!
ゼノンは間一髪で展開した魔法障壁で防ぐ。
「ぐっ……!」
障壁に亀裂が走る。
その時――。
「俺たちも行くぞ!!」
他の黒薔薇六傑たちが一斉にガルディオへ切り込む。
「――はぁー!!!」
ガルディオが大剣を振り抜く。
ドォォォン!!
六傑たちがまとめて吹き飛ばされた。
体勢を立て直したレイクが、両手に特大の魔力を練り上げた。
「ファイアーボール!!」
ドォォォォン!!
巨大な火球がガルディオへ向かって飛んでいく。
しかし――。
シャキンッ!!
ガルディオが大剣を一閃。巨大な火球が真っ二つに切り裂かれた。
ドカーーーン!!
炎が左右へ散る。
「『白煌千閃』!」
エギルが駆け出す。
キンキンキンキンキンキンキンキン――!!
一瞬のうちに、数千の白銀の光が交差する。
縦。
横。
斜め。
あらゆる方向から放たれる神速の斬撃。
しかし――。
ガギンッ!!
ガキンッ!!
ガギィン!!
ガルディオはそのすべてを見切っていた。
大剣を自在に操り、すべての斬撃を防ぎ切る。
「バカな……!!」
エギルの額から汗が流れた。
「どいてろ!!!」
ゼノンが前に飛び出す。
「容赦しねぇぞ!」
前方に手をかざす。
『渦潮の咆哮』」
スドーーーーン!!
巨大な水の渦が、まるで牙をむく龍のような津波となってガルディオへ襲いかかった。
高難度のA級魔法が直撃し、周囲に水煙が立ち込める。
「やったか……!」
しかし、霧が晴れると、そこには微動だにせず攻撃を防ぎ切ったガルディオが立っていた。
「ちっ!化け物かよ、あのおっさん」
「たぁー!!!」
宙へ跳ね上がったレイクの拳に炎が灯る。先ほどとは比べ物にならないほどの密度と巨大さ。
「火拳!!!!!」
ドッッッカーーーーーーンン!!!
高濃度の魔力の拳が炸裂し、ついにガルディオの巨体が吹き飛んだ。
ハァハァハァ。
全力を出し切った三人は息を切らしていた。
煙がゆっくりと晴れていく。
「……!」
三人の目が見開かれた。
そこにはガルディオが、堂々と立っている。
「なかなかやるな。これほどの力を持っているとは……」
ガルディオは息を切らすことなく、驚きと悲しみが入り混じった表情で、三人を見ていた。
「へへへ……まじかよ。マルフィアが人質取るのも納得だわ」
冷や汗を拭い、レイクはガルディオを見据える。
「強すぎるぞ、この人」
ガルディオは静かに目を伏せた。そして、大剣を握り直す。
ガルディオの瞳に、覚悟が宿る。
「ここまで本気で来るとは……騎士として敬意を払い戦おう」
ブォン!!!!
ガルディオが本気の構えをとった途端、溢れ出た圧によって周囲の空間に衝撃波が生まれた。
「やべぇ……くるぞ!!」
ゼノンが叫ぶ。
ビュン!!
「なっ――!」
ガルディオの姿が消えた。
「遅い!」
ズドンっ!!
「ぐはっ!」
凄まじい一撃がゼノンを捉える。
ゼノンの身体が砲弾のように吹き飛んだ。
ドカァァン!!
壁へ叩きつけられる。
「ゼノン!!」
「ぐ……!」
エギルがすぐさま斬り込む。
「たぁぁぁ!!」
カキィィン!!
ガルディオは大剣で受け止めた。
「バカな……!」
エギルの目が見開かれる。
「――!」
ズドン!!
「がっ……!」
ガルディオの反撃。
エギルも吹き飛ばされ、床を転がった。
「クソがぁぁ!!」
レイクが拳を振り抜く。
パシッ。
「……!」
ガルディオは片手でレイクの拳を受け止めた。
「なっ……!」
そのまま――。
ブンッ!!
レイクの身体が投げ飛ばされる。
ドカァァァン!!
「くそっ……!」
壁に叩きつけられたレイクは、ふらつきながら立ち上がろうとする。
レイクの視界に入ったのは、すでに眼前に迫っていたガルディオの姿だった。
「____!?」
「すまない……若き蕾よ」
容赦なく振り下ろされるガルディオの大剣。レイクへとその刃が迫った——まさにその瞬間。
ガギーーーン!!
硬質な激突音が轟き、眩い火花が散った。
一人の男が、ガルディオの威圧的な攻撃を正面から止めていたのだ。
「……先生!!」
レイクが叫ぶ。
「大丈夫か?お前ら?」
ラルクは振り返ることなく、静かに口を開いた。
ガルディオの表情が変わる。
「お前は……ラルク」
ラルクは静かに笑った。
「久しいな……ガルディオ」




