表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/71

第71話 解放

 私のイメージした通りに、要石が光の粒子となり風に消えて行った。

 そして、私たちに語りかけていた影も薄れて行った。


 ―――これで、俺は自由になったんだな。心が軽い。ああ、市、猿、ミツ……。すまなかった。叶うなら、風となり、この世界を見守ってみたい―――


 そう言ったと思ったら、声は小さくなり、聞こえなくなった。影も完全に消えていた。

 私は、信長さんが美味といった【幸福のワイン】を要石のあったところに向かって振りかけた。

 信長さんの新しい旅路が幸福な物であるように祈りながら、持ってきたすべてのワインを周辺にかけまくった。

 全部の瓶を空けた時、遠くから、「これほど素晴らしい酒を振る舞われながらの出立、悪くないな」と聞こえた気がした。

 信長さん、喜んでくれたみたいで良かった。


 そう思って、駆君とタイガ君の方を向くと、二人はあっけにとられた顔をしていた。


「ん?どうしたの?鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をしているよ?」


 私がそう言うと、二人は苦笑い気味にこう言った。


「まさか、こんな簡単に解決して見せるなんて思わなかったからな」

「そうですね。こんなにあっさりと解決してしまうだなんて、思いもよりませんでしたよ」

「あはは。でも、どんなに怒っていても、いつかは治まるものだよ?信長さんは、それが人より長かっただけだよ」

「そう、だな」

「そうですね。これで、ステイル聖王国は魔の森の恐怖から解放されたんですね。でも、このことは誰にも言えませんね」

「えっ?報告する気なんて最初からなかったけど?」

「「えっ?」」

「だって、ご先祖様の恥ずかしい話しなんて言いたくないもん。だからこれは、私達だけの秘密だよ。だから、私達は今日、ここには来ていないし、魔の森が、もうただの森だってことも旅行中だから知らないからね?」


 つまり私は、しらばっくれようと二人を唆しているわけなのです。だって、本当にこんなこと他の人には言えないから。

 知らぬが仏って言うでしょ?


「くくっ。流石は俺の小春だな。了解した。それで、改めてどこに旅行に行くんだ?」

「ふふふ。小春さんは、やっぱり最高の僕の可愛い人ですね。魔の森の脅威もなくなったことですし、気ままに世界を旅するのでもいいかもしれませんね」

「気ままな旅か。良いわね」

「はは、安定のスルーっぷり。流石小春」

「そうですね。この旅の間に、もっとアピールをしていかないと気づいてすらもらえないかもですね。駆、負けないからね」

「ああ、俺も遠慮はしないからな」


 私が、行き先について想いを巡らせている間に、二人の間で何か話し合いがされていたけど、そんなことはどうでもいいわ。

 今は、この自由な空の下、どこに行くかが最重要案件なんだからね。


「小春!」

「小春さん!」

「どうしたの?」

「「大好きだよ」」

「ん?変な二人。私も二人のこと家族みたいに思ってるよ?」

「はぁ。前途多難」

「うん。でも、伝わるまで頑張るだけだよ」


 うん。三人一緒なら楽しい日々がこれからも続く、そんな気しかしないよ。




 その後、ステイル聖王国は魔の森だったた森を切り開き、街を広げ、一人の錬金術師が考案した料理や生活用品を元に、交易を広げさらなる発展を遂げたのはまた別のお話。


 そして、異世界から召喚された錬金術師を中心とした、少年少女の恋の行方がどうなったのかは、三人のみぞ知る。




『錬金術師の恋』 おわり

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ