作戦開始
二十四、作戦開始
部屋に籠った航は、どうやって真奈美と話すきっかけを作るか、思案していた。
1、弓道の試合を観に誘う
そんな都合よく弓道の試合がある訳がないし、そもそも気楽に誘えるならこんな苦労はしていない。
2、博仁に頼んで、由紀を通じて場をセッティングしてもらう
恋のライバルである博仁に頼むわけにはいかない。今回だけは自分の力で何とかしないと。
3、直接真奈美の家に押しかける
そんな勇気はこれっぽっちもない…。
4、二学期が始まるまで待つ
それじゃあ、意味がない!
そもそも、直接真奈美の家に行って、どこかへ行こうと誘えるなら、こんなに色々と考える必要はないのだ。それが出来ないとなると、偶然を装って真奈美と会うきっかけを作るしかない…。では、どうやって偶然を装うか?
考えた挙句、航が出した結論は、トレーニングを兼ねて真奈美の家の近くを走るというものだった。家の近くを走っていれば、偶然真奈美が出てきて、ばったり出会うことが出来るかもしれない。ばったり出会えば、何か話が出来るかもしれない。誘う勇気のない航が懸命に考えた、超消極的な作戦であった。
航は早速、その日から行動に出た。航の家から真奈美の家まではおよそ二キロメートル。真奈美の家の近所を二周くらいして帰ってくれば、およそ五キロメートルの道のりだ。トレーニングにはちょうど良い距離だった。航はトレーニングウェアに着替えると、元気に家を飛び出し、真奈美の家へと向かった。
真奈美の家の周りは閑静な住宅街で、車の通行量も少ない。時折犬の散歩をしている人に出会う程度である。走るにはちょうど良い環境であった。
航は走りながら、真奈美と会ったら何を話そうか、そればかりを考えていた。せっかく会っても何も話せないのでは意味がない。必ず次につながる会話をしなくては。思い切ってデートに誘おうか?いやまだそんな勇気はないし…。
そんなことを考えているうちに、あっという間に真奈美の家の近くまでやって来てしまった。当然だが、真奈美の姿は何処にも見えない。航は走る速度を落として、辺りを見渡しながら走った。近くを二周したが真奈美の姿は見えなかった。しかたない。初日から偶然が起こる訳でもないし…。
夏休みはこれからだ。走るのを続けて行けば、一日くらい会える日がやって来るだろう。航は走る速度を上げ、家へと戻って行った。




