思案中です
二十三、思案中です
夏の大会も終わり、航にとって本格的な夏休みが始まった。航の千五百メートルの結果は五位入賞。前回と同様、三位には入れなかったが、まずまず良い成績だ。航の実力がついて来た証拠でもある。この夏、しっかりと練習すれば、秋の新人戦ではもっと良い順位が狙えるであろう。航は心楽しみにしながら、この夏休みを迎えた。
ところが、夏休みに入り、真奈美と話す機会が全く無くなってしまった。元々話し下手の航にとって、同級生の女の子と話すきっかけを作ることは、至難の業なのだ。奇跡的にもこれまで話すことが出来ていたのは、博仁が由紀を通じて色々と機会を作ってくれたからである。
その博仁は、今や航の恋のライバルである。ライバルに頼んでまで話す機会を作ることは、航のプライドが許さなかった。
博仁とは、夏休みに入ってもほぼ毎日のように会って話をしている。話のほとんどは、ゲームのこととかテレビのこととかどうでもいいことが大半だが、真奈美の話も少ししている。
博仁が言った。
「航、あれから永井とは話が出来ているのか?」
航は首を振って答えた。
「全然だよ。話すきっかけがなくてさ」
博仁が航をけしかける。
「デートにでも誘っちゃえよ」
航が首を振る。
「そんな勇気ないよ」
「意気地なしだなあ」
博仁が呆れたように言った。
「意気地なしで悪かったな」
航がふてくされたように言った。
「それなら俺が誘ってやろうか?」
博仁が航に提案する。
「いいよ。誘う時になったら自分で誘うからさ」
航は博仁の提案をきっぱりと断った。恋のライバルである博仁に、何もかも頼る訳にはいかない。真奈美を自分の方へ振り向かせるためにも、ここから先は自分でやらないといけない。航はそう思った。
ここでちょっとブレーク。航はまだ勘違いをしたままである。博仁のことが好きなのは由紀であって、真奈美ではない。真奈美が好きなのは??今はまだ伏せておこう。なので、航が博仁のことを恋のライバルとしているのは、大きな勘違いから生まれたものなのだ。博仁にしてみれば、いい迷惑といったところか。
博仁と別れた後、航は部屋へ戻り作戦を考えた。このままでは何の進展もないまま、中二の夏が終わってしまう。この夏は恋も陸上も(勉強も?)ワンランクアップを目指して頑張らなければ。航は今までにない程真剣に、どうやって真奈美と話すきっかけを作るか考えていた。




