これからだ
二十二、これからだ
そして、二百メートル走の予選が始まった。五組四十名の選手が、決勝を目指して力走する。博仁と航は第四組にエントリーされていた。航が第二レーンで博仁が第六レーンだ。
航は、この対決に並々ならぬ闘争心を燃やしていた。真奈美が応援に来てくれていないのは残念ではあるが、ここで博仁に勝つことで自分にとって大いに自信になる。この自信が、後々真奈美の心を引き寄せる元となるのだ。航は入念にウォームアップをしながら、発走のときを待った。
そんな航の心境を知らない博仁は、航との直接対決を楽しみにしていた。勉強では航にかなわない博仁にとって、スポーツは航に勝てる数少ないジャンルでもある。特に二百メートル走は、博仁の専門種目だ。ここで航に負けるわけにはいかなかった。博仁もまた、入念にウォームアップをしながら、発走のときを待っていた。
そして、ついに勝負のときがやって来た。選手が皆スタートラインへと並び、スタートの準備をする。スターターがピストルを構えた。
「位置について。よーい」『パン』
スタートが切られ、八人が一斉にスタートする。博仁も航もスタートはまずまずだ。一人優勝候補の選手がスタートから飛び出し、あっという間に二メートルほどリードする。あとの七人の選手は実力差がないらしく団子状態だ。
百メートルを通過。博仁が四位、航が六位だった。航の強さは後半の粘りである。航はトップギヤのまま、先を行く博仁を追った。
百五十メートルを通過。トップの選手は既に十メートル近く先をいっていて独走状態だ。その後に二人選手が続き、博仁が四位、航は一人抜いて五位に上がっていた。残りは五十メートル。航も博仁も最後の力を振り絞り力走する。
残り二十メートル。博仁のリードは体一つ分。航が懸命に博仁を追いかけるが、博仁も抜かせはしない。
そして、ゴール。結果は博仁が四位で航が五位だった。二人とも残念ながら決勝へは進めなかった。
走り終った航に、博仁が近寄って声を掛けた。
「二百メートルじゃあ、まだまだ負けないからな」
航が心底悔しがる。
「もう少しだったのになあ。後二十メートルあれば捉えられたのに」
博仁が笑って答える。
「それじゃあ、二百メートル走じゃなくて、二百二十メートル走になっちまうよ」
直接対決の第一回目は博仁の勝ちだった。航は、今までに感じたことがない悔しさを噛み締めていた。次は絶対に勝つ。航は心の中でそう誓った。




