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悔しいです

十三、悔しいです

 地区大会の帰り道、航は博仁と並んで歩いていた。航の結果は四位。地区大会では過去最高の成績で、自己ベストとなるタイムも更新したのだが、航の心は晴れなかった。


 そんな航と気遣うように、博仁が声を掛ける。

 「三位には入れなかったけど、四位なんてすごいじゃないか」

 「うん」

 航が素っ気なく返事をする。博仁が続けて声を掛ける。

 「タイムだってベスト記録だし。一か月でよくやったよ」

 「うん」

 「次はきっと三位に入れるさ」

 「うん」

 「なあ、元気出せよ」

 「うん」

 当然、二人の会話は弾まなかった。しばらくの間、沈黙が二人を包んだ。


 航は、真奈美に告白できないことよりも、目標である三位に入れなかったことが、とても悔しかった。この一か月間、本気でトレーニングをしてきた。これ以上出来ないくらいにだ。それなのに、この地区だけでも三人も航の上を行くやつがいるのだ。もっと努力をしないと県大会は目指せない。航は悔しさを胸に秘め、次へのリベンジを心静かに誓った。


 しばらくすると、博仁がある提案をしてきた。

 「結果は四位だったけど、自己ベストは更新したし、永井に告白しちゃえば?」

 航が素っ気ない顔のまま答えた。

 「だめだよ。約束は約束だから。それに告白する自信がないよ」

 博仁がさらにけしかける。

 「大丈夫だって。今日だって応援に来てくれたし、四位に入ったお前を見て拍手 だってしていたんだぜ。絶対にうまくいくって」

 「だめ、だめだよ」

 航は頑なに断った。


 レースが終わった後、結局真奈美とは一言も話が出来ずに別れてしまった。急な用事が出来たらしいと、博仁から後で聞いた。『応援ありがとう』と一言だけでも礼が言いたかったが、その暇もなかった。しかたない、明日学校でお礼を言おう。航はそう思っていた。


 博仁が残念そうに航に言った。

 「絶対にうまくいくと思うんだけどなあ」

 すると、航が自らある提案をした。

 「永井への告白は、次の機会を待つよ。自信が持てるその時に」

 「そっか、まあ、まだ中学二年も始まったばかりだしな」


 そう、中学二年も航の恋もまだ始まったばかり。これからゆっくりと歩んでいけばいい。航は新たな思いを胸に帰路へ着いた。

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