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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case9 _ 3人の目覚め
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第2話「私の真」







「ゴーストハント!!」



ふわっと優しく獣臭が鼻を刺激した。

そうだ。偶然にも、味方がもう1組いたんだ。





「うわわ!あなた誰ー!?」


黒猫が大きな手の形をした鎌に変身し、黒装束に包まれた彼女がオガルに飛びかかる。


「もろたでえええ!」




真正面から鎌を叩きつける。でもそれではいけない。

オガルに力勝負をする機会を与えたら



「オガルちゃんはおっきな手にも負けないぞー!」


両手で鎌を受け止めた。


「ワーオ!ゾンビでーす!スーパーパワー!」


「えへへー!そう、スーパーパワー…だよー!」


鎌に勢いが乗っていたおかげで一瞬膝を曲げさせはしたが、オガルは鎌を押し返していく。

鎌の刃を手で掴んだまま。受け止め方が悪かったから何本か指の先が無くなっている。


「馬鹿力やな!でもこれならどうやああ!」


「ネイルクラッシュ!!」



鎌の刃が閉じる。手がパーからグーに変わるように。そしてそれは怪力を見せつけるオガルにとって



「おっと」



予想外だった。

"中指"とも言える3枚目の刃がオガルの後頭部に突き刺さる。

"人差し指"と"薬指"は両肩を掴んだ。

刃が折りたたまれる動作に巻き込まれ、両腕は肘から先が綺麗に切断されていた。



「あっさりやなぁ!やっぱりワイは天才や!」


「マコト!大丈夫ですか!」


「………」


だめだ。声を出す力が残っていない。

勝利を確信するにはまだ早いと伝えたい。



「っ?」


「サラ!腹ぁ引っ込め」「ウゥ!?」


オガルは体を捻って右足を振り上げた。

腕を失い、後頭部には刃物が刺さり、腹には穴…中身も無い。

通常の人間であれば、とっくに死んでいる。

通常の人間であれば、反撃など考えない。


無理やり振られたキレのない蹴りが彼女の腹部に命中し、



「ノーーーーーーーーー!!」


「サラぁぁぁ!」



くの字で吹っ飛ぶ。

すぐそこに立つ電柱に激突すれば、痛いなんて感想では済まないだろう。

急いで鎌から猫の姿に戻り彼女を追いかけるが…さすがに間に合わない。


「んにゃああああああ!!」


「………っ」



…加速、した。

黒猫は叫んだのと同時にその場から消え、彼女と電柱の間に入り込み再び鎌に変身。"手のひら"で見事受け止めた。


しかし。武器がクッションの役目を果たすなんてことはできるはずもなく、一定の衝撃を受けた彼女は


「サラ!しっかりせえ!」


「…ギ、ギブアップ……」


「なっ!敵の前やで!?何言うとんねん!!」


「………はぅ…」


「待て!気絶したらあかん!力抜くな!起きるんや!」



…彼女は、サラさんは戦闘不能になった。

僕よりも戦闘の経験は少ないし、武器が強すぎるから防御や受け身…攻撃を受けた際の我慢強さは


「紙みたいな耐久力だな。つまんねー、割って入ったくせに」



オガルの評価が全てだった。



「くっそ!どうなってんねん!さっさと死ねやゾンビ女!」


「使者かお前。ペットを創造で改造したとか?」


「マズいでこんなん…マコト!お前立て!」


僕のそばに駆け寄ってくる。

そして頬に肉球を押し付けて


「やられてまう!皆殺しやんか!どうすんねん!なあ!黙って見てないで立て!た…お、お前…足…」


ようやく気づいてくれた。


「悪い夢…そうやろ?ワイが寝る前に腹いっぱい食いすぎたから」


「……」



「さすがにもう遊んでられねぇ」



オガルは真っ直ぐ僕の方へ。


「諦めるんか!おい!足の先っぽが無くても膝で立て!お前はまだ死んでへん!」


「本出せ」


「殺されたいんか!」


「………」


「チッ。死ね」


「好きな女目の前にして諦めるんか!おい!今こそ男見せろや!」



「戦え!!」



…その時、僕とオガルは緑色の光に気を取られた。

黒猫…オヤブンさんの戦えという強い言葉に反応して、サラさんの創造の書が光を放って…


余所見をしているオガル。

そう、やるなら、今、この瞬間。



「…ゴーストハントッ!!」


きっとそれが合図になると信じて。

精一杯の声で叫び、両手を地面に叩きつけて上体を一気に持ち上げる。

膝に力を込めて耐える…中途半端な膝立ちが成立したのと同時にオヤブンさんは鎌に変身した。


その柄を両手で握り、右下から左上へ…短い距離を振り抜く。


「あ?」


オガルは即座に反応し腕を上げ防ごうとするが…手が無くて掴めなければ、鎌の刃の餌食になるだけだ。


ザシュ。


「生意気な目…して」


…届いた。

あとは刃を…オガルの横顔にくい込む"人差し指"を閉じれば、


「……っ」



閉じない。

それどころか、僕の手が震えてしまう。このままでは鎌を手放すことになる。

支えられない。

……オヤブンさんは、サラさん専用だからか。

強引に持って振ることが出来たのは、僕とオヤブンさんがこれ以上ないくらいタイミングを合わせたから。


「オヤブン…っ」


「分かってんねん!どうすればいいのかなんて見たらわかる!でもこれ以上は動かへん!」


「…ぅ」



オガルは笑顔をみせた。

無理やり口角を上げた作り笑顔。それは僕達の絶望を見抜き勝利を確信したもの。



「死は嫌いだ。痛くないから」


「……」


「だから、代わりにお前らが死ね」


肘で鎌を突くと変身が解除され黒猫が吹っ飛ぶ。

地面を転がりサラさんの隣で止まった…もう動けはしないだろう。


「今なら最大の力が引き出せる。1発で全員終われる」


そう言って足を引く。

何が起こるのか…予想がつく。

想像できないほどの威力の蹴りが衝撃波を生み、僕達全員を破壊する。


…嘘であってほしい。悪い夢であってほしい。

そうでなければ。オガルは…オガルは






「私の真に触らないで?」





「は?」


「……え…」


声が聞こえた。弱々しい声が。

そして体が震えた。発せられる圧に本能的に恐怖して。

そこにいたのは、僕の知る彼女ではなかった。





「オガル。私の真から離れて?」





「今更やる気になっても遅いんだよ。全員これで」


「話、聞いて?」


ボッ。何の前触れもなくオガルの足先から炎が。

鮮やかな赤の中にゆらゆらと黒炎が混ざっていて、あっという間にオガルの足が真っ黒に…なって…ポロポロと崩れていく。



「先にお前だな」


オガルが彼女の方へ体を向ける。

1歩ずつ踏み出す度にオガルの足が崩壊していって、このままだと彼女に触れる前に足が無くなる。


「なら噛みつけばいい」


立ち止まり、膝を曲げ、跳躍の構え。




「飛べないよ。そんな体じゃ」




「…?………チッ…何だよこれ…」


僕は目をそらさなかった。でも何が起きたのか…全てが不明で。

オガルが何かに気づいた瞬間、そのまま上半身が横に滑って地面に落ちた。

直後に下半身も力が抜けて倒れた。

何がどうなっているのか、分からない。




「真」


もう…終わった…のだろうか。

僕の姿を見て、足を見て


「横になって?」


こちらに歩いてくると思ったらもう隣にいた。

優しく体に触れてきているけど、少しでも力が入って抵抗したら…僕もオガルのようにあっさり簡単に殺されてしまうような気がした。


「そんなことしないよ?」


「……」


仰向けにさせられ、彼女は僕を見下ろしている。


「でも死んだら転生するとか、どこかの場面からやり直せるとかだったら、すぐに殺してあげる。痛くないように、一瞬で」


………見た目で分かる違いは、毛先だ。

綺麗な黒髪の一部が変色している。ほんの少し。淡い。虹色に。



「サラも来たんだね。まだ生きてるけどしばらくは目覚めないと思う」


…凪咲さん。


「どうしたの?痛む?足、焼こうか?」


「っ!」


ダンさんを探してください。彼の再構築で僕の体は元に戻ります。


「…そうだね。待ってて?」


彼女は僕に背を向け歩きだした。

その姿はすぐに湯気みたいに曖昧になって、消えた。


今の彼女に、敵味方の区別が出来るのだろうか。

僕には皆に平等に死を与える女神に思えた。






………………………………next…→……






「………」


道の真ん中。

主人の頭を膝に乗せ優しく髪を撫でるジュリア。

彼女の膝枕に身を任せ静かになっているダン…だったが、1度だけ大きく震えた。

突然のことに驚くジュリアだったが、その原因を正面に捉えた。



「柊木様の…」


遠くに凪咲が姿を現す。が、消える。そして。


「ダンは?生きてる?」


当然のように2人のそばに立っていた。


「…今のは瞬間移動ですか?」


「死んでないよね?」


「あなたは今の自分を理解していますか?」


「真を助けて?」


「今は出来ないと言ったら、私達を殺しますか?」



互いに一方通行の問いをぶつける。

だが、ジュリアの最後の問いにだけは答えた。


「うん。だから真を助けて?」


「…柊木様の状態は」


「真を」


ジュリアは目を見開く。凪咲を見つめ、ひと言。


「…異常地帯」


店で感じ取った異変が、まさか敵ではなく味方のものだったとは。

仕方なくジュリアはダンを抱き、持ち上げる。



「ご主人様は疲労状態です。強制的に目覚めさせても創造をすることは難しい…本当に柊木様を助けたいのであれば力で従わせようとするのは間違いです」


「真が死んだら、私はみんなを殺してから自殺する。それだけだよ」


それからジュリアは何も言えなかった。

今の凪咲には何も通じない。言葉も、力も、全てが。



「ご主人様。ご主人様。申し訳ございません、お目覚めを」


「……」


「今から柊木様の元へ向かいます。再構築が必要で」


「……」


「はい。無理を言って申し訳ございません」




3人が遠ざかっていく。

道を曲がり、姿が見えなくなると



((READ))



残骸に邪悪な光が生まれ、潰れた骨や肉が再生する。

およそ1分ほどでジュリアに頭を潰される直前まで回復した。


「アマトゥワ族の最後の1人…もっと早く始末しておくべきだったか。あのメイドの使者には想像が加えられていた。代行がそれに慣れれば我々の脅威にもなるだろう…。他にも接触していた代行がいたが…あれは既にそれを行っていた……今頃オガルも死んでいるだろう。"呼び戻す"か」


白衣の男は3人とは別の方向へ走り去っていった。






………………………………next…→……




改めて、"現場"の残忍さに気付かされる。



…代行同士の争い。

これを一般人が目撃したら世界はどうなってしまうのだろう。

スマホか何かで撮影されて、拡散されて、常識が通じない力が世に知られたら。


きっと、言葉にしきれないほど大変なことになる。


国は危険だとかなんとか理由を作って代行を攻撃するだろう。

数の暴力で創造の書を奪い、その力を悪用…そこから世界の問題に発展して。


戦争になる。創造の力があれば、全てを奪えるだろうから。



そう考えると、異常地帯は異常ではないように思う。

むしろ逆。安全地帯と思う方が



「……んにゃあぁ〜」


早い。オヤブンさんが意識を取り戻した。



「っは!しまっ…んにゃ?どうなってるんや。何があって…っておい、ゾンビ女死んどるやん!わぁぁっ、サラ!そうやった!思いっきり蹴り飛ばされて…ああ!マコト!お前まだ生きとったんか!」


忙しい使者だ。

目に見えるもの全てに反応して、ウロウロして、困った果てに僕のところへ来た。


「何があったんや」


「…な……」


「なんかお前よく見たら顔ブサイクになっとるやんけ!」


ブサイクではなく潰されたのだ。

…別に容姿に自信があるわけでもないが。


「お、おいおい。嬢ちゃんはどこいったんや。お前のパートナーは」


話したくても話せない。

さっきのだって相当な無理をしたのだから。


「あーもう。サラを起こさなあかんな。この中じゃまだマシやからな」


とことこ。サラさんのそばに戻り、頬に猫パンチ。

数回控えめに殴ったところで


「ああもう起きろやああ!」


黒猫右ストレート。


「アウ!!」


そして起きた。どんなコンビなんだ。


「サラ!」


「…オヤビン……虫歯になりました…痛いでーす…」


「ちゃうねん!ワイがぶん殴ったからや!後で謝ったるからマコトを助けてやろうや!」


「…あ、おーけーでーす……」


フラフラになりながら立ち上がる。と。




「柊木様!」


そこにジュリアさん達が戻ってきた。

ダンさんがお姫様抱っこされてる。


「っ、まだ敵が!他にも来ていたとは!」


ジュリアさんがサラさんを見て顔色を悪くした。



「待て待て!敵って何やねん!こっちはマコトの助っ人やぞ!」


「今すぐ破壊を」


「なーっ!?」


「…ジュリア。真を優先しろ」


「っ…はい、ご主人様」


「話は真から聞けばいい」


((READ))




痛みが消えていく。

歪んだ顔も引き伸ばされて、元に戻るのが分かる。

………助かった。



「……そっちはサラさんと使者のオヤブンさんです。味方です。来てくれなかったら僕達は殺されてました」


「…ふぅ〜。助かったぁ…」


助けられたのは僕の方なのに、なぜかオヤブンさんの方がホッとしていた。


「こっちはダンさんと使者のジュリアさんです。もちろん味方です」


「柊木様。説明を」


「え?あ、あの。僕達オガルに襲われて」


「違います」


「へ?」


「あなたの使者が異常地帯を発生させ、更には味方に殺意を向けたことについてです」


「………」


何、それ。





………………………to be continued…→…


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