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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
チョコレート戦争
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第10話「水も滴るいい女」





「痛みに鈍いようですね…!!」


「………」



真達を先に行かせその場に残ったジュリア。



「砕きます」


バキィッ!


顔面に直撃した拳は頭蓋骨を砕いた。

そしてそのまま仰向けに倒れた敵を見下ろす。



「ここに来る前にどこかで戦闘していたのでしょうか。全身に激しい損傷…右腕は最初から使い物にならないほど…」


近づく。


「この臭いは…腐敗臭。肉体が腐っていた?…は…!ではこの使者は元から死体…ゾンビと呼ばれるものでは…」


ジュリアは右手を振り上げ、使者の首を狙い手刀で一撃。


「頭部が無くても活動が可能である場合もあります。ここはいっそ」


手刀で使者を解体していく。

頭、腕、胸、腹…バラバラになったそれはさすがのゾンビでも復活は叶わないものとなった。


…が。そんな中、腹の中から何かを見つけた。


「これは…?」


ポロポロと…1つ2つ…だけではなく、いくつも見つかる。

肉片がまとわりついている。


「……川で洗浄すれば…」


片手で握れるだけ集めると、ジュリアは川のそばへと戻る。

清らかな水に、発見したばかりの異物を…


「銃弾に似ているような…。ご主人様なら」


これが何か分かるかもしれない。

ふと顔を上げると、対岸には凪咲の姿が。


「………」


彼女も戦っている。

相手は2人だ。


「使者召喚型の代行。さっきの使者を召喚したのはあの代行…」


革靴、深い青のダメージジーンズ、そして薄汚れた白衣。


「髪が整っていないのは動き回っていたからだと考えるのが自然でしょう。使者を配置しトゥカミとのやり取りを近くで観察していた…ご主人様はトゥカミのことを奇跡的に知り、時間をかけてどうにか探し出すことができましたが…あの代行も…」


凪咲達から目を離すと、動物の使者達と共に即死した代行の姿が目に入った。


「人間と同じ姿をしているだけの使者が、心ある人間の真似事をするのはどうなのでしょうか…。しかし、協力には感謝をしなければいけません。その強さにも、敬意を。…」



ついさっきまでチョコレートひとつでこれ以上ないほど感謝していたトゥカミ。

その死体はその場から離れることなく変わらずそこにあった。



「……トゥカミ。安らかに」


体の向きを直し、胸の上で手を組ませ、目を閉じてやる。


「創造の書……、……?」


ジュリアは気づいた。

人間であるトゥカミは別として、使者である動物達はなぜ


「普通は死ねば存在が消える…どうして…」


目を向けたのはトゥカミが寝床にしていた岩場。

死体が本を持っていないのであればどこかに隠しているはずだ。


「っ…」


早速探し始める。

様々な大きさの石を両手で掻き分け、掻き分け、掻き分け…


「…紛らわしい」


どこでどう加工したのかは不明だが、見つけた創造の書は表紙が大量の小さな石でできていた。


中を確認する。

ジュリアには何も見えないが、ページを捲れば大体の使用度合いが分かる。


「すぐに持ち帰り、ご主人様に」


立ち上がったところで足が止まる。

本来であれば見つけた創造の書をすぐにダンの元へ届けるところだが、ジュリアは見てしまっている。


創造の書を優先するべきか。


「…協力を依頼したのはご主人様で、柊木様はご主人様の…ならば」


懐に本をしまうと覚悟を決めた。







………………………………next…→……






((READ))



それを聞いて真達を先に行かせた凪咲。

声のした方へ駆けていくと




「代行を逃がしたか。いや、お前は捨て駒…」



「優しく言ってあげる。ちゃんとお風呂入った方がいいよ」



凪咲の返しを鼻で笑う。

そして男は川を指さした。


「今すぐ飛び込んで自殺すれば苦しい思いはしないで済む。最初で最後のチャンスだ」


「それ自分に言ってるの?私…人も化物も迷わず殺せるくらいだから、同情とかしないよ?」


「そうか。こちらはちゃんとチャンスをくれてやった。その事実は忘れるな、子娘」


「偉そうに。負けた時めちゃくちゃ恥ずかしいだろうね」


男は小さく笑った。

何かの気配を感じ凪咲が周囲を見回す…と。


「あれが、使者…?」


川から這い出てくる存在。

服が濡れているのは当然のことだが、


「待ってよ、あれ使者っていうか」


「使者だ。さあ、戦え」


「……」


凪咲は、それは使者ではなく"死者"だと認識した。

眠れない夜に真を起こさないよう静かに鑑賞したホラー映画で、同じものを見たことがあるのだ。

ふやけた青白い肌に土や小石が付着し、発見されるまでに魚などにつまみ食いされた形跡がある…そう、それは。



「…水死体」



使者は立ち上がると、不安定な姿勢で凪咲に向かって走り出す。

どれだけ水を吸ったのだろうか。ビタビタと鳴る足音と別に、足の指が石に引っかかって捥げる。

足が地につく度に体全体が小刻みに振動し、


「…もわぁ」


深く低い声が漏れ、口が開く。

口内は真っ黒だった。



「気持ち悪い…!!」


凪咲は接近を嫌い、距離を置きながら魔法で対抗することにした。

炎を手のひらに出現させ、使者に向けて放つ…!



「無駄だ」


「わざわざ言わなくても見たら分かる!」


怯むこともない。使者は連続で炎を浴びせられるが無反応で凪咲に迫る。


「しょうがないか…」


仕方なく双剣を構え、地を蹴り飛び出す。

一瞬で使者の背後に移動し首を


「ぁぅ」


「うそ…!?」


切ろうとした。が、それに合わせて使者の首だけがぐるりと回った。

背後に立っているのに、目が合っている。


驚きに負けて首は諦め、力強く縦切りを行う。

頭の先から腰にかけて縦の線が入り、肉がきれいに割れる。


「っ、これで!」


さらに追撃。縦横斜めと素早く切っていく。

十分過ぎるほど攻撃し、使者から離れる…と。



ッパァン!


使者は爆ぜた。その場には血ではなく水が飛び散った。



「でも汚そう…」



「女の割に力はあるようだ。だが」


川から這い出てくる存在。

全く同じものが、また姿を現した。



「創造したのは1回だけ。なのに…」



「ここでお前は死ぬ」


「…どういう使者か分からないけど、多分…完全には殺せない。なら」


凪咲は使者が立ち上がるのに合わせて接近し、


「邪魔!!」


川に蹴り落とした。そして再び手のひらに炎を出現させ



「使者を殺せないなら代行を殺す。もしくは本を燃やす。それで終わりでしょ?」



「来い」



「はーーいっ!!」


追い詰めた。凪咲がそう確信した時、男は何かを呼び…聞き覚えのある元気な声がそれに応えた。




「っ…オガル…!!」



飛び降り、着地に失敗し転がる。

登場して早速負傷したオガルだが、笑顔で立ち上がると着ている衣服を直した。

とはいってもボロ布を繋ぎ合わせた統一感のないそれは、下手に引っ張ると簡単に破れてしまう。


「あー…スカートちょっと破けちゃった。いっか!これもかわいいー!」


「服を気にしている場合か」


「もう!待ちくたびれたよー!オガルちゃん、そんなに暇じゃないんだから!」


「そいつを殺せ」


「はいはーい!じゃあ後でねー!」


男は歩いて離れていく。



「逃がさない!」


凪咲は炎を放つが



「だめー!オガルちゃんと、遊ぼ!ね!」


その身を盾にしてオガルが防いだ。



「嫌!」


凪咲はオガルを避けるため跳躍。

簡単には届かない高さに到達すると、再び男を狙って炎を


「オガルちゃんすぺしゃるきゃのん!」


「んぐぅっ」


右太ももに強い衝撃。

見てみると、痛む部分には石が突き刺さっていた。

攻撃に失敗し、撃ち落とされる。

どうにか着地するが負担は傷口に更なる刺激をもたらす。


「うぅっ…」


「いい加減にしろ。さっさとお前殺して帰りてーんだこっちは」


オガルはスカートの中に手を入れ、小さな刃物を取り出した。


「はーい!それじゃあ、死んでねー!」


「だから、嫌!」


オガルが攻撃するより早く、凪咲は風魔法で後方へ吹っ飛んだ。

そして着地の衝撃を無くすために少しの間空中に留まる…と。



「あれれ?あれれれれ?オガルちゃん、どっかで見たことある気がするー!あ、女子高生!」


「悪いけどもう女子高生じゃないから」


「えー!むぅー!」


口を尖らせ不満を顔に出すオガル。

刃物を逆さに持ち替え…刃の部分を強く握りしめた。

すぐに血が垂れ、足下の石を赤く染める。



「何を…。血…もしかして血を使って」


「足りねぇ。とりあえず両手2本ずついっとくかー」


凪咲の目の前でオガルは自分の指を切り落とした。

両手の小指と薬指を失い、残りの指を動かし感覚を確かめる。そして。


「よーし!やっちゃうぞー!」


「どういうっ…!?」


瞬間。


凪咲の顔の横を何かが抜けていき、生まれた風が髪を乱した。


「あー!ざんねーん!外れちゃった!」


「………」


「ナイフはもう無いけど、石はいっぱいあるよ!次は当ててあげるねー!」


無言で着地し、オガルを睨む。

凪咲は思い出した。前回オガルと戦った時のことを。


「あの時は真に胸を触られて…本気で怒ってたから…」


全力を出して攻撃してもオガルには勝てなかった。

1度倒すことが出来たのは、真と共に戦ったからだ。

静かな怒りをありのままオガルにぶつけて、ようやくだった。


「そっかー!指が減ってコントロールが悪くなってたんだー!オガルちゃん、ドジだなー!」


「どうしよう」


1対1では時間稼ぎができるくらいだ。

勝つことは、難しい。



「なら殴るか。面倒だし」


向かってくるオガル。

凪咲は向かい合いながら後方へ走る。


「まてまてー!」


「………」


右手はポケットのスマホへ。しかし、手は止まる。

真を呼び戻していいのか。

逃げた男の代行がもし真達を追いかけていたら。

戻ってきたところを待ち伏せされたら。


考えることに夢中でオガルが石を拾ったことに気づかない。


「えーい!オガルちゃん2度目の正直きゃのん!」


反応する前に尻餅をついた。

じわりと腹部が熱くなる。どうなっているのか…見る暇はない。


「じゃあ、3度目の正直きゃのん!」


「うぅ!!」


今度は間に合う。双剣の刃で弾くことに成功するが、あまりの威力に怯んでしまう。


「追いついちゃったー…うーん、女子高生の時の方が楽しかったなー!オガルちゃん、さびしい!」


「真……」


「それじゃあ、」


「っ…」


確定した敗北。つまり、死。

俯き、最後に彼の名を呟き、…飛んできた血を顔に浴びた。



「うわぁ…オガルちゃんのお腹、腕が生えちゃった…」



「遅れてしまい申し訳ありません。あなたの真似をして川を飛び越えられたらと思ったのですが、跳躍力が足りずにただ川に飛び込んだだけになってしまいました」


「…え…ジュリア…?」


「お、おわぁっ!?」


オガルの腹から腕を引き抜き、衣服を掴んで投げ飛ばした。

ようやく凪咲の目に映ったのは、ずぶ濡れの着物と改めて結ばれた金髪。

水も滴るいい女…言葉そのままの姿のジュリアだった。




「今は戦う必要はありません。退きましょう」


「あっ…」


ジュリアは凪咲を抱き上げる。


「走ります。掴まっていてください」


「う、うん」






「あー!待って!待ってよー!オガルちゃんと遊んで!置いてかないでよーーー!」







………………………to be continued…→…


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