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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case8 _ 呪いの源泉
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第4話「黒神様」






欠月。地名の由来は分からないが、誰もが田舎と聞いて思い浮かべるような土地だ。


偶然電車が通る。それ以外は田舎。


そんな土地だ。



木造の駅を離れると、これといって建物もない。



「当たり前に思ってました。駅前にカフェやらコンビニやらがある日常を」


「タクシーも無いね」


「なんとなく帰りが心配になってきました」


「………真」


「はい」


「…あれ」


真剣な表情で指さした先には




「ミャァ」



「え」


「茶トラの猫!」


「え、猫…」


てっきり…というか凪咲さんはもう猫に近寄ってしゃがんでる。



「おいで…」


「猫まっしぐら…いや、猫にまっしぐら…」


「人懐っこい子みたい。この子の方から撫でさせてくれるもん」


「じゃあ僕も」



「ミャァ〜」


猫は僕の手を避けて後退。

…睨まれた。



「あ、あれ…?」


「びっくりしたのかな。もう一回やってみる?」


「はい。…お、おいで」


近寄るどころかトコトコと逃げていく。



「………」


「気にしないでいいよ。猫って気まぐれなとこあるし」


「ですね…」



小さめのショックを受けるも、僕達は森を目指した。



ずっと見えている目的地。

近づくほどに木の高さが都会のそれとは比べ物にならないと感じる。


「どう見てもブロッコリーですよね」


「電車の中でも考えてたよね。見えなくもないけど」


「今度僕がよく行くスーパーに売ってるブロッコリー見たら絶対共感しますよ」


「そんなに?」


「まずこの森がブロッコリー寄りの見た目してますけど、そのスーパーのブロッコリーも森に寄ってる見た目なんですよ。大きいやつを輪ゴムでいくつか束ねて合体させてるんです」


「それも激安のお店?」


「はい。大収穫祭って特売セールの時は必ず売ってます」




「あーらぁ。この辺じゃ見かけない顔だねぇ。どこの人?」




犬を散歩させてるおばさんが話しかけてきた。

柴犬…可愛い。


「東京から来ました」


「東京?あー立派なとこから来たんだねぇ」


「珍しいですか?私達みたいなのは」


「観光地でもないしねぇ。この辺住んでる人はみーんな顔知ってるから…」


おばさんの顔は何しに来たのか聞きたそうな顔だ。


「僕達、雑誌で見て来たんです。あの森の中に心霊スポットがあるって」


「……森って」


「あのブロッコリーみたいな森です」


「黒神様の森かい?やめときな!そんなのよりおばさんの家来なさい美味しいものご馳走してあげるから」


「…おばさん。黒神様って何?」


「あんた達ぃ、黒神様も知らないで行こうと…あぁ恐ろしい!悪いことは言わないから行くのは」


黒神様が何かは分からない。

ただ地元民がこれだけ恐れるのだから相当な何かが森の中にあるのだろう。



「黒神様を詳しく教えてもらうことって出来ますか?危険なものだと分かったら僕達諦めますので」


「真」


もちろん嘘です。よくない嘘ですけど…。

でも、黒神様が何なのか凪咲さんも気になりませんか?


「…分かった」



「しょうがない。じゃあおばさんの家近いからおいで」






………………………………next…→……





家にお邪魔させてもらった。

都会なら相当お金がかかるような大きい家…お隣さんの家までかなり余裕がある…まるで土地を持て余してるみたいだ。


「このみかん隣の林葉さんが作ったのよぉ。美味しいから食べて」


「ありがとうございます。いただきます」



おばさんの家にはおじいさんとおばあさんもいた。

僕達を見てニコニコしてる。


「ワン!」


「よしよーし」



凪咲さんは柴犬のポチ郎を可愛がってる。

…ポチじゃだめだったんだろうか。



「はーい、お茶もねぇ」


「ありがとうございます。こたつ…いいですね」


「大きいでしょう?正月に親戚みーんな集まって囲むと賑やかでねぇ」



そこでおばさんの表情が変わった。

するとポチ郎が何かを察したのか凪咲さんから離れてどこかへ行ってしまった。



「あの森には昔から黒神様がいるって言われてる。黒神様っていうのは悪い神様で、昔この辺はよく人が死んでた。地震、火事、あと動物に殺されたり…そんなのが日常茶飯事でねぇ」


「そんなに多かったんですか?」


「毎日どこどこの誰が死んだって騒ぎになってたって話。そこのおじいちゃんが子供の頃だったかな」


「それが黒神様にどう繋がるの?」



おばさんは知ってることを全て話してくれた。





ある時、熊が何人も食い殺したことがあった。


村人達は報復を決意。森ごと狩るつもりで大勢で乗り込んでいった。


熊に限らず、目に付く動物を殺していく村人達。

疲労が溜まっていく中、数人が森の中で井戸を見つけたという。


不思議だとは思ったが、疲れているので水を飲みたい…井戸の水を汲むことにした。


汲み上げた水は村人達が普段飲んでいる水より綺麗だった。


とりあえず1人が飲む…こんなに美味い水は初めてだと喜んだ。


すぐに次の分を汲もうとしたところ、水を飲んだ人の様子がおかしくなった。





目が真っ黒に染まり、黒い涙を流したのだ。





水に毒があるとそこで気づいたわけだが、飲んでしまったその人を助ける方法が分からない。


見えない!何も見えない!


その人は騒いだ。そして真っ黒な自分の目に指を差し入れ、抉り出してしまった。

目玉は全てが黒く染まっていて、村人達は恐怖した。



目玉を失った村人は、その場で悶えて死んでしまった。



1人が報告するため先に帰った。

仕方なく死体をその場で埋めようとしたところ、




死んだはずのその人は起き上がり、近くにいた村人達を全員殺した。



他の村人達が動物を大量に殺して村に戻ってくると、後から遅れてその人が現れた。


殺した村人達の首を手土産に。


そして言った。




お前達は生かされている。




以降、村人達は森を…そして井戸の水を恐れた。


黒神様…それは自然の怒りなのか。


黒神様…それは、井戸の水のそれなのか。





「神として丁寧に扱うようになってからは毎日のように人が死ぬことはなくなった…なんかすごい話ですね」


「壊れた鳥居を修復しに来た人達が死んだって雑誌には書いてあったけど」


「黒神様が殺したんでしょうね。それより、地元民にも鳥居の存在は謎だと書いてましたけど」



「そんなの全然謎じゃないよ。神様だって決めたのが村の人なんだから、当時の村の人達が鳥居を」


「ワン!ワンワン!…ギャン!…クゥーン…」


「ポチ郎!?ポチ郎!」



外から聞こえた。

ポチ郎が強く鳴いて、それから弱く…


おばさんと一緒に外に出る…と




「ポチ郎!?」




玄関の近くで横たわっていた。

そばで見なくても脱力しているのが分かる。

……どう見てもリラックスしてるようには見えない。



「あーーーー!…ポチ郎っ…!」



おばさんはポチ郎を抱きしめて泣いている。


「真。ポチ郎を見よう」


「え?」


「何が原因かは知らないけど。きっと想像通りの死因だから」


「………」



そっとおばさんに寄り添い、ポチ郎の体に触れてゆっくり撫でた。

………さっきまで元気だったポチ郎と、違う部分がある。



目が黒すぎる。沈むような黒で、目の周りまで黒くなって…黒い涙を…。



「黒神様…」


「あーっ!あーーーーーーーーっ!!」



おばさんはポチ郎を放り捨てて家の中へ駆け込み



ガララララ!!カチャ!



鍵を閉めてしまった。




「どうして?黒神様がやったってことでしょ?え?」


「もしかして」


僕達に…余所者に黒神様の話をしたことが原因なのでは…?


「………」


「……森、行くのやめますか?他に似た場所があるかもしれませんし」


「ううん。これも込みでここだと思う。代行は黒神様を利用してる…黒神様が使者ってことも考えられる。使者って別に1人だけってルールがあるわけじゃないし」


「…でも」


「ねぇ。創造の力を使えば、不老不死にもなれるんじゃない?」


「………」


「分からないけど、さっきのはおじいさんが子供の頃の話でしょ?ずっと生きてるのかも」


「……危険だと分かってて行くんですか」


「行かなくても私は危険な状態だよ」


「………」





ポチ郎をそのままにするのは心が痛かった。






………………………………next…→……






「………あんな話を聞いた後だと…余計怖いですね」



森の前まで来た。


まだ明るい時間帯だけど、森の中は薄暗い。陽の光が届かないみたいだ。



「立ち入り禁止。しつこいくらい看板があって、金網で塞いでますね」


「切ればいい」



凪咲さんは武器を取り出し簡単に一刀両断。



入り口が出来た。




「行こう。井戸の所に霊が…代行がいるはず」



ものすごく嫌な感じだ。

いろんな方向から視線を感じて、背中に変な汗をかいて、凪咲さんがどんどん前へ進むと不安になる。


「手繋ごう。真は左手にアイアン・カードを準備しておいてね」


「はい。…ありがとうございます」



2人で横並びに歩くと道幅はギリギリだ。


入り口からしばらくは人が開拓した道が残っている。

とはいっても草が伸びてるから大体で道を判別しているが。




「大自然100%ですね…さすがにこれだと都会暮らしの方が安全に思えてきます」


整えられていない道を行くのは大変だ。

でこぼこだったり、不揃いな石が転がっていたり、木の枝だったり…すぐに歩き疲れてしまいそう。


「動物達に見られてる…離れてるけど」


「警戒してるんでしょうか」


「私達が死んだら食べるつもりなのかも」


「…それは困ります」




傾斜がひどくなってきた。

真っ直ぐ進むのが厳しい…


「山登りみたい」


「どこなんでしょうね…井戸」


「んー…」



ヴヴヴ…ヴヴヴ…



「出ない方がいいですよ」


「うん。触らない」



ヴヴヴ…ヴヴヴ…



「サラさん…いや、ダンさん…誰にしてもタイミング悪いです」


「そうだね」



ヴヴ。



「ちょっと暗いね。スマホのライト使う?」


「だっ、だめです!」


「……でも」


「少なくとも、帰りまで温存しましょう」


「そっか…分かった」




しばらくして、大木が目の前に。

真っ直ぐ進んできた僕達に立ちふさがるようにそこにあった。


「あまり曲がったりしたくないですよね。道が分からなくなったら帰りが…」


「ならこの木を目印にしようか。…ふっ!」



凪咲さんは木の肌に切り込みを入れた。星のマークだ。



「これを来た方から刻めば、どっちに進めばいいかも分かるね」


「はい。……」


途端に気配を感じる。



「凪咲さん」


「うん。分かってる」



大木の裏に回り込むと…ついに見つけた



「鳥居…あったね」


「………」


柱には爪痕。大きい…熊のものだろうか。

上の部分がボロボロで大きく欠けている。



「……真」


「はい」


「背後に展開して。今すぐ!」






………………………to be continued…→…


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