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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
聖夜の贈り物
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第3話「子供達」





「ジュリア」「はい、ご主人様。お受け取りください」



ダンさんは創造の書を受け取った。


「あの…聞いてもいいですか」


「答えられる内容ならなんでも。どうかしたかな?」


「ジュリアさん、今どこから創造の書を出したんですか?」


「おや。君は知らないのか」


「知らない?」


「"レベル2"以上の使者はどこからでも主人の創造の書を取り出せる」


「……?」


何を言ってるんだろう。…今、僕はそれを顔に出していると思う。

前に凪咲さんも似たことをしていた。外出時、パッと見ただけでは何も持っていないのに戦闘になるといつの間にか双剣を手にしていたのだ。

あれとも違う雰囲気だ。



「少し待っていてくれたまえ」


ダンさんは何かを書き込んでいく。

眉毛が1度だけクンと持ち上がると、


「こんなものだろう」



((READ))



本が光った。


「成功だ」「おめでとうございます。ご主人様」


ジュリアさんが捕まえた子供の首に黒い輪っかが。

細くて、そういえばこんな感じの肩コリ解消グッズがあったようななかったような…といった感じ。



「これで君は自由だ。どこにでも行きたまえ」「かしこまりました。ご主人様」


ジュリアさんが子供を解放した。

子供はというと、謎の首輪が気になるものの…とりあえず逃げていった。

子供だから走る速度はそこまでだけど、元気はある。


「私が許すまで外すことが不可能な首輪だ。追跡効果と盗聴効果がある」


「え?今のがですか?」


「この本は戦争の道具ではないよ。場合によっては必要というだけで基本的な役目は世界中の生命の数を調整することにある。そうだね…無慈悲に生命を刈り取ることを強く否定したくなる気持ちは分からなくもないが、それは」「ご主人様」


「…ああ、つい話が」


ダンさんが話に夢中になってきたところでジュリアさんが止めた。


「追跡ってGPSとかですか?」


「いや。私の頭の中に直接情報が送られてくる」


「……」


「盗聴も同様だ。本来、この効果は絶滅の危機に瀕している生物に対して使用することを目的としている。巣の場所を知り、どのような生活を好むのか、天敵は、主な死因は…。学者が調べてきた情報より遥かに正確な情報が手に入る。なぜなら、完全に対象の主観になることが出来るからだ。それにより」「ご主人様」


「…つい癖でね。話せる相手が少ないからか、余計に話が長くなってしまう」


「いえ…」


よく考えられてる。

本来の使い道と違う場面でも想定通りの働きを期待できる。


「それってダンさんのオリジナルですか?それとも何かの小説とかからアイデアを?」


「私の所有する本に載っていた。引き継いできた代行達が戦うことよりも知ることを優先してきた結果だろう」


「知ること…」


「世界史に残るような冒険家や、貿易商…。広大な海を渡るとして、果たして一般に伝わっている情報だけでそれが出来たと思うかい?」


「まさか。だって、船旅が過酷だからこそ」


「船の耐久性。食糧問題。長旅のストレスによる争い。健康被害」


「……」


「どこの国でも自国の言葉が通じるのは、それこそ創作の世界だけだ。どうやって言葉を知る?教え合うほどの仲になれるものだろうか。自分達と体格や肌の色、服装などの趣味も全く違う…当時なら宇宙人と思ってもいいほどだ」


「ダンさん…」


「何かな?」


「ダンさんの創造の書には何年前まで載っているんですか?」


「さあ。まだ全てが明らかになったわけではないからね。だから私は神の文字を…、さっきの子供に動きがあったようだ。ついてきたまえ!」


「あ、はい…」


ダンさん、意外と歩くのがはや…い…!

競歩に片足を突っ込んでいる。なのに彼は普通に歩いているように見せている…。

ちょっと、呼吸が、乱れそう。


「歩きながら話すとしよう。少し戻すが、君はまだ使者の"レベル2"について知らないようだったが…」


「あ、はい…使者にレベルがあるんですか?ゲームみたいに?」


「それは伝わり方の問題だろう。昔は別の呼び方があったはず。で、レベル2についてだが。簡単に言うと使者は成長する」


「……」


「その成長は我々とは違う。レベル2になった途端、赤ん坊が一気に成人になるような変化が起きるのだ」


「そんなに…!」


「大昔に記録されたものがある。もし正しく解読されていれば、現在までに最高でレベル4の使者が存在した」


レベルツー、レベルスリー、レベルフォー。

言っていた成長スピードならレベル4に到達すると老人になっていそう…



「レベル2に成長すると、どの使者でも使える力がある」


「それがさっきのどこからでも創造の書が取り出せるやつですか」


「ああ。これに関しては呼び方が定まっていない。私は能力を総じて"ギフト"と呼んでいる」


「ギフト…」


「レベル2のギフトは、本を取り出すものと…もうひとつ」


「なんですか?」


「主人とのシンクロだ」


「え?」


「主人というのは我々、使者を創造した代行。または使者の情報が書き込まれた本を所有する代行のことだ」


「ちょっと、ちょっと待ってください!」


「何かな」


「主人とシンクロも気になるんですけどその後に言ったことが」


「そのままの意味だよ。本の所有権が移動すると、使者の主人も変わる」


「……たとえば、ダンさんの本の所有権が僕に移動したら」


「ジュリアは君のものになる」「困ります。ご主人様」


「もしもの話だ。ジュリア」


「……」


「驚いたかい?でも所有権はそう簡単に動かない。相手を殺すか、自ら差し出してもらうか」


「……」


「経験したことがあるようだね」


「い、いえ!」


「別に奪ったりしないよ。安心したまえ」


「はい…」


「シンクロについても聞きたいかい?」


「ぜひ」


「使者が代行の考えを読めるようになる。主人が何を望み、そのためにどう動いてほしいのか」


「もしかしてジュリアさんってレベル2ですか?」


「ああ」


「なら、盗まれた傘を取り戻したい。そのために人から物を盗む誰かを捕まえる…そういう風に」


「私の考えを読み取った。良き理解者になってくれるわけだ。ただ、逆は通じない」


「使者の考えを読めるようにはならない…」


「このギフトは、元々言葉で通じあうことが不可能な使者に指示を出すために有効なものだろう」


「人間ではないもの…ですか?」


「そうだ」


「…」


そう考えると。

マミさんの使者、ゴージャス・アナは人ではなかった。

でもマミさんの言うことを聞いて戦ってるような感じだった。

ということは…



「君の使者はまだレベル2ではないようだね」


「そ、そうですね…」


「人の見た目をしている使者がレベル2になると、このギフトはより大きな効果をもたらすんだ。戦闘面での話だが」「ご主人様」


「おっと。あそこだ」


「え?」


ジュリアさんが示したのは、立派な一軒家だ。

表札には"田中"とある。


「君は子供は得意かな?」


「普通くらいですかね…」


「よし、私は苦手だから君に任せよう」


「え?」


「ジュリア。彼に協力しろ」「はい、ご主人様」


「あの?」


「ここで待っているよ」


「ちょ、え?ジュリアさん!待っ」


ジュリアさんに右手首を掴まれ引っ張られる。抵抗したら手首を砕かれそうな力強さだ。

そのまま門を開いて侵入、せめてインターホンくらいは



「裏口を探します。見つからなければ窓を割ります」


「それって普通に泥棒…」


「ありました。鍵をかけていません」


裏庭に物干し用の道具があった。

僕達が建物の中に入ると目の前には少し汚れた洗濯機。

そこから風呂場、脱衣場と繋がり


「この家は2階建てです。手分けして捜索を」


「あ、はい」


「私は1階を」


「分かりました。僕は2階に行きます…」


ジュリアさん…僕に話しかけてはくれるけど、多分こっちの発言は聞こうともしていない。

これで協力と言えるのか…気になるところだけど、それより今の状況の方が…


階段を上がる。

家の中はほとんど電気が消されている。

スイッチを見つけても、ついたりつかなかったり。


「2階は3部屋…かな?」


ドアは4つ。階段を上がってすぐのドアはトイレだった。…水が流れていないのか排泄物がそのままでとんでもないことになっていたが。


もうひとつは和室…画面の割れたテレビがある。

…収納部分には


「うわ」


開けてすぐ大きなクモの巣があって閉めた。


住人は掃除をしないのか?

…というより、住んでる人がいるのか…。


もしかして、ダンさんの罠…?



「こちらに来てください」



ジュリアさんに呼ばれた。

降りるのが怖い。



「な、なんでしょうか」


1階へ戻ると、ジュリアさんは玄関で待っていた。



「あれを」


「ん?…ん?」


階段、そして階段横の部屋。

なんとなく、違和感。

玄関から観察すると…空間的にまだ部屋がありそうな予感がする。


「隠し部屋ですか?」


「地下室を探します」


「あ、はい」



コンコン…ジュリアさんは壁を軽く叩いていく。

これは僕にも分かる。返ってくる音の違いで探すやり


「ありました。破壊します」


「は?」


早すぎる。壁を破壊する音を聞き取るよりも砂埃が玄関まで…

咳き込んでいると冷たい空気が。ジュリアさんが玄関のドアを開けてくれたみたいだ。


「何か見つかったか」


「はい。これから地下に向かいます」


ダンさんに報告するためだったりして。





………………………………next…→……




無理やり破壊した壁の残骸を乗り越えると階段だった。

上に辿り、狭い扉を開くと…ん?1階の階段の途中…踊り場の部分に出た。


「向かいます」


…ジュリアさんがいた。

どうして破壊した壁からではなく、この正式な隠し扉から入ろうとしているのか。


僕だけ服が汚れた状態で、階段を降りていく。


「地下室…ですかね」


降りた先には普通の大きさの鉄製のドアが。

頑丈そうで、鍵穴が…


「破壊します」


「待っ」


へ、へぇ…ジュリアさんって、ドアノブを簡単に殴り壊せるんだ…。

続いてドアを殴る。大振りなパンチがドアを揺らし、…逆側のドアノブをも破壊した。

床に落下した音がして、ドアノブが付いていた部分にポッカリと穴が…


「入ります」


「先にどうぞ」


ダンさんはあまり戦うのは好きじゃないみたいなことを言っていた気がする。

でもジュリアさんの強さは…これがレベル2の使者ということなのか。



地下室に入ると、…と、…上とは別世界だった。


「テレビが5台…全部ゲームかアニメ…あっちには食べ物…」


そして部屋の隅には身を寄せ固まっている子供達。

それもそうだ。隠れ家のドアが突然破壊されたのだから。


部屋はごちゃごちゃに散らかっている。

見た感じで分かるのは、おそらくこの子供達が盗んだものだということ。

高級なお店の紙袋とか、床に転がっている化粧品とか…盗んだまではいいが望むものではなかったパターンもあったみたいだ。

……開封済みのお酒がある…まさか。まさかね。



「…破壊しますか」


「やめてくださいよ!こ、子供ですよ!?」


「年齢と犯罪は関係ありません」


「でも!」


「7人。破壊しますか」


「それ僕に聞いてるんですか!?ダンさんですか!?どっちにしても確認するくらいならやめてください!」


子供達は怯えている。今にも泣きだしそうだ。



「君たち、お父さんお母さんは?」



「うるさい!死ね!いなくなれ!」



返ってきた言葉はひどいものだった。


「破壊しますか」


「……どうしてこんなことを?この家の人は?」


「うるさい!死ね!いなくなれ!」


違う子も同じことしか言わない。


「破壊しますか」


「………親に捨てられたの?それとも逃げてきたの?」


「うるさい!死ね!いなくな」


ッバァン!!


子供達の頭上をゲーム機が通過し、壁に激突。

衝撃で破壊されたのはゲームだけではなかった。

1人の子供の強がりが…砕けた。


「うわあああああああああん!!」


「泣くなよ!こいつらに捕まりたくないだろ!」


「でも、でっ、で、で、」



泣きだした男の子。それを止めようとする男の子。

…他には、ボーイッシュな雰囲気だが女の子もいるみたいだ。


捕まるという言葉選びからして、この子供達は逃げてきたのだろうか。

家出した子供達が結成した窃盗団?



「うるさい。死ね。いなくなれ。どれも守られるべき子供には似合いません。よって、」


「破壊しないでください。ジュリアさん、もしかしてあそこに立てかけてある傘って」


スラッとしていて、上品さが隠しきれない存在。

黒い傘だ。傘をまとめる部品に金色の紋章のようなものが…


「ありました。回収します」


ジュリアさんは傘を手に取り、埃を払うとそのまま上へ戻ってしまった。


「僕は…警察を呼ぼう」


スマホを取り出したところで、1人の子供が立ち上がった。


「やめて!電話しないで!」


「…」


声が女の子だ。ニット帽を深く被りすぎてるし、マフラーもしてるし、上着も男の子向けっぽいキャラクターがプリントされてるからてっきり…。


「家に帰ったらみんな死んじゃう!」


「…それはどうして?」


「お父さんもお母さんも目が真っ赤でおかしくなっちゃった…だから!帰ったら」


「言うなよ!うるさい!死ね!いなくなれ!って決めただろ!」


「誰も信じてくれないから…」


この女の子はまともだ。多分、リーダーはこの男の子。顔にいくつか傷があって、他の子より服がボロボロで、盗みの主犯なのだろう。


「こいつも信じないよ!」


「信じて…ください…」


「やめろ!」



………。

この子供達の生存本能みたいなものに感動した。

やり方は間違っている。でも、生き残ろうと必死になっている。

…それは、結子さんがホームレスの人達に感じていたものと…



そうか…たしかに。力になれるならそうしたいと思う。




「信じるよ」


「え…」


「警察は呼ばない。みんな親が変わってしまったんだよね」


「うん…」


「お前!嘘ついてたら許さないからな!」


「それでいいよ。でも、今回は信じてください」



助けを求めてくれた女の子が付き添うことになった。

共に行動し、この子の家に向かう。

そしたら僕がどんな状況かを調べる。


…目が真っ赤になっておかしい。

病気というより、変化だ。


きっと代行が関わってる。




………………………to be continued…→…


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