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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case12 _ 善悪の境目
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第4話「不思議な関係」






「エクス!」



汚らしい茶色の光。

その中から飛び出してきたのは、肘から先が大きな刃物に変わった代行。

刃先を口元に持っていき、舌を這わせている。

……刃に血が垂れているのはわざと舌を切っているからか?



「今日も最高な切れ味だぁ…っ、っ、」



ジュリア。あの代行を破壊しろ。本は不要だ。


「はい。ご主人様」



「っ、うひぇひぇひぇひぇひぇ!」


半月形の…悪く言えば分度器のように腕を武器に創り変えた。

わざわざ使い勝手の悪い創造を…その刃が砕ければ、ふざけた態度も変わるだろうか。



「砕きます」


「っ死ぃぃねええっ!」



所詮、雑魚は雑魚か。




「うおあああっ!っ、っ、俺の…右…右…」


「次は左を。はっ」


私はジュリアの格闘センスが好みだ。

武器、装甲…相手が無防備になるように必ずそれらを優先して破壊する。

場合によっては相手が降参し情報を話すこともある。無力化は素晴らしい策だ。



「ひぃああっ!?くそ!っ、どうなって!っ、っ、」


「少しは自信があったようですね。今はもう…ゴミクズですが、これで何人も殺したのでしょうか?」


砕けた刃の破片を踏みにじる。

力の差を見せつけ、相手の戦意そのものに植え付ける。


「降伏し、終の解放者について知っていること話しなさい。もしくは…あなたもこのゴミクズのように」


「っ、は!はな!」


折れたか。


「っ、っ、話すわけないだろ!うひぇひぇひぇひぇ!」


「そうですか」


やれ。




「他に代行はいないか。逃げていったシアワセの代行とエクスという創造の詳細は謎のままだったな」


「…ご主人様」


「どうした」


「発火しました」


「…?」


ジュリアが首をへし折った代行の腹部から火が…


「どうやら創造の書が燃えているようです」


「奪われないための保険だろうな。放っておけ」


「分かりました。運転手に電話をかけて呼び戻します」







………………………………next…→……







「はぁ…はぁ…ここまで逃げれば…後は通行人を殺して電話を」



「なんだ。結局奪えず逃げられたのかー」



「誰だ!」



「ん?わざわざ名乗る必要ないだろ。お前もう死ぬんだし」



「代行かっ!なぜ」


「わーわー言うなって。やれ、モモ」


「つ」


「終の解放者に、光あれ派?それとも終の解放者こそ、純血なり派?お前ら時々合言葉変えてるよなー。なに、パスワードしっかり管理してるみたいなさ。そういうとこちゃんとしてんのな。ってもう首落ちてるし。そもそもその紫色キツくね?インチキアピールすごー」


「終わった」


「だな。本は?」


「無い」


「ハズレかー。あいつらこの数日で地味にケチってきてるな。回収が面倒になったとか?」


「モモ、探しに行く」


「おう。行ってこい…あ!待て!死体置いてくなよ!俺が片付けんのかよー!はぁ…いっか、殺人事件ってことにして警察のパトロール増えれば活動範囲も狭くなるだろうし。お?あの車、お帰りか?」





………………………………next…→……







考えるべきは差出人不明の手紙か。

誰が私達にシアワセの存在を教えたのか…


「指紋などが残っているかもしれません。封筒を調べてもらうのはどうでしょうか」


「そうだな。帰ってからやることが多い。まずは旅館のセキュリティを…」


「でしたら、"犬"はどうでしょうか。従業員に可愛がられながら、緊急時には番犬として」


「三剣猫で犬か。そこは猫であるべきだろう。だが真の家に施したものと同じように異界壁をと考えている」


「ということは、柊木様に三剣猫まで来ていただきますか?」


「いや。シアワセで見た創造の補助を使う。旅館の近くで招き猫を売っている店があったはずだ」


「はい。にゃー次郎という店です。招き猫の他に、御守り猫など独自の商品を…あ、」


「買い集めて旅館の周りに設置し、結界石の代わりにする。それで補助になるだろう」


「分かりました。明日、開店後に必要な数を購入しておきます」


「……」


「お疲れですか?」


「欠伸が出るほどに?戦闘したのはお前だろ。私が疲れることなど」


「…洗脳」


「ありえない。再構築で私にかかった全ての創造の効果は…ふわぁ…」


「より大きな欠伸が…」


「しっかり寝たはずだが」


「はい。ご主人様の睡眠時間はいつも変わらず5時間48分です。……はっ…!」


「なんだ」


「どういうことでしょう。もう3時前です。店にはあまり長居はしていませんし、電話をかけて現れた代行と戦闘した時間も短いはずです」


「だな。体感では1時間程度。それがどうして…運転手。私達を待っている時間は長かったか?」


「いえ。特には…すいません」


「これも何らかの創造による影響でしょうか」


「…分からない」








………………………………next…→……





酔っ払った若者に近づき、すれ違う瞬間に帽子を奪う。



「俺野球詳しくないけどさー、このマークあんまり好きじゃないなー…ま、いっか」


バットを構えた天使と悪魔のチームロゴに不満をぶつけながらも帽子をかぶる。

長い赤髪を後ろでまとめ、道のど真ん中に止まっている車に向かって歩いていく。


「高そうな車乗ってんな。でもあの性格だと傷つけてもキレないんだろうなー」


ガチャ。ガチャガチャ。


「あー、そっか。開くわけないよな。どうすっかな…」


車内を覗くと、ハンドルを握る運転手…それから後部座席にダンとジュリアの姿が。


「窓割ったらやり過ぎだし、隙間とか挟んで気づくもんなのかー?ピューって飛んでくかもしんないよな。あー、あー、」


小さな封筒を取り出し、フロントガラスの隙間や運転席近くのドアに挟もうと試みるが…納得せず。


「もういいや。よっ」


ガンッ!!


「それ、もっかい」


ガンッ!!バリィィッ!


大胆にも窓ガラスを蹴りで破壊。

中に手を入れドアを開けると、すぐそこに座っているダンに向かって手を振る。


「やる気になってきたって感じか?頼むぞー?"あの手"で終の解放者を全員ぶっ殺してくれればそれでいいんだから。っと」


ダンの膝に封筒を乗せる。

そして車内に散乱したガラス片を丁寧に拾って取り除く。


「こういうのやってくれるやつ欲しいな。お掃除大好き!みたいな使者…は要らないけどさ。ってぇ!指切ったぁ…」


出血した右手人差し指を口に含み、残りは左手だけで拾っていく。

そのせいか、回収作業は遅くなり時間が過ぎていく。




……そして。




「うぅわ。やっべ。もうこんな時間かよ!」




バァン!!


乱暴に蹴ってドアを閉める。

ドアには跡が残ったが



「気にしない気にしない。さて、と」


右手を広げて構えるとどこからともなく創造の書が出現。

触れることなく空白のページが開かれ、記入されていく。


「ちゃんと弁償するって。新品の窓ガラス。な?」


((READ))


蹴った跡以外は元通りになったのを確認し、


「よーし。んじゃ、お疲れ…俺」


帽子を深く被り車から離れていく…と、すぐに車が動き出した。



「全部元通りってな」






………………………………next…→……






「ん?これは」


膝の上に封筒が…


「ご主人様の物ですか?」


「違う。見覚えのないものだ」



封筒を手に取り、中身を確認。

1枚の紙が折り畳んで入れられていた。


「読み上げろ」


「はい。……残念だったな。本は回収済みか、もともと切れ端しか貰ってないか…で?死者とは会えたのか?………次はしくじるな。と」


「しくじるな…」


「こちらの手紙と同一人物のようです。…ではどうやって新たな手紙を?ご主人様、どこかで受け取ったのですか?」


「いや。店から何も持ち帰っていない。それ以降代行に近づかれたりも…心当たりはない」


「終の解放者とは違うのでしょうか?」


「……もうどうでもいい。着くまで眠る」


「はい。ご主人様」



窓に頭を預けて眠気に負けたダン。

しばらく手紙をじっと見ていたジュリア…だったが。



「……」


ポケットからスマートフォンを取り出す。

素早くフリック入力を終えると、小さくため息をついた。


数分後、画面が点灯しメッセージの着信を知らせた。



「……膝枕ですか」


そう呟き、ダンを見る。

寝顔も整っている。落ち着いた様子で静かにゆっくりと呼吸を繰り返し


「完全に眠っています」


ジュリアから見ても十分なほど深い睡眠状態。


「これもまた、使者からの感謝を伝える行為。ご主人様の力になるかもしれません…」


そっと窓とダンの頭との間に手を差し入れて、引き寄せる。

起こさないように気をつけながら自身の膝の上に頭が来るように寝かせる…と。



「…で、出来ました。膝枕」


ダンに求められていたならここまで緊張することはなかった。

これまで何度もそうしてきたような顔をして膝を差し出したはずだ。

ほんの少しだけ顔を赤らめたジュリア。



「おやすみなさいませ。ご主人様」







………………………to be continued…→…


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